パーカーの「Star Eyes」

彼はチャーリー・パーカーが好きだった。
だから彼女はアルトサックスを習った。
初めてのステージで彼女はパーカーの
「Star Eyes」を吹くことに決めた。

ピアノが曲の前奏を弾き出す。
彼女は目を瞑り、彼との思いに耽る。
ゆっくりとその思いが高まったとき、
彼女はアルトサックスを奏で始めた。

波打ち際を一緒に歩いたとき、
花束を持って彼がプロポーズしたとき、
家の屋根に上って修繕したときの彼、
パーカーのレコードを聞いたとき……。

「Star Eyes」のメロディに乗せて、
彼との思いをサックスで吹いていった。
決して上手じゃないのに聴衆は泣いた。
彼女の一音一音にぐっと来てしまったのだ。

彼女は演奏しながら一心に願った。
「スターアイズ、星の瞳」をした彼の、
天国にいる彼のもとに音が届いて欲しいと、
「あなたの好きだったパーカーの曲よ」と……。