古い柱時計

カチカチカチ

古い柱時計が動いている。

時を刻む音がやさしく

遠い昔のそよ風を運んでくれる。


ボーン、ボーン、ボーン

時刻を告げる音も

遠い彼方にぼくを誘ってくれる。

昭和初期の素朴な暮らしへ。


長い間、この柱時計は

動かさないでいた。

妻が音が気になって

眠れないと言ったからだ。


ぼくはとても寂しかった。

この柱時計は誕生して

おそらく100年近く経っている。

でもきちんと働けるのだ。


凄いおじいちゃんだ。

働きたいと訴えていたのだ。

丸い顔を持つ渋い柱時計。

ゼンマイをぐいっと巻いた。


再び命が吹き込まれた。

生命の息吹が聞こえる。

動き出してからしっかり

時を刻んでいる。


凄いぞ、おじいちゃん時計!

その勇姿は誇らしげだ。