ウディ・アレンの「ジャスミン」

「ジャスミンは夜に花が咲くのよ」
美しい女性からそんなことを言われたら
大抵の男はノックアウトされるだろう。
ジャスミンという名の美しい女性を
ケイト・ブランシェットが演じる。
クールな切れ長の目に魅せられてしまう。

ニューヨークの資産家と結婚した
ジャスミンはセレブな日々を送っていた。
そんな夫が詐欺罪で訴えられ、
全財産を没収されて監獄行きとなり、
ジャスミンはサンフランシスコにいる
下層階級の妹のもとに身を寄せる。

ほぼ一文無しのジャスミンだけど
プライドと服装はセレブのまま。
エルメスのスカーフを巻き、
ハンドバッグはバーキン、
ジャネルのジャケットを羽織る。
ウォッカマティーニがお気に入り。

しかし貧困は顔に出てしまう。
目の下には隈、マスカラが落ちる。
心に隙があるから男に言い寄られ、
娼婦になったような哀しみが溢れる。
そんなあるときリッチな男性に出会い、
嘘で固めた身の上話で婚約となるが……。

誰もがあり得る痛い痛い身の上を
ウディ・アレンがコメディに仕立てる。
悲劇の物語は喜劇にも成り得る。
泣きたいほど悲しい話は逆に笑ってしまえる。
男に頼ることに決別したジャスミンは
妹の家を出て女ひとり自活の道を歩む。