フォーレのデュオ

美人ピアニスト、中島由紀さんの
「グッド・アフタヌーン・コンサート」は
5月9日、第10回目を迎えました。
フランスに留学していた中島さんが
今回選んだ作品はガブリエル・フォーレ。
フォーレ没後100年が今年に当たる故に
弾いてみようと決意したそうです。

中島さんはこれまでフォーレを敬遠していました。
フランスの作曲家ではドビュッシーやラベルを好み、
フォーレの楽譜はピアノの脇に追いやられていたのです。
しかし記念すべき10回目にフォーレを選んで
いろいろな曲を聴いて弾いていくうちに
フォーレの二重性に惹かれるようになったと言います。

厳格な宗教音楽の学校に入って寮生活を送り、
イタリアルネッサンスの音楽に浸る日々。
フォーレの音楽はそこで基礎が作られ、
その後サロンに出入りして様々な音楽に触れていきます。
そうしたこで、厳格でいながら美しく自由であり、
硬質でいながら豊かな叙情性があります。

フォーレのポエティカルなメロディは
実は計算し尽くされて演奏がとても難しいようです。
前半は中島さんがピアノソロを奏でました。
「舟歌第2番」「即興曲第3番」「夜想曲第6番」。
超絶技巧のリストがフォーレの楽譜を見て、
「とても難しい」と唸ったというのもわかります。

後半は中島さんの盟友であります
玉井菜採さんのヴァイオリンとのデュオ。
フォーレの「ヴァイオリンソナタ第1番」、
芸大教授の玉井さんの音色は七色変化、
中島さんのピアノとの掛け合いは絶妙、
最後まで固唾を呑むスリリングな演奏でした。

アンコールはフォーレの「子守歌」。
やさしく美しい旋律を中島さんのピアノと
玉井さんのヴァイオリンが奏でていきます。
二人のハーモニーがホールを包み込む。
最後のヴァイオリンのロングトーン、
その美しさに僕は天国へ浮上していきました。