3月のライオン168回(16巻)の感想

現代ビジネスに掲載されたこの記事が、腑に落ちたので、改めて掘り下げ。

https://gendai.ismedia.jp/articles/-/88134

宗谷さんが買って帰ったお土産のロールケーキを食べないシーンが、川本家と対になる演出なのね。川本家ではお土産を一緒に食べないとか、よっぽど嫌いな物か、3個入りのお菓子をおじいちゃんが譲るくらいじゃないと、選択肢にも上がらなさそう。


ひびき君には『花田ロール』
よし乃さんには和菓子屋さんっぽい『亀吉』
たまさんに渡した袋だけはロゴのアウトラインと、屋号がアルファベットで綴られていそうなくらいしか見えないけど、多分、洋菓子。
をそれぞれに渡す宗谷さん。和菓子と洋菓子で1つずつとか、今回は和菓子、次回は洋菓子とかでも良いだろうに、わざわざ買い回ってくれたんかと思うと、めちゃめちゃ優しい。
専門店がたくさん内蔵されてるモールに行ったにしても、紙袋が全部別なのよ。お土産買ってきたから、好きに食べて。じゃなくて、それぞれに渡す所までがセットなのよ。人格表現としてここ大事。
ひびき君が待てないだろうのと、賞味期限も短そうなロールケーキが、その日のおやつに選ばれて、おしゃれな茶器と一緒にテーブルに並ぶ。

さらにこの次。
呼んできて一緒に食べるでも、お部屋で食べるでもないのよ。

分厚く4等分に切り分けたうちの1皿を持って、たまさんがテーブルを離れようとするのを、よし乃さんに止められる。
次のコマでは取り皿の上で3等分に切り分けられたケーキ。
宗谷さんは対局から頭が戻ってきていないのか、自室で棋譜を並べている。帰宅してから、翌朝たまさんが弾くピアノの音で目が覚めるまで、ずっと無音。
朝になっても、宗谷さんが話したのはよし乃さんだけで、今まで作中で話した事が無い京言葉だったから、彼なりに安心する関係を築けているのがわかる。

ここまでを距離感とパーソナルの描写とするのは、あまりにもレベルが高い。
この回ばっかりは、リアルタイムで追わなくて本っ当に良かった。
たまさん初出なんですよ?完全に「どちら様?」から始まるし、寡黙な本人どころか、よく出入りしているっていう会長からの又聞きさえもした事がなくて、「若々しいとはいえ、嫁が居ておかしくない歳ではあるし、このくらいの歳なら子供がいることもある?」って、後藤さんと島田さんの顔を思い浮かべましたし、お手伝いさんにしてはよし乃さんと同じテーブルについたりしてるけど、子連れで働ける環境なら、雇い主によってはお呼ばれする事もあるかもと迷いに迷いましたとも。
この一歩引いた温度から演出ができるのは、掲載誌による所が大きいですよね。雑誌で追ってた女性読者の反応が気になります。

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