あすなろのように

あすなろはひばのことだと

今になって知った。

ひのきになりたいがなれない、

明日にはひのきになりたいと

あすなろの名がついたという。


あすなろは翌檜と書く。

ひのきは檜と書くわけだから、

翌日は檜になりたいというのは

その漢字からもわかる。

そのいじらしさが好きだ。


ひのきに憧れたというが

あすなろも立派な高級材だ。

ゆっくりと成長するから

緻密で狂いが少なく、

殺菌力や耐久性にも優れる。


あすなろの意味するところは

人間にも当てはめられる。

井上靖の『あすなろ物語』や

柴門ふみの『あすなろ白書』は

人の成長の様子を著している。


若いときはわけもなく焦るが

ゆっくりじっくりしっかりと

足下を見つめて一歩ずつ、

前を向いて進んでいけばいい。

今になってつくづくそう思うが、

それは年老いても変わらない。


死ぬまでゆっくりじっくりしっかり。

あすなろのように生きていきたい。