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Mexico トンネルの向こうは不思議の町でした 【後編】

アメリカとの国境の街、モンテレイから数時間。
トンネルを抜け、辿り着いたのは秘境の町〈レアル・デ ・カトルセ〉。

【2日目】

早朝、寒くて目が覚める。
極寒。メキシコって、暑いんじゃ無かったっけ?
なかなかベットから出れない。意を決してベットから這い出し、着替える。
ダウン二枚重ね。持っている装備を総動員させ、寒さ対策。

本日は、ツアーに出発!
朝8時、カウボーイのおっちゃんと待ち合わせ。
意外と時間通りに来てくれて安心。

そう、メキシコ、待ち合わせで会えない問題。
何時ね〜、あとでね〜、は、大体嘘。というか、みんな本当に適当。
2、3時間の誤差は当たり前。
一度、17時の約束なのに、11時に「来ちゃった♡」された事があった。
そっちもあり!?なんでもあり、それがメキシコ。

馬に乗って、古都を見に行く。
と、言う建前で、ちょっとあるモノを探しに行くツアーである。

2人とも、初めてでは無いにしろ、記憶に乏しいほど昔にしか乗馬経験が無かったので、最初はテンション高め。

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舗装されていない細い道を、ゆっくり ゆっくり降りていく。
途中、崖っぷちに十字架があったり、馬でさえギリギリかと思えるような道幅を、定員オーバーすぎる車が駆け抜けて行ったり。
すぐ左手は、落ちたら戻ってこれないような谷が広がっているのに、なぜあんなにスピードが出せるのか。
こちらは、馬が車にびっくりして走り出してしまわないかヒヤヒヤしながら、何度も車をやり過ごす。

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だんだん、お尻が痛くなってきた。
馬も、私たちに慣れてきたのか、勝手にギャロップとか始めちゃうから、余計に振動でお尻が痛い。

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最初は、素晴らしい景色を見たり、乗馬を楽しんだりしていた2人だったが、顔が曇りだす。もう、ちょっと辛い…
そう思った時、カウボーイのおっちゃんが、一軒の家の前で止まる。

ここか!?着いたのか!?

ドキドキしながら、家に入って行ったおっちゃんを待つ。
おっちゃんが出てきた。
出発した。
ただ、知り合いの家に届け物をしただけだったらしい。

おい。仮にも仕事中だぞ。
でも確かに、この距離降りてくるのは容易いことでは無いから、下山するついでに用事を頼まれる事もあるのか。
この町のルール。郷に入っては郷に従え、である。

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さらに、川の跡のような道を抜けると、その先は草原のようになっていて、しばらく進んで、馬から降りた。
手際良く、近くの木に馬を縛り、ついて来い、とジェスチャーされる。
道なき道を、おっちゃんについて入っていく。

「ここに座って待て」

おっちゃんは、口に指をあて、シーっと言い残して更に奥へ行ってしまった。
そう、ここには、アレがあるのだ。
このツアーの1番の目的。

【ペヨーテ】
サボテンの一種である この植物は、メキシコの民族、ウイチョール族の神聖な儀式に用いられる。
幻覚作用などがあり、様々な病を治す薬として、神々と繋がる手段として、古くから用いられてきた植物である。

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現地では、とても神聖なモノの為、町からの持ち出しは違法。
そして、見つけるのがとても難しい。
慣れている人でないと、とてもじゃ無いが、発見は無理だと思う。
その為、頑張って町へ辿り着き、シャーマンの儀式に参列させて貰うか、カウボーイのおっちゃんに頼んで連れてきてもらうしかないのである。

本当は、シャーマンの儀式に参加したかったのだが、この儀式、年に一度しか行われないにも関わらず、毎年この辺、としか、時期も決まっていないらしい。
運良く居合わせでもしない限り、参加は不可能なのである。

その〈幻のサボテン〉を求めて、険しい山道を登り、狭くて怖いトンネルを抜け、水シャワーも、乗馬のお尻の痛さも我慢して、ここまで来たのである。

しばらく待つと、おっちゃんが例のブツを持って戻ってきた。
戻って来なかったら、どうしよう…そう思いかけた時だったので、とても安心したのを覚えている。

いざ、初ペヨーテ。



「くぁwせdrftgyふじこlp…っ!?」

そう、まずい。超絶苦くてまずいのだ。

腐った きゅうりを泥水に漬けた味。

思わず吐き出す私。
頑張って飲み込むが、気持ち悪くなって顔が真っ青になる よーじろーさん。

苦い、苦いとは聞いていたのだが、想像を絶する不味さだった。
でも、ここでしか食べれない、ここでしか体験できない事だから、と頑張ってみるが、最初の一口以降、全く進めない私。

満面の笑みで、もっと食え、もっと食えと、次から次へと取ってきてくれるおっちゃん。自ら頼んで、お金まで払って、やっとの思いでここまで来たのに、大事な大事なペヨーテを、掴んで思いっきり投げ捨てたい衝動に駆られた。

この体験がしたかったのである。
目標達成。ははは。

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さて、帰ろう。
来た道を、ひたすら馬に揺られながら登っていく。
お尻が限界である。胃も、限界である。

何度も吐きそうになりながら、必死に堪える2人。
おっちゃんと、馬だけが、楽しそう。

長い長い旅の終わり。
町まで帰ってきた時は、ちょっと泣きそうだった。

お世話になった おっちゃんと、馬たちにお礼を言い、ハグして別れた。
まだ、口の中は苦かった。

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ちょっと休憩して、まだ昼過ぎくらいだったので、町の反対側にある廃墟を見にいく事にした。

これも、よーじろーさんの提案である。
私的には、廃墟なんて見て、何が面白いのか…と思わなくも無かったのだが、すごいらしい、と言うので、言われるがままに着いていく。
ペヨーテの苦さが余りにもショックで、体を動かして、何か他のことを考えていたかったのかもしれない。

今度は、行きが上りである。
こっちのツアーもあるらしいが、お尻が限界だったので、歩いて向かう事にした。
ジグザクと、どんどん道を登っていく。

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ふと振り返った先に、町並みがとても綺麗だった。
これは、暗くなったら夜景が綺麗かな?そんな話をしながら、更に上へ上へ。

だんだん、日が沈んできた。
馬が通るから、道に落とし物が多くて臭い。

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もう疲れたー!!
そう叫びそうになった時、廃墟が見えた。

「 …... かっこいい」

まるで、ドラクエに出てくる世界みたいだ。
そう言う よーじろーさんに共感してあげられなくて、申し訳ない。
ドラクエやった事ないから、わかんないや。
でも、かっこいいのはわかる!

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廃墟は、ただの廃墟なのに、何故かとても澄んでいて、懐かしくて、心地よかった。
崩れて、門だけになってしまった家や、屋根のなくなった教会の跡らしき建物、瓦礫の山。
どれも少し寂しくて、幻想的で、昔の人の暮らしのリアルがそこにあって。

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何時間でも居れる。
そんな気持ちになった。

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少し夕焼けを見て、夜景まで待とうか迷ったけど、外灯も何もない事に気付き、慌てて下山。
町に戻った時には、もう真っ暗になっていた。

簡単に夕飯を済ませ、宿に戻る。
ベットに潜り込み、目を閉じてもまだ、あの廃墟からみた光景が目蓋の裏に映る。とても素敵な場所だった。来て良かった。

口の中は、まだ少し苦い味がした。

Hasta mañana

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