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Twitter質問箱総集編06

自由に楽しんでる姿は見てて気持ちがいいものです

 「カラオケはカラオケボックスでやってくれ」 といえば端的な理由になりますが、それに留まらない色んな感情を持ってはいます。少し長くなりますが、ものすごくよく質問来るのでお答えします

 音楽に救われ助けられ生きてきた人間として、またクリエイターや制作として多くのスタジオやライブに立ち会う人間として、音楽という芸術に込められたアーティストの想いというのは半端ではないことを身をもって知っています

 きっとみんなもそうでしょう、アーティストってカッコいいよね。自分の人生を代弁してくれているような曲、なぜか心が震えて止まらない曲、辛い時に優しく寄り添ってくれるた曲、仲間や友人たちと共有し共に歌った曲。古来から音楽は人の暮らしを支え、豊かにするためにありました

 大好きなアーティストに憧れ、その曲を歌って自分なりに再現してみたい。そんな気持ちは至極当然であり、いや、むしろそう思ってもらえるような楽曲に携わるのは我々の常時掲げる目標です。でも、できればそれは消費物としての通過点ではなくて、みんなの人生と一緒に過ごしていくパートナーであって欲しい、そんな個人的な気持ちがあります

 「あの夏はSLAYERを好きだった、そんな奴はいない」 とはロブ・ゾンビというアメリカのアーティストの有名なセリフです。SLAYERは一度聞けば虜になり、我々が離れることはありません。絶対にです。「いつも最高ずっと最高死ぬまで最高死んでからも最高生まれ変わってもSLAYER!!」メタルの住民は全員これです。朝昼晩春夏秋冬病める時も健やかな時もSLAYER漬けで当たり前なんです(真剣)

 流行りのお店や大食いのお店に行ってオーダーをして、きらきらの写真や一眼を引く写真を撮ってインスタかSNSに上げて食べ残す。信仰の対象物や聖地に行って、手を合わせる前からSNSにアップする、さして好きな曲でもないけど話題的に盛り上がりたいし盛り上がりそうだから、カラオケ作ってもらってスマホで歌ってミックス死にピッチ直させてとりあえず歌って『みた』でYoutubeにあげて500回くらい再生されてみる。当事者ではないので構いませんし、事実や内情は分からないので口を出すこともありませんが、訝しい(いぶかしい)気持ちでそれをみてしまうのは当然の気持ちです

 ちょっと表現が極端かもしれませんが、もしアーティストが心血注いで作った曲をインスタントに消費する文化が「歌ってみた」界隈であればそんなクソは長続きしないでしょうし、歌ってみたミックス死なんてのはクソの量産を手伝ってバイト代を稼いでるクソ虫ということになります

 もちろんこれは極論なのでそう思ってるわけではないですが、インスタもTikTokもそのうち消えて行くように、歌ってみたが消えていくかどうかはそっと見守っていこうと思っています。ちなみに歌ってみたが消え去った世界でも、SLAYERは絶対に不滅です(真面目)世界中のメタルヘッドがどこかで「Auschwitz!」と叫んでいるのです

 かと言って憧れた音楽を夢見てバンドを組んで、朝から晩まで楽器の練習をしてライブしてツアーに出て機材を買い揃えて行って、借金を沢山こしらえて蒸発していった無垢な魂たちもいっぱい知ってます。それを考えれば、うちの子たちにはバンドなんか、特にメタルなんかせずに良い大学にいきながら暇つぶしに歌ってみたでもやってもらった方が良さそうな気はします。特にうちのムスメはAdoちゃん大好きですからね(笑)

 例えばもし私のところにある少女がやってきて

「SAW(ソウ)さんこんにちは、私は宇多田ヒカルさんが大好きで大好きで死ぬほど好きで全部CD持ってて、雑誌のインタビューも全部買ってスクラップして、歌詞も全部暗記してファンレターも何度書いて、お母さんと一緒にコンサートに行ってグッズもお小遣いで買えるだけ全部買って、今でも聴いてるだけで涙が出てきそうで、もうヒカルちゃんが大好きで大好きで少しでも近づきたくて、自分で打ち込んで曲を再現して全部作って、サウンドハウスで買った1万円のマイクで歌って、ネットで勉強しながらミックスマスタリングもしながら歌ってみた音源を作ってるんですけど、どうしてもあの雰囲気に全然ならないんです(猛烈な早口)」

なんて事があったとしたら、きっと僕は

「よし分かりました、予算の中で僕に依頼できる最大の金額を教えてください。僕の会社の請負の正規の定価表はこちらですが、その中でできる限りの努力をしてあなたの希望を叶えましょう。何しろ僕は28歳の頃から何度もGoHotodaさんに弟子入り志願のメールや手紙を送り続けた(ガチ)ほどの大ハードな宇多田ヒカルファンですよ。Goさんが手がけられたヒカルちゃんのCDは全部擦り切れて溶けて無くなるまで聞いたので20枚は買い直しましたよワハハハハ、そしてなんとですね、うちにある機材のうち実はGoさんと....ムニャムニャ...」

と猛烈な早口で想いをまくし立てるでしょう

 歌ってみたをきっかけに「音楽を作る楽しさ、自己表現する素晴らしさ、他に吐き出しようのない苦悩や葛藤や怒り、言葉にできないよく分からない物」を自作の音楽や映像でクリエイトする人が増えていく事は、おそらく音楽業界全員が心から願っている事です

 もちろん全員がクリエイターになる必要はありません。丁寧に、大切に音楽を愛して欲しいだけです。あまり知られてないけど大好きな曲を、大切に歌ってみて、年に一曲くらいのペースでアップして自分でとても幸せな気持ちになれる。ああ、それはとても素晴らしいですね。愛の形にマイクの値段とかブランドとかケーブルなんてどうでも良いんです

 僕の音楽の原点は、小学校の時に同級生の小林くんが貸してくれたカセットテープに入っていたブルーハーツの「ハイキックス」です

 大学の物理学の教授だった僕の父はオーディオマニアで、自宅にとんでもなく立派なシステムを組み初期のSONYの最高のCDプレイヤーと7桁のセットでクラシックを楽しんでいましたが、私は自室のPanasonicのテレコのチープなスピーカーの向こうに甲本ヒロトが見えていました 。モノラルの、ヨレヨレのサウンドの中に詰められたパンクロックの衝動は今でも僕を突き動かし続けています

 スマホの時代になっても現生人類と音楽の関係はさして変わることはないでしょう。インターネットの細い線の向こうに、無限の音楽が待っている。それは日本の、世界の、プロの、アマチュアの、歌ってみたかもしれません。お互いに素晴らしいチャンスがあります そう言った意味で、僕にはあまり興味がないですが「あまり好んでいない」で正解です

*過去に質問箱で回答したものの中から、反響が多かったものを中心に再編集・追記して投稿しています

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