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細胞の中に分子レベルの「らせん」があふれている理由をひとことで説明された時の目からウロコ感について書きたい

前回はアクチンフィラメントをまっすぐな棒みたいに描いちゃったけど、

実はアクチンフィラメントは、アクチン分子がぐるぐるとらせん状に連なった、ねじれたロープみたいな構造をしている。

アクチンフィラメントの他に、細胞の中にある構造としては、たとえばチューブリンというタンパク質がつながってできる「微小管」という構造も、美しいらせん状になってる。

あと、ご存じの通りDNAも「二重らせん」といって、やっぱりらせん状の細長い分子だ。

この他にも、細胞の中には分子レベルの「らせん」がたくさんある。

細胞の中で分子たちがつくる立体構造に、こんなにもらせんが多い理由について、むかし僕の恩師はすばらしくシンプルに説明していて、
なるほど!!
と目からウロコだった。

僕らの先生によると、タンパク質などの生体分子がつながって細長い構造を作る時に、その構造がらせん状になるのは「当たり前だ」というのだ。

だってそうだろう?

ある分子が、細長くひも状に連なっていくためには、
 となりの分子とくっつくための「A面」と、
 A面とくっつく「B面」
のふたつの面が、ひとつの分子の表面に両方とも必要だ。

もし、ある分子の表面にあるA面とB面が、精密に平行だったら・・・

この分子は、レゴブロックをつないでいくみたいに、どこまでもまっすぐ連なっていくだろう。

けど、タンパク質はレゴじゃない。
自然にできたタンパク質分子で
 A面とB面が完全に並行
なんてことが起こるわけない。

自然にできたタンパク質では、A面とB面に角度が付いているのが普通だろう。そんなタンパク質のA面に、つぎのタンパク質のB面をつないでいけば、実は自然にらせん状の構造ができるのだ。

つまり、
 自分自身のA面にくっつくB面を、たまたま獲得してしまったタンパク質
があれば、それは自然に連なって、自然にらせんになる。

だから、細胞の中が分子レベルのらせんであふれ返ってるのは、当たり前の結果にすぎないのだ!

・・・

書くと長いな・・・

あの時、僕らの先生は身振りもまじえて、
「こう、面と面に角度が付くのが当たり前なんだから、らせんになるのは当たり前。」
って感じで短く言い切って、日ごろからタンパク質の立体構造のことばかり考えていた教え子の学生たちは一瞬で理解して、
「あ!なるほど!!」
ってなったんだけど。

あの時の、不思議だったことをひと言でピシャリと説明されて、
「うわ、やられた!」
って感じが伝わらないな、これじゃ・・・

ただ、今改めて考えると先生の説明は少し単純すぎる。
らせんになるには、A面とB面に角度が付くことに加えて、接続面での回転も考える必要があるだろう。
でも、だからといって先生の説明のあざやかさが色あせることは、全くないのだ。

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