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ライドアトラクション制作話

Ace Rider Squadronというワールド

今回はギミック解説番外編ということでこのワールドを制作したときの過程をお話したいと思います。このワールドは後述するコンテストに応募するために作りました。
この記事はワールドで実際に遊んでから読むと理解が深まります。

コンテスト開催!

ライドアトラクションとは!
遊園地の乗り物のような、自動で動く乗り物に乗って楽しむものです。
2023年1月、t_furuさんによるライドアトラクションのコンテストが発表されました。

もともと自身のワールドで自動操縦の乗り物は作っていたので、それをそのまま投稿しようか?と考えていました。航空母艦かるらのエアショーです。
ただしこのワールド、自分で操縦できる乗り物もあるし、それ以外の施設もたくさん置いています。ライド系アトラクションとしては弱いかも…と思っていました。

飛行機のライドアトラクションを作りたいけど、既存のエアショーではものたりない…。と思ってたら!
思い付きました!これだ!これですよ~~~!

某大人気空戦ゲームをclusterで再現してみようと思いつきました!
いわゆるオマージュというやつです!
ただ、当時のツイートでも言っているようにほんとにこれできるんだろうか…という不安だらけのスタートでした。

ワールド開発開始!

まずは仕様書

仕様書を作りました。これはワールドの設計図のようなもので、いろいろな情報をまとめるために作ります。
主にこんな情報がわかります。
・なにがしたいのか
・なにが必要か
・なにが足りないのか
そしてできた仕様書がこちらです!大公開!

仕様書

これでも全部じゃないです。これだけの情報を決めておくことでワールドのイメージややることがばっちり決まります。
ワールド名や細かい箇所が若干公開したものと違いますが、ほぼそのままワールドに反映されてますね!ここで決まったことを実行していった感じです。できるかどうかわらかないこともたくさんありました。
そのたびに試行錯誤して解決していった感じです。

ミソさんに協力要請!

最初にいきなり問題発生!
ワールドで使用する飛行機のモデルがないのです。自ワールド、かるらで使用しているモデルは配布モデルをBlenderで加工したものですが本格的な空戦を作りたいのでちょっと可愛すぎる…。かと言って自分で最初から作るには技術が足りない…。地道にネットで配布してる中で良い感じのを探すしかないか…?
果たしてそんな都合よく見つかるだろうか…?
あれこれ思案してるうちにパッと思い浮かんだのがミソさんでした。


ミソさん

ミソさんは知る人ぞ知るcluster界の魔女ですが、実はその裏の顔(?)は生粋のミリタリーマニアだったのです!!(笑)
ミソさんも空母のワールドを制作しており、なんとフルスクラッチモデルの戦闘機も開発しています。筆者も乗り物を作るときに技術提供をたくさんいただいている方です。

そんなミソさんの戦闘機モデルを今回のワールドに使わせてもらえないか?という打診をしたところ、なんと快諾!
それどころか仕様書を見せたら他のモデルも作ってくれるという。
な、なんだってーーーーー!いいんですかーーーー!!!!!!
これは期待大!それもそのはず、ミソさんも某大人気ゲームのプレイヤーなのです!
そして提供いただいたモデルがこちら。

巨大飛行物体
敵エース機
敵護衛機

す、素晴らしすぎるぅーーーー!!!!
モデルの写真を受け取るたびに悶えていました。
それもそのはず、仕様書に書かれているイメージにドンピシャなのです。
リテイクなどありえません。
その他にも

ハンガー
プレイヤー機複座&武装バージョン
ミソ隊バージョン
ホムラ隊バージョン
AWACS
ブリーフィングマップ

多数のモデル提供をいただきました!感謝!!
テンション爆上がり!!これはワールド制作も気合を入れねば!!

基盤作り

まずは雰囲気

というわけで、最初に決めるのは背景と音楽です。
いろいろなワールドの作り方があるとは思いますが筆者が最初に決めるのはここです。
何日も検索していい感じのSKYBOXとBGMを決めることができました。
これでばっちりイメージ通りです!
特にフラメンコの曲には非常にこだわりました。
完成後のイメージを膨らませてずっと佇んでいたものです。

最初は空と音楽だけでした

基本システム

このワールドではロックオンシステムを採用しています。
と言っても、実際にロックオンしてミサイルを誘導しているわけではありません。タイムラインを使用してそのように見せています。
基本的な動きは前記事であるライド(自動操縦の乗り物)で作っています。
コース上を決まった通りに動く飛行機に、決まった通りに動くミサイルが命中してるように見えるというわけです。
音などはそれに合うように調整しています。

テストのタイムライン

飛行機にくっついてる四角い枠はUnityのAim Constraintという機能を使っています。自分のほうを向かせることで常に四角く見えるようにしています。

枠はCubeの組み合わせです
Aim Constraint

このギミックはワールド内のラウンジ奥にあるテストシーンで見ることができます。本編はほぼ全てこれの組み合わせて作られています。

本編ではパスが45個というちょっと大変な数になっています(汗)
プレイヤー機の航路をまず作り、それに敵機や味方機、ミサイル等を追加して作っていきました。
航路に関してはすでに頭の中で「こんな場面を作りたい」というイメージがあったので、それに沿って飛ばしていきました。

タイムラインは系統ごとにグループ化しています

演出とか工夫とか

飛行機っぽい動きを作る

このワールドで最も気を使って作ったところです。
飛行機のライドアトラクションを作るには、飛行機の動きを可能な限り再現したかったのです。
飛行機の動きは地上を移動する車や馬とは違い、三次元的な動きになります。
飛行機の動きの基本はピッチ、ロール、ヨーの3種類です。

