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フリーローラーの3つの視点 W杯南米予選ブラジル対チリ アルゼンチン対ベネズエラより

2022年3月25・26日に行われた、W杯南米予選ブラジル対チリとアルゼンチン対ベネズエラの2試合から、「サッカーに必要な視点」について考える。

試合は結果は以下の通りである。
ブラジル 4-0 チリ (ブラジルホーム:マラカナン)
   (得点者)
ネイマール(PK)
V.ジュニオール
コウチーニョ(PK)
リシャルリソン
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アルゼンチン 3-0 ベネズエラ
     (得点者)
N.ゴンザレス
A.ディマリア
L.メッシ
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・そもそもフリーロールとは?
フリーロールの選手(以下フリーローラー)は、攻撃の局面において特定のポジションに縛られない動きをする選手である。
しかし、組織的なプレッシングやそこから派生するカウンター攻撃が注目される現代フットボールでは、フリーローラーが存在しない場合も多々ある。

今回の2試合では、ブラジルのネイマール選手、アルゼンチンのメッシ選手がそれぞれフリーローラーを務めていた。

・1つ目の視点:人をみる目
ネイマール選手やメッシ選手の共通点は、1対1で負けない・ボールを奪われないという技術を高いレベルで有していることだと思う。

それらを可能にしているのが1つ目の視点:人をみることだろう。

実際に、ブラジルの1点目はネイマール選手の仕掛けから、ペナルティエリアに侵入しファールを受けたPKにより獲得したもので、そのシーンからも、ネイマール選手が相手DFのスライディングを観察し、ボールを足でブロックするという技術が見て取れる。

ネイマール選手は、スライディングしてきた選手の足に半ば意図的にかかりに行ったように見えたし、彼の得意プレーでもある。

・2つ目の視点:組織を見る
ブラジル・アルゼンチンの対戦相手のチリ・ベネズエラはいずれも5バックを採用した。

5バックはサイドのエリアまで幅広く陣を敷くことでサイドチェンジに強いことや、単純に人数が多いことでカバーリングが充実するのが魅力だ。

そんな中、ネイマール選手・メッシ選手はそれぞれセンターフォワードの表記で起用されたが、彼らは早々にそのポジションを放棄し、ミドルサードに降りてボランチ化したり、サイドに寄ってポストプレーをするなどまさに自由に動いていた。

しかし、自由奔放にプレーしていたわけではなかった。彼らは、組織をみるという視点から、相手の守備組織を観察し、その綻びを突こうとした。

そう考えると、ミドルサードに降りるのは、5バックの強固なブロックから、ディフェンダーを引き出す、もしくは出ていくか迷いを与えること。
サイドに寄るのは、5バックの3センター脇で自身+自チームのウィング・サイドバックで数的優位を作る狙いを持っていたと考えられる。

その狙いが功を奏しての4得点ないし3得点の大勝だった。

・3つ目の視点:時間をみる
フリーローラーは時間帯によってそのプレーを変化させなくてはならない。それは、サッカーというスポーツが90分間同じ状態で行われることはないからだ。選手の疲労や精神状態、ピッチコンディション、ゲームプランまでもが試合中に変化しうる。

今回の試合では、後半になって圧倒的な点差がついていたため、はっきりとは見えなかったが、アウェイでモチベーションが下がった相手に対しさらに攻勢をかけるようになった。

逆に点差がないかつ、押し込まれているか拮抗している時には守備的な位置取りや、リスキーなプレーを普通は避けなければならない。

しかし、フリーローラーたるもの、そんな時こそ変化していく状況と時間帯を見極め、虎視眈々と1点のチャンスを狙いチームを勝利に導かなければならないと思う。

・まとめ
フリーローラーは現代フットボールにおいて稀有な存在になっている。絶滅危惧種である彼らは、高いテクニックとインテリジェンスを持ち、それらを様々な視点から得た観察結果に合わせてプレーしている。

フットボールの組織化に抗い攻撃特化のフリーローラーが組織の穴を突く、このアンチテーゼ的な現象が、サッカーを面白くしていると思っている。

P.S 南米予選も終盤になると荒れたプレーが少なくなっている気がする。

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