コロナ禍でなぜ負担増?

最近、ニュースなどで、増税の話や、負担増の話が多くありませんか?
例えば、金融所得課税の強化や、後期高齢者医療制度の保険料引き上げ、などです。
日本経済が停滞して久しく、コロナでさらに打撃を受けている中、なぜ負担が増える方向なのでしょうか?
今日はそんなテーマに関して、考えてみたいと思います。

そもそも、日本はどれ位、停滞しているのでしょうか?
インフレを効果を相殺している実質GDPに関する内閣府が公開している最新データを見てみます。


コロナ前の2019年4月~2020年3月の水準に、2021年4月~3月の水準はまだ届いおらず、成長どころか、回復もできていない状況です。
四半期単位では、2022年4月~6月のデータもありますが、前期比0.9%増と、まだまだ回復の勢いが強くないようです。
まとめると、実質GDPで見たときに、まだまだ日本はコロナから回復できておらず、停滞していると考えてよいのではないでしょうか。

それでは、なぜそのような停滞状態において、各種負担増の検討が進んでいるのでしょうか。
その背景には、一つだけではない、日本のいろいろな構造的な問題が潜んでいるのではないかと考えています。

まず、保険料の引き上げから考えてみたいと思います。
10月17日日経の記事によると、政府の全世代型社会保障構築会議にて、75歳以上を対象とした後期高齢者医療制度の保険料を引き上げる方向性が打ち出されたそうです。
現在、後期高齢者は一部例外もありますが、医療費の1割を負担しております。
残りの9割は、公費と保険組合の支援金で補っております。
保険組合は、加盟社の保険料で成り立っているため、いわゆる現役世代の保険料で、後期高齢者の医療費を補填している形になります。
では、なぜ、この苦しい経済状況で、保険料引き上げの話がでてきているのでしょうか?
それは、第一次ベビーブームの世代が、後期高齢者の仲間入りをし始めているからではないでしょうか。
下の図は、昨年の人口ピラミッドです。
これを見ると、非常に人口が多い第一次ベビーブームの世代が昨年度は72歳~74歳であったことがわかります。
つまり、今年から、第1次ベビーブームの世代が後期高齢者の仲間入りを始めているのです。

もともと現役世代の負担が増しており、批判されていた保険料の制度ですが、支援する負担が大幅に増えていく事が予想されます。
これでは、現在の厳しい経済状況で、現役世代の負担がさらに増え、反発が大きくなると考え、シニア層を大切にしているという政権も、後期高齢者の負担増を緊急に検討せざるを得なくなったのではないでしょうか。

次に、金融所得税の課税強化について考えていきます。
これは、岸田政権が掲げる成長と分配の方針の分配に関連する施策の一つです。
所得1億円から税率が下がるという分析が一時期、報道されておりましたが、それを根拠にした政策となります。
これは、内閣の租税制度を検討する税制調査会会長宮沢氏の肝いりの政策だそうです。
東洋経済の記事によると、4~5年前から、宮沢氏は、1億円の壁の話を持論のようにしていたそうです。
宮沢氏は東大卒業後に、大蔵省に入省していたキャリアを持ちます。
大蔵省出身なので、日本の歳入歳出に対しても明るく、現在の歳入歳出構造にも大きな危機感を持っていらっしゃるのではないでしょうか。
現在、日本は大きく借金に依存している財政です。
予算の歳入の34%を借金に頼っています。
そして、歳出の22%で借金の返済をしています。
つまり、3分の1以上を借金で賄い、5分の1以上は返済で追われている火の車状態です。



宮沢氏は、この財政に危機感を抱き、金融所得税の課税強化などの歳入改善に熱心なのかもしれません。
では、なぜコロナ禍から回復できていない今、それを推し進めようとするのでしょうか。
それは、政局の流れを読んでいるからかもしれません。
つまり、今の岸田政権の間に、なんとか肝いりの政策を通したいと焦っているのかもしれません。
宮沢氏は、税調会長就任後の2015年以降に、何度も増税プランを首相官邸に持ち込んでいたそうです。
しかし、安倍政権時代の2019年9月に税調会長を甘利氏に交代させられています。
また、菅政権時には、”NISAの拡充が先”と棄却されてしまったそうです。
つまり、これまで政権トップに拒まれてきましたので、大きな方向性で食い違いがない岸田政権はチャンスととらえているのではないでしょうか。
しかし、岸田政権がいつ終了するかわからないという焦りがあるのではないでしょうか。
安部氏のような長期政権を除くと、各政権の寿命は長くありません。
前菅政権は、在職日数が384日。
安倍政権の前の野田政権は、在職日数482日。
各政権2年も続いていません。
岸田政権は、昨年10月4日に就任されたため、約一年が経ちます。
いつ政権交代が起こってもおかしくない、早めに悲願の政策を実現させたいという焦りがあるのかもしれません。

このように、各増税や各負担増の政策の裏には、別々の課題が隠されており、日本は、複数の深刻な課題を抱えている状況です。
そのため、景気が悪くても、負担が増えていくという、我々にとっては非常に厳しく、しんどい政策が続いていきそうです。

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