うわわわ、浮遊感!

大空をパラグライダーで

ふわふわと浮かんだことがある。

箱根の仙石原あたりで

スクールの体験コースに入って

鳥のように舞ったのだ。


ヘルメットにゴーグル、

ハンモックのような袋の

ハーネスにお尻を入れて、

楕円形のパラシュートを背に

両手に1本ずつハンドルを持つ。


丘の上から走ってテイクオフ、

すぐに翼に空気が含まれて

ふわっと5mくらい上がった。

インストラクターが拡声器で叫ぶ。

「どうですか?いい感じですよ」


インストラクターが僕をロープで

つなげているので大して怖くない。

「右手を少しだけ下げて!」

言われるままにやると右に動く。

「曲がりたい方の手を引くだけです!」


「降りたいときは両手を引けばいい!

簡単でしょう!では行ってらっしゃい!」

インストラクターはそう僕に告げて

手に持つロープを離したのである。

すると体がどんどん上がっていく。


うわわわわ、うわわわわ!

もはや声など出ない。怖いのだ。

「上昇気流に乗ってますよ!」

地上からインストラクターが叫ぶ。

「どんどん上がってください!」


言われなくてもどんどん上がっている。

地に足が着いてないとはこのこと。

とにかく心許なく、不安が募る。

「大丈夫ですよ!その感じです!」

インストラクターはどんどん小さくなる。


「右に流されたら左手を引く、

左に流されたら右手を引く」

飛ぶ前に教わったことを実践。

その頃には肝が据わったのか、

メチャクチャ楽しくなってきた。


こうなりゃ、死んだっていいや、

死んだら死んだときだ!

そんなふうに思えてくる。

もう地上を見ることはなくなった。

遠くの山や原野を眺めている。


ぷかぷかと青空に浮かんでいる。

鳥が舞うように飛翔している。

こんな気分は生まれて初めて。

浮かんでいるのが実に気持ちいい。

浮遊感がたまらなくいいのだ!


1時間は浮かんでいたように思う。

上昇気流がなくなってきたのか、

同じように両手を上げていたのに、

徐々に高度が下がってきた。

目の前に到着地点が見えてくる。


地上からインストラクターが叫ぶ。

「はい、両手を下げて!」

一気に降下してお尻をついて着地。

「最高!もう最高でした!」

感想を聞かれる前に答えていた。


あのときの浮遊感が忘れられない!