ピッチ、ロール、ヨー

今回のワールドで扱うのは飛行機の中でも戦闘機です。
戦闘機が方向を変えるときにはロールで傾きを変えてからピッチで旋回する、という方法をとります。ヨーはほぼ使いません。
なぜならそのほうが早く曲がれるからです。
筆写がエースパイロットだった時代でもこのように操作していました。
(ゲームでの話です。本物の戦闘機には乗ったことはありません。念のため。笑)
ヨーはどちらかというと微調整なんかに使います。
ちなみに旅客機の操作はぜんぜん違います。ロールしまくってたら乗客が大変なことになっちゃうのでなるべく機体を傾けないように操作します。

戦闘機の旋回

実際にこの動きを作るにはパスに角度を設定していきます。
曲がりたい方向に90度に機体を傾けて、上昇ピッチするような動きを作りました。
こうすることでリアルな搭乗体験が再現できました。

ここの項目で傾き(ロール)を設定できます

さらに気を付けたのは慣性の法則です。
パスを急カーブさせると不自然な動きをしたりします。
飛行機は何トンもの重量がある物体なので、急に曲がることは不可能です。
それっぽく見せるために急激な方向変換は避けて、ゆるやかに曲がるように調整しました。
ただし、敵エース機だけは別格ですw
自由に飛んでもらって未知の技術を表現しました。

距離と速度

このワールドでは距離と速度にも調整を入れています。
なんか、飛行機の距離は近いし速度もなんだか遅くない?と思った方もいらっしゃると思います。じつはそれはわざとやっています。
エースパイロット時代に空戦した経験では(ゲームの話ですよ!)音速で数キロ離れた敵機を撃墜…というのが定番なんですが諸事情によりそれを再現するのは推奨できないという判断をしました。
テストしてわかったのですが、こちらの画像をご覧ください。

テスト飛行 敵が見えません

敵機がまったく見えません!なんだかよくわからん!って感じですよね。
そうなんです。リアルを追求するならそれでいいんですが、今回はアトラクションです。エンターティメント性を重視するなら不合格です。
米粒みたいな敵機は正直つまりません。

他にも以下の理由があって飛行機の距離は近く、飛ぶ速度はゆっくりにすることにしました。
・1000m以上の物体は表示できない(clusterの仕様)
・原点(0座標)から離れるほど描画が不安定になる(Unityの仕様)
・せっかく作ってもらったモデルが米粒だともったいない。見てほしい。

このような理由で距離と速度を調整しています。
リアル重視の人には申しわけありません。

リアルな空戦を再現することも非常に興味があります。
いずれそのような環境が整ったらぜひ挑戦してみたいです!

ボイス

飛行機に乗るだけでも楽しいのですが、何が起こっていて何をするところなのかの説明を入れようと思いました。
が、文字でそれを知らせるのは限界があります。
そこで思いついたのがボイスによる演出です。
自由にボイスを作れるフリーソフトを見つけたので使ってみました。
文章を入力するとすぐに声に変換してくれます。
アクセントの微調整も可能です。

いくつものキャラクターの音声が自由に使えて簡単にボイスが作れます。
1人で作業してもすぐにたくさんのボイスを用意することができました。
やや機械的な話し方になるのはしかたありませんがじゅうぶんです!
このボイスを使うことによって、基地でのアナウンスや作戦中の通信を表現することができ「みんなで戦っている感」を出すことができました!

遊んだあとのオマケ要素

ひととおりライドを楽しんだ後もなにかほしいと思っていました。
せっかく作ってもらった飛行機のモデルをじっくり見てほしい。
制作の感想を伝えたい。
専門用語の紹介をしたい。
乗り終わった後も楽しんでほしい。
などなど、ライドに乗ってもらっただけではわからない要素を展示することにしました。

モデル展示室
ラウンジ(奥にはテストシーンへのワープあり)

これはみずほコリさんの大人気ワールドから着想を得ています。
ライド終了後にもお楽しみ要素があってサービス満点です。

ジュラシックライド後

共同制作

今回はミソさんとの共同制作でした。
1人でのワールド作成と違い、いくつか気を付けたことがありました。

なにをしてほしいのか

ミソさんに仕様書を見せたり、作ってほしいものをしっかり説明することでなにをしてほしいのか、なにがほしいのかを明確化することに気を付けました。必要なときは写真も使いました。

パーティクルのリクエスト

なにをしているのか

ワールドを制作している最中は他の人には作業が見えにくいです。
いったいどこまでなにが進んでいるのかを共有するために限定イベントを利用することにしました。
限定イベントを設定することでワールドを公開せずに特定の人だけで共有することができます。スタッフならばイベントに設定した時間前に自由に入ることができます。

限定イベントページで非公開ワールドを共有した

イベントページ概要爛にはアップデート状況を書いて、進行状況をわかるようにしました。こうすることで共同制作者が今の状況をわかりやすくすることができたと思います。

このようにしてワールドを共有することで共同制作者もさらなる着想を得て物づくりが加速します。
複数人でなにかするときは有効な手法なのでぜひお試しください!

おわりに

今まではコンテスト的なものに参加ということはあまりしてきませんでした。(GAMEJAMにお手伝い参加はあり)
理由は単純、お題でなにも思いつかなかったからです。
今回はばっちり作りたいイメージができたのでノリノリで参加しました。
このコンテストがなければこのワールドも生まれてなかったかもなあと思うとちょっと感慨深いですね!
まだ遊びに来てない方はぜひ体験してみてください!
コンテストには多数のライド系アトラクションワールドが投稿されています。どれも楽しい力作揃いですので乗りまくろう!!

ついに公開!ほんとにここまでできるとは!

あと、ミソさんが制作記念にヘルメット(アクセサリー)作ってくれました。(非売品)感謝!

ミソ隊ヘルメット
ホムラ隊ヘルメット

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