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『週末、森で』の特異な魅力

2020.02.22

知人のおすすめで読んだ『週末、森で (益田ミリ)』から異質な衝撃を受けたので記録しておく。

文字書きをしているその人には、
以前より読書が苦手であるという事は話していたけど、
「漫画のような感じで読みやすい」とのことで、
早速買って読んでみた。

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A5サイズくらいの本を開くと、
経45mm/緯55mmのマスが四方に計16個並んでいて、
ゆるいタッチのイラストが描かれている。

そのゆるさから無意識に力が抜けて、
お昼に付けたテレビに流れる知育番組をボーっと見てるような、
リラックスした気持ちになる。

おもむろにハンモックを木に縛り付けるヒロインに、
優しい口調のナレーションと、
テンポの良い合いの手の様な動作音が心地よく、

でもこの感覚は“引き込まれる”という表現ではしっくりとこない。

引き込まれないからこそ、
読み進める内にやってくるナレーションの、
小さくザワザワする言葉選びに不意を突かれる。

相変わらずゆるいタッチで描かれる登場人物の表情に似合った、
でもどこか生身の人間味を感じる言葉が発せられて、

相変わらず“引き込まれる”ではしっくりこない、
なんかよく分からない引力によって読み進めていく内に1話が終わる。

これまでに感じたことのない異質な読了感覚から、
「これ以上読み進めると直ぐに慣れてしまう。この感覚には、まだ慣れては勿体ない。」
と直感して読むのを止めた。

表現するのがどうも難しいけど、
男子目線でどうにかこの感覚を例えるとすると、

頑張ってレベルを上げて防御力200くらいになった勇者(自分)の前に、
攻撃力1の無色半透明のスライムが1体ぬーッと出てきて、
単調な間隔で体当たり攻撃をしてくる感じ。

防御力200やから攻撃されたところでノーダメージなんやけど、

その攻撃が毎度100%の確率で、ピンポイントにみぞおちへと飛んでくる。
ノーダメージやし「ハッ、、、(息が、、できひん)」みたいなことにはまずなり得ないんやけど、

なんか、そういう感じ。。。

小説でも、漫画でも、4コマという訳でもない読み心地。

ゆるいイラストと、テンポの良いナレーションと、妙に人間味のある言葉が、組み合わさって、
メッセージ性の無いようなフリをしながら、
急に重要なことを抽象的に伝えてくる。

確かに訴えかけられてくるメッセージはあるけど、
その訴えかけられているように感じる言葉は、
作者自身が、客観的に見る自分自身に対して訴えているようにも感じる。

完成形として世に出されているこの本は、
いったいどのような人生経験をした人が、どのように世界や社会を捉えて、どのようなプロセスを踏んで生み出したんだろう。

伝えるという意図を持って、伝えたい事を、伝わるように作る。
という直接的な想いとプロセスの連携では、このラフさを保った状態の作品は生まれないように思う。

うーん。
まだnoteにするには咀嚼が足りなかったか。

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