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自分で治す『気』の健康術

――心とからだのバランスをとる“気”のコントロール術

三人寄ればからだの話や薬の話が出るように、世はまさに健康ブームである。
しかし、だからといって健康について本当にわかってきているのかというと、そうではないようだ。 たとえば、「運動不足だと健康によくない」ということで、エアロビクスやジョギングなどをがむしゃらにやったりするが、これはおかしい。こうした運動は、基本的には筋肉を鍛えるものだからだ。そして無理な運動をすれば、逆効果になる場合が多いことは、すでに知られているところだ。 また、最近の健康法にはこれを食べるとあれにいい、これにいいと、やたらと食べ物がらみのものが多い。しかし、シイタケやニンジンだけで健康が得られるわけがない。万病に効くといわれているものでも、胃の悪い人には向かないものもあるだろう。 薬にも同じことがいえる。私は医者からもらった薬を一週間飲み続けて効かないようなら、飲むのをやめるべきだと思っている。西洋医学の薬は、症状別に細かく分析されているので、その人のツボに命中すれば特効的には作用する。しかし、一週間以上も続けていると、かえって毒の要素のほうが大きくなってくる。 長年医者通いを続け、たっぷりと薬を飲まされ続けている人の顔色を見ると、いわゆる「薬焼け」の色が出ている。 このような健康に対する考え方は、いずれも不自然なものである。私がこの本で紹介する“気の健康術”というのは、中国の長い長い歴史のなかで育まれ完成されてきた「導引術(どういんじゅつ)」に基づいている。 人間は、自然に反した生き方や生活が続くと、必ず病気になったり、痛みや苦しみが出たり、ストレスに悩まされるようになる。「胃が悪い」「肝臓が悪い」というからだの不調や、「眠れない」「人とうまく話ができない」「気が弱い」「イライラする」「不安だ」といった心の悩みなどは、導引術からみれば、どれも自然な生き方、素直な生活をしていないためにおこるのである。「健康」の“健”の字はもともと「丈夫なからだ」という意味であり、“康”は「安らかな心」という意味である。この二つが合わさってはじめて健康が得られるのである。つまり健康は、自然な生き方から生まれるのである。 では、自然な生き方とは何だろうか。それは、「気」がよく働くような状態のことである。「気」というのは、自然のエネルギーのことだが、病気や老化は悪い気がからだにたまることによっておこる。この邪気(じゃき)をからだの外に排出するために、ツボを刺激しながら呼吸をするのが導引術である。 十分な呼吸によって、古い血に含まれた老廃物や炭酸ガスが体外に排泄され、同時に新鮮な気が血液にとり入れられる。この新鮮な気と一体になった血液を、導引術では「気血」と呼んでいる。血はからだの外に出れば単なる血である。ところが、生きているからだのなかを循環しているときは、気と一体になって流れている。この状態の血が気血である。冷えや過労などさまざまな原因でからだの調子がくずれると、からだの一部、たとえば内臓や関節などに気血が停滞してしまう。これが邪気となって、病気や痛みを生むわけである。 本書では、生活のなかのさまざまな痛み、苦しみ、症状を軽減させ、あるいは根本的に治(なお)す方法を導引術の立場から説明してみた。しかも、多忙すぎる現代人のために短時間で効果があり、体力も必要としないもの、また、どこでもやれそうなものという点も考えて選んでみた。「こんなことで本当によくなるのか」と不思議に思われるかもしれないが、そう思ったらどの方法でもいいから試してみるといい。きっと効果が現れるはずである。