10年ほどんと毎日飲んでいた酒をやめた話

酒をやめて1年が経った。現在妊娠中で、いつ生まれてもおかしくない状況にあるので、妊活のために酒をやめたのかと聞かれるが、特にそういうわけではない。全く考えなかったかと言われるとそりゃあ2割くらいは子供が欲しいなあと思ってそのためにも酒をやめることにしたんだけど、本質としてはそこではない。

酒が飲める歳になってからはとにかくだいたい酒を飲んでいたと思う。酒が強いというよりは酔った状態でも次の日になるまでなかなか気持ち悪くなったりしないので、とにかく楽しいのだ。血行も良くなって気分がよく、陽気になりなんでもできるような気持ちになってしまい失敗することも少なくなかったと思う。

お酒と上手に付き合うことは難しく、酒を飲んで記憶をなくしては昨日自分が何を話したのか、どんな様子だったかをを聞くのが恐ろしく、最終的には「酒を飲んでいる間に起こったことは聞かないまま一生を終える」という恐ろしい結論を導き出し実行していたため、自分だけは楽しく暮らしていた。

とはいえ、飲み屋がいつでもある環境から引っ越したこともあり、家で一人飲むことが増えた。人には迷惑をかけなくなったけれど、週に3日くらいは飲みすぎて二日酔い、胃はまあだいたい痛く、ハイボールを毎晩大量に飲むのでペットボトルごみも1週間でごみ箱からあふれるというありさまだった。

なぜそんなに毎日飲むのか、多分毎日をどうにかして「特別に楽しい1日」にしたかったんだと思う。私は死ぬことが怖いという気持ちがないし、死んだ後の世界もないと思っているから、常に今しかなかったんだと思う。未来が怖いし、過去も思い出したくない。でも毎日最高ってわけじゃない。だから酒を飲んで特別に楽しい時間のまま眠りたかったんだと思う。

でもどうやら私は自ら死ぬ気はなさそうだし、そうなるとまだ何十年も人生がありそうで、先にぼんやりとみえる人生を思うととても辛くて、これからの数十年をどう暮らせばいいか本当にわからなくなった。30歳になって、若くもないしもう終わりでもない、そしてその時間はしばらく続くらしい。どうにかするしかない。

酒を飲んでいる時間は無に近い。人生をやっていない時間だ。だから上手く使えばリラックスできるし、リフレッシュにもなる。でも私の酒はほとんどの場合逃避だった。人生と向き合わなくてはいけないと思い、酒をやめた。

酒をやめて4ヶ月ほど経った時妊娠した。それからつわりを経験したり、少しずつ大きくなるお腹におびえたり、少し楽しみになったり、不安でいっぱいになったりした。どうやら人と比べて自分は随分弱い精神で、そのため人生が本当に嫌になったり、まあでもそうしながら臨月までなんとかたどり着いた。

今年は酒をやめることから始まってとにかく自分の人生と向き合っていたのでとにかくずっと、とても辛かった。感染症が世界に蔓延していたこともあって、友達にもなかなか会えなくて、やっと会えると思ってもまた感染が拡大して会えなくなって、妊娠中だし絶対にかかっちゃいけないと思っていたこともあったし、仕事も家で完結するので人に会うことがなく、イベントも中止が多く、ほとんど夫としか会うこともなくて、酒も飲めないし悪夢ばかりみて、どこにも逃げ場がなかった。

もういつ産まれてもおかしくない状況で今この日記を書いている。子供が生まれる実感はなかなかあったりなかったりだけど、お腹の中にいる人間に、ついに会えるのはとても楽しみだ。来年はきっといい一年になると思う。

話を戻して、産んでもまだしばらくお酒は飲めないけど、いつかまたきっと飲むと思う。その時はいい付き合い方になることを願う。

数年後キンキンに冷えた生ビールを飲んだら、その時は多分泣くと思う。



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