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拝啓 世界でいちばん愛してる君へ

拝啓 愛しい君へ

元気にしていますか?
君が虹の橋を渡ってもう12年になります。

わたしも年を取ったし、君の大好きなお母さんもそちらへいってしまいましたね。仲良く暮らしているでしょうか。

今日は君の命日。最近は少し月命日を忘れがちで、あんなに忘れたくないって思ってるのにね。お父さんはね、お母さんの月命日をこの5年忘れたことないんだよ。すごいでしょう。

君がわたしの元にやってきたのは、今から28年前の、わたしの誕生日でした。書いてて末恐ろしくなったね、28年前。
それまでわたしは、犬を怖がるくせに犬を飼いたがってるわけわからない子で、中学で初めてできた友達が皆犬を飼ってるのがうらやましくてたまりませんでした。懇願した甲斐があり、13歳の誕生日に犬を買ってもらえることになりました。
当時は譲渡会などまったく知らず、今みたいに綺麗ではない町にぽつんとあるペットショップに、君はケージに兄妹犬と一緒に入っていたね。
「わー、かわいい」そうわたしが目を引いたのは、茶色い兄妹犬のほう。ケージ越しに見るとその子を踏みつけて寄ってきたのが君だった。
「オスだし良い度胸だし、こっちがいいんでない?」
両親の言うとおり、わたしは君に決めました。今では考えられないくらいの安さでした。何故かは知らない。
生後50日の白い柴犬と何かの雑種。背中の毛だけ少しクリーム色。
段ボールの中でモゾモゾする君を抱えて、不安と期待ではち切れそうだった。
家について最初にしたのがおトイレだった君に、大物だなって皆で笑った。

君につけた名前は、ペットショップで呼ばれていた名前を少し変えて『チビ太』。
サークルKのチビ太のおでんが流行っていた頃だね。
でもチビ太って呼ぶよりも愛称チョビって呼ぶほうが多かったね。

我が家にきて1週間、君は具合が悪くなった。あわてて獣医に駆け込んだとき、神様どうか助けてって祈った。いなくなったらどうしようと泣いた。まだ1週間なのにもう君は失えない存在になっていたね。ただの風邪でほっとしたよ。

それからずっと、君と一緒だった。

修学旅行いきたくないよ離れたくないよとわめき、就職はこっちで離れたくないもんと決め、東日本大震災のときには家族より君の心配をしてた。

ほんとうに、君が大好きで、愛しくて、大切だった。

それまでのわたしは、何かに感動して泣いたり悲しくて泣くことがほとんどなくて、感情を動かすのがあまりない子だった。それがどうだい、君と出逢ってからは動物もの観て大号泣するくらいになった。君がわたしにくれた、この感情。

君は晩年、目が見えなくなってしまった。

あのときは

泣いた。泣いて泣いて泣いて、泣きまくった。

そして、去勢していないオスがかかるという病気になってしまった。心臓も弱くて手術は無理。

君を失いたくない、その恐ろしさに泣いた。

でも君は穏やかに、何でもない顔してそばにいたね。

どうか苦しまずに、看取らせておくれ。
そう願うようになった。

そして12年前の今日。
数日前から具合がよくなかった君は、朝起きたときにはもう、動けなくなっていた。
苦しそうで、でも頑張って生きてる君を、どうしても手放したくない。
だけど、

「もういいよ、チビ太。がんばったね、もう、いいんだよ…」
そう言うと君は、大きく息を吸い、痙攣を起こすようにして、動かなくなった。
「チビ太ぁ」
そう呼んでさわるとまだ心臓は動いていた。
「まだ死んでないぃ」
そして今度こそ、ゆっくりと、眠りについた。

君と過ごした14年と3か月は宝物だ。
そして、君がいなくなってからも。

大好きなまま逝った君を嫌いになることなんてないのだから、それはつまり永遠ってこと。君への愛は永遠だ。

自分の病気もあって、次の子と出逢うことが出来ずにいるけど、君がナンバーワンだから、比べてしまいそうでこわいんだ。

残念なのか喜ぶべきなのか、君より愛せる存在に出逢うことはなさそうだよ。多分この先パートナーできても、君の方が愛しい(笑)

君は今どうしてる?
大好きなお母さんとひなたぼっこしてるかな。

わたしがいくときには必ず迎えにきてね。
そして今度こそずっと一緒にいよう。

世界でいちばん愛してる君へ

これからもずっと愛してるよ、チビ太。


チビ太

この記事書きながら号泣して鼻が詰まって呼吸困難なう。

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