セミは生きていた

ログハウスビルダーの
Nさんが朝早く顔を見せる。
彼の足下に一匹のセミが
仰向けになっていた。

まったく動かないので
死んだように思えたけれど、
彼がつかもうとすると、
ばたばたと羽根を動かした。

透明の羽根なので
ミンミンゼミのようなのだ。
つかんで空中に放ったら、
ミンと泣いて飛んでいった。

生きていましたね、
はい、生きていました。
Nさんは相好を崩して
屈託なく笑った。
僕も一緒になって笑った。