見出し画像

ちいさな歯の話②

いくつか候補を出していた病院の中で家から近くて通いやすく、親身になってくれる病院に決めて3月中旬にレントゲンや型取りといった精密検査をした。
それを踏まえて、3月末に先生から処置の方針を聞くという検診日が設けられた。

検診当日、怖くてキャンセルした。

これが大人がやることでしょうか。
いつかしっかりした大人になりたい。情けないにも程がある。

キャンセルするほどなにに怯えているかというと、抜歯だ。
私の歯並びは上下の前の歯が前に出ていて、かつ上の奥歯が激しく広がっているらしい。
前歯は後ろに引っ込めて、奥歯は内側に押し込む必要があるとのこと。
中心に向かって狭めるイメージなので、現状だと引っ込めるスペースがない。
そのため、上下の歯を数本抜歯する必要があると最初の相談の段階から伝えられていた。

検診に行けば、正確な抜歯の本数が知らされる。怖い。いかない。
自分が想像していた25歳はこんなはずではなかった…。
でもどうしたって怖いものは怖い。

頭の片隅では行かなければと思いつつ、日々は流れて気づけば5月。
そろそろ現実を見る決心がついたので、検診を予約した。

仕事終わりに検診に行くと、3月に撮ったレントゲンや歯形が机の上に並んでいた。
夜遅くに行ったのにも関わらず、丁寧に症状と処置の方針を説明してくれた。
もうドタキャンなんてしないと心に誓った。

さて、抜歯である。
最初の相談の際に聞いていたことがより詳しく、レントゲンや歯型という現実を突きつけられながら説明された。
結論、上下2本ずつ、そして憎くも歯茎の中で待機している親知らず4本、合計8本抜歯する必要があると伝えられた。

生えてこないのになんで親知らずは生まれるのか、きちんと生えてる歯を4本抜いていいものなのか。なんのために生まれて何をして喜ぶのか、愛するとはなにか、地球はなぜ誕生したのか…。
一瞬のうちに頭の中が万物への疑問でいっぱいになった。
不安が伝わったのか、矯正の同意書にサインをお願いされていたのだけど、先生が優しく「少し考えてからまた後日でもいいですよ」と言ってくれた。

だけども、先生の話を聞く限り抜歯は必要不可欠で、そもそも矯正しないと4本の歯が折れて噛み合っていない歯だけが残って咀嚼が困難になる未来が見えている。

私はペンを握って名前を書いた。
つかださんは頑張り屋さんですね。と謎の励ましをいただいた。

器具の費用など事務的な説明を受けて、先生から抜歯する総合病院宛の紹介状を受け取った。自分でその紹介状を持って病院に行くシステムらしい。その病院に行くと歯を抜かれることがわかっている。絶対に痛いのもわかっている。

さて、病院にいけるのか。
絶対に行こう。絶対に…。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?