見出し画像

もう一人のわたし

あなたはドッペルゲンガーの存在を信じているだろうか。

私は会ったことがないものの、自分のそっくりさんの噂を聞いているので今回はその話をしたい。

中学生のとき、母と二人で近くの男子校の文化祭に行った。
母がトイレに行っているあいだ外で待っていると、その学校の生徒二人に話しかけられた。
「あの、jfyek?shさんですよね?」
名前に心当たりもないし、そもそも知り合いは一人もいない学校のため「違います」と答えると男子生徒たちは((おかしいなぁ・・・))という表情をしながら去っていった。

それから数年が経ち高校に入学した。
高校ではテニス部に入部していたのだが、一つ上の先輩たちは中学にはいなかった鬼ギャルだった。
鬼ギャルを近くで見たのが初めてだった私はとても恐ろしかった。
女子校にも関わらず鬼ギャルパイセンたちは下校時に近くの男子校の彼氏とニケツで自転車に乗り青春を謳歌し、部活中は機嫌がいい時はいいのだが機嫌が悪い時は何もしていないのに突然「くそっっっ!!」と言いながらラケットで地面を叩くのでつい最近まで中学生だった私は怖くて仕方なかった。

そんなテニス部に入部して初めての顔合わせのとき。
鬼ギャルパイセンの一人に突然
「あれ!?吉岡さんだよね!?!?」
と話しかけられた。

吉岡さん・・・?
全然違う苗字なので呆然としていると
「やっぱり吉岡さんじゃん!!久しぶり〜!」という。
いや、誰ですか吉岡って。
結局その後吉岡さんじゃないということを何度か説明してやっと納得してもらえたのだが、どうやらギャルパイセンの中学の後輩に「吉岡さん」という人がいるらしかった。
その日から私のあだ名は「吉岡さん」になった。

高校を卒業し大学生になった。
実家暮らしのため大学に入学しても基本的には家で何もせずだらだらと過ごしていた。
大学2年の秋。
その日もだらだらとスマホを見ながら寝転んでいると、高校の同級生からメールが届いた。
「さっきテレビに出てたよね!?」
え、誰ですか?

その同級生とは仲良くも悪くもなく、たまたまクラスが一緒で、卒業アルバムの裏の余白ページに寄せ書きをするほど親しいわけでもなく、メールが来るのも数年ぶりだった。
それが突然「テレビ出てたよね」?
テレビ出てないけど?
とはいえ自分が隠し撮りされていた可能性もゼロではないのでドキドキしながら何のテレビに出ていたのか聞いてみると、街角インタビューに答えていたのだという。
それ絶対私じゃない。
というか何のインタビューだろう。。
気になったがそこまで掘り下げて聞くほど親しくもないので「インタビュー受けてたんだー!でもそれ私じゃないよー」と返して終わるはずが、
「いや絶対あんただった」と食い下がる同級生。
本人が自分じゃないって言ってるやん。どういうこと。

本当に自分ではないこと、私の性格的に謝礼として1億円もらったりしない限りインタビューなど絶対に受けないことを説明しなんとか理解してくれたが、そこまで食い下がるとはどれだけ似ているのだろう──。
まさか高校時代に瓜二つと間違えられた吉岡さんなのか。
私がだらだらと何も積み上げずに日々をやり過ごしているあいだ、ドッペルゲンガーの吉岡さんは躍進しているのか。

そして私には一つの不安があった。
この同級生は自分から積極的に連絡してくるタイプだったので良かったが、同じ番組を見ていた同級生が他にもいて、それがおとなしい子だったら
「あ、あの子インタビューに出てる・・・!」となって翌日友達との会話の時に
「昨日高校の時の同級生が街角インタビューに出ててね〜」と話題にするかもしれない。
瓜二つの別人だというのに。
私が勝手に「意外とインタビューとか受けるやつ」キャラにされてしまうのではないか。
それならば私の連絡先を知らなかったとしても友人伝いに聞き出して
「お久しぶりです。高校の同級生の〇〇です。突然ですがこの間の街頭インタビュー出てましたよね?」
と聞いてもらって全然構わない。
きっとおとなしい子だから「違うよ」と一言言えば「あっ、そうなんだ〜」と理解してくれるかもしれない。
自分の知らないところで勝手に自分のイメージが作り上げられていくのが心配でたまらないのだった。


ドッペルゲンガーは世界に3人いて、その3人全員に会うと死んでしまう、というのは私が幼少期にあった都市伝説だが、今でもその噂はあるのだろうか。
今回私に間接的に接触してきた3人が全員吉岡さんなのかもしれないし、はたまた全員違う3人なのかもしれない。

もし自分と顔が同じドッペルゲンガーに遭遇したらちょっと気持ち悪いけれど、性格が同じドッペルゲンガーはどうだろうか。
自分の考えや気持ちに100%共感してくれるドッペルゲンガー。
少しいいかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?