1966年、夏「岩倉アリア」
Switchで4400円。
プレイ時間はコンプリートまで10時間。
あらすじ
ーー1966年、あの夏を覚えている。
孤児で中卒、幼少期には養父に家庭内暴力を受け、就職後も度重なるセクハラにより男性不信に陥り無職となった北川 壱子(16)は、バザーで出会った紳士 岩倉 周(あまね)にスカウトされ、岩倉家の女中として働くことになった。
そのお屋敷はまるで文化財のような洋館で、住込みの女中は壱子しかいないという。
周の一人娘である岩倉アリアーー神秘的な風貌をした彼女と過ごす日々が、
壱子の運命を大きく左右する。
システム
通常のADVゲーム。
選択肢は多いが、エンディング分岐は一部のみ。
他に、お屋敷のお掃除をするパートがあり、複数の部屋を掃除して回るのだが、各部屋テキストは2回目まで存在し、主要な部屋のみ掃除すればお掃除をやめて進められるので、周回プレイ時もさして苦労しない。
難易度
ほぼ皆無。
何個前の分岐が影響して……とか、
好感度が……とか、そういうフラグシステムではなく
純粋なツリー型イベント分岐システムのため
選択肢ごとにセーブしておけば、バッドエンドに陥ってもすぐ戻ってこれる。
雰囲気
エログロナンセンス……かなあ。
最終的な主題としては光の百合なんだけど、
全体的に男性の絡む性・猟奇といった要素が多く、
また主観である壱子が男性不信のため、それらを悪いもの・嫌なものとして捉えるト書きになっており、壱子に感情移入するとかなりしんどい。
一方で、10つあるエンディングのうち、お屋敷の秘密に触れる前にゲームオーバーになった場合は一般男性と結婚して子を設けたりしているものもあり、ファンシーな百合物というよりは、伝奇小説に近い仕上がり。
感想
かなり面白い。
エンディングは実質9つあるのだが、ほぼすべてが1999年、
すなわち”あの夏”を33年前の出来事として振り返る形式となっており、
壱子が49歳のおばさんになっている。
どんなおばさんになったのか、というのがエンディングごとの大きな違いとなっており、一般男性と結婚して幸せな家庭を築くものもあれば、
結婚と離婚を繰り返したり、アル中になったりもする。
女女で幸福な未来を掴むものもあるし、ビターエンドもある。(アル中人生破滅エンドはビターどころかカカオ豆だよ)
なお即死エンドは1つしかない(あるのかよ)
幸福であれ不幸であれ、16歳の夏を通り過ぎて49歳までは生きられることがほぼ確定している壱子。人間ってタフだよな。
本作の伝奇要素とは「岩倉アリア」の存在そのものであり、
あえてこの記事では彼女についてほぼ触れてこなかった。
これは、タイトルそのものたる彼女の神秘性を保ったままゲームをプレイしてほしいという気持ちから。
本作が忠実に扱ったのは、女性の加齢についてだろう。
一人の人間が年を取れば、様々なことが起こる。
社会的な立場が変わり、親になることもあり、友と疎遠になったり、あるいは交友が続いていたり。体がボロボロになっていたり、若くはなくてもいつまでもお洒落を楽しんでいたり。
そういった、16歳の若い女性が、いずれは迎える49歳を、今現在の心持ちと努力次第で幸福にも不幸にも変えられる、ということを伝えたかったのではないか。
そして、逆にーー
プレイ済みの人なら何を言いたいかお分かりでしょうね。(唐突なポアロ)