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「荒木飛呂彦の漫画術」メモ

荒木飛呂彦「荒木飛呂彦の漫画術」を読んだ。
買って損のない本だった。
自分の知識と考えを混ぜつつ、特に興味ぶかい箇所のみまとめる。

「最初の一ページをめくらせろ!」

この本、意外と実践的だった。
まずはページをめくりたくなるつくりにしろと。
変わった絵、不気味な絵など、とにかくひっかかるものがあるとよいらしい。これは漫画にかぎらずその通りかと。冒頭がつまらないとめくらないからね。
また読みたくなるタイトルへのこだわりも大事だと。これは創作講座でもよく聞く話で、基本中の基本なのだろう。
また5w1hで、主人公がどんな状況にあるか、冒頭は後の展開の予告的な機能になっている、などなど。小説も同じだろう。
「主人公はどうしてこんなところに?」「何者なんだ?」引き込みつつ、紹介しつつか。異様さをかもしだすと尚よいとも指摘している。

基本四大構造

キャラクター、ストーリー、世界観、テーマ。
これは他の創作本でもいわれているとおり、基本なのだと再確認。
荒木先生はキャラをとりわけ重要視しているが、甲乙つけがたい四要素だと思う。自分の好みでは世界観を優先したい。
いずれにせよ、四つのどれも欠けてはいけない。もちろん例外はあるが、あまり逆張りしてもしょうがないので、基本を忠実に守るべきかと。
特にテーマが作品の全体にかかわり、残りの三つはその派生ともいえるほど重要だと。
人の作品を読むときは四つの要素がどうなっているか意識的に注意すべし。

キャラクター

・まずは動機
キャラの動力源がほとんどすべて。他の創作本では「欲望」とも呼ばれていたり、キャラが何を目的に動くかがキーになる。
また動機がしっかりしていればキャラもぶれづらい。
何より、読者が共感しやすいのもキャラの動機だったりする。
だからキャラづくりではもっとも大切にしたいポイント。
主人公について、金やセックスよりも「誰かを守る」「愛国心」など高尚であるほうが少年漫画的にはウケがいいかもしれないが、作品によるかもしれない。「勇気」がもっとも共感をよぶと荒木先生は考えている。頭の隅に入れておきたい。
また敵キャラについても重要。わかりやすい悪は共感しづらいが、DIOのようにどこか魅力的な人物は「みんながうちに秘めてる悪い欲望」を体現しているからだと荒木先生は分析している。ここも興味深い。
主人公とライバルの動機の差異がコントラストにもなり、ストーリーにキレというかドライブが生まれるのかも(少年漫画は特にくっきりしてる)。
・身上調査書
先生はキャラごとにつくるらしい。就活で使うような人生の履歴書をつくると、だんだんそのキャラの特性というかクセがみえて、深掘りしやすくなるという。プロフェッショナルだなぁと感服した。
趣味や好きな食べ物、経済状態、家族関係、身長体重、生年月日、性格など。ここまで書けばかなりくっきりするのは確かにそうだ。持病や身体特性は特にアクションや能力、弱点と関係するから肝になるだろう。
またキャラごとに変化をつけられて登場人物のマンネリ防止に役立つとのこと。
・脇役の大事さ
脇役は主人公をひきたてる。サポートする親友だったり、勇気を与える恋人だったり。大切な仲間のために自己犠牲する主人公像は王道で、外れがない。

ストーリー

・キャラあってこそ
キャラクターが動いてこそのストーリーである。ストーリーの上に人形がいても仕方ない。キャラが動いてこそ躍動感のある話になる。よってストーリー単独でできあがることはまずない。要約するとそういうことである。
同意というか、身につまされる指摘だ。ストーリーの大枠が頭のなかにあってもぜんぜん筆が進まないのは、キャラにちっとも血が通ってないケースが多いと思う。
・エピソード
これもキャラに関係するが、キャラの背景を描くことで時間が経過してもブレなくなる。各キャラの小話、エピソードはなるべくあったほうがいい。たとえばFF6では数え切れないほど多くの人物が登場する。それでも各キャラをなんとなく覚えていられるのはエピソードの効果だろう。当然ながらストーリーの躍動感にも繋がる。「名作漫画はキャラクターとストーリーが融合している」。
・起承転結とシンデレラ曲線
荒木先生はひたすらプラスがいいという信条らしいが、ここは各人で好きにすればいいかなと思う。有名なシンデレラ曲線をどうするか。主人公がひたすら上がっていくパターン、上げては下がりまた上げるパターン。これは作品によるが、意識しておいて間違いない。ゴッドファザーpart2の対比構造はプラスとマイナスをうまく落とし込んでいる例。
・キャラを困難な状況に追い込む
ストーリーのコア部分か。逆境から覆していく黄金パターン。これはでも、まったくない作品がみつからないほど基本のキだろう。
・あとは勝手にキャラが動く
ストーリー上、困難な状況、特にラスト手前あたりで煮詰まっても、キャラができあがっていればなんとかなる、らしい。でもいわんとすることはわかる。

絵について


漫画を描かないのでこの章はほとんど飛ばすが、たとえば銃についても表面だけ描いてもしょうがなく、細部を描かなくとも具体的に中身の構造を把握するといったリアリティの追求が大事だ。資料を読め、実物をみろ、現地に行け、五感を使え。これは他の表現にも通じる基本だと思う。

世界観

・読者がその世界に浸りたいと思えるか
これもまた、要するにリアリティである。嘘っぽいとのめりこめない。特にファンタジーやSFは適当に書いても読み手はすぐに気づく。実在の場所は特に。嘘なら嘘でその世界内の合理性を設計する。合理的な嘘をつくる。
・世界観の作り方
歴史、宗教、政治、経済、文化、地理、法律、産業、インフラ、動植物の生態などの大枠から、スポーツならルールや道具、料理なら材料や調理器具や作法、SFなら企業形態や機械のしくみなど。また、ゼロからではなく実在の場所をモデルにするとやりやすい。ラピュタだとウェールズが舞台のモデルになっており、風景から建築からよく似ている。炭鉱労働者のバックグラウンドすらも。寿司屋が主人公だったら仕入れの時間や市場の特性、服装や配送手段などもきっちり設定するとなおよい。

テーマ

・結局、何が書きたいのか
これに尽きる。友情の尊さ、愛する美しさ、人間賛歌、人間の愚かさ、自然の雄大さ、地球という惑星のかけがえなさ、などなど。売れるかどうかで考えたらすぐにダメになる。もっとも伝えたいと思えるものを、自分のなかから見つけだすこと。他人の作品ではなく、自分の内側から湧き出るものこそがテーマになるのだ、と私は解釈した。

おわりに

本の紹介といいつつ半分以上は自分の考えを吐露していた気もする。
いずれにせよいい創作指南本なのでお買い求めいただければいいと思う。
ジョジョ制作秘話もてんこ盛りなのでファン必読だろう(すでに読んでるか)し、創作趣味の人も読む価値があると思う。











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