口から阿弥陀如来

「阿弥陀仏」と唱えると
六体の阿弥陀如来が
空也上人の口から現れた。

疫病が蔓延した平安時代、
空也上人は疫病退散を命じられ、
命を顧みず病人を介抱した。

首から下げた鉦を右手で叩き、
左手は鹿角杖をついて
京都の街を遊説していった。

念仏が如来像となる伝説を
仏師運慶の四男康勝が
鎌倉時代に像にして彫った。

六波羅密寺に収められた
この空也上人立像が
国立博物館にやってきた。

痩せ細った空也上人の
昂然とした顔の口から
確かに六体の如来像の姿。

思わず「阿弥陀仏」と
上人とともに唱えてしまう、
心に迫る彫像である。