見出し画像

Twitter質問箱総集編05

基本はカットで作ります

いい質問です  

 どちらにも言い分がありますし、どちらかが正解かももちろんありません。私も当然その辺りには手を入れます、おそらく皆さんが想像もしないレベルで手を入れますが、そのヒントはプラグインにもなっているLurssen Mastering でした

 これは私が直接オーダーしたわけではなく、ある方がラーセンに出された曲の Before & After を幾つか頂戴して分析した時に気付いたことでした。世界中のマスタリング・スタジオから戻ったB&Aをチェックしていく中で、Lurssen Mastering だけは日本人案件の特定の帯域にEQがかなり入ります。それも通常のマスタリングでは考えられない量です(ついで言うとオートメーションも入る)

 私はザ・ジャパニーズといったサウンドに1mmも惹かれませんし、可能な限り欧米列強のようなサウンドメイクをすることばかり考えて生きてきました。そんな中で、ラーセンが行っていた処理から「外国人にとって日本人固有の発声は奇妙に聞こえている可能性」を見て取りました。基音と倍音のバランスを取るために、マスターでさえ強引にEQした可能性が非常に高いのです

 ここまで答えれば、聡明なあなたなら色んな手法を考えるでしょう。世の中には基音とレゾナンスに関する完全に狂ったセオリーや言説が横行しています。国内のネットで再生産を繰り返されるいい加減な情報に、正しいと思われる内容に出くわすケースはほぼ無いでしょう

 余談ですが、エルレガーデンの日本国内録音仕上げと海外仕上げはすでに別人レベルの説得力になっています。ここから何を読み解くかはそれぞれでしょうが、ボーカルの録れ高とその処理についてはどこかで見かけるようなTipsなどまったく用いられていないと思います  もちろんこれはわたしの狭い観測範囲の中の話ですし、なんなら諸外国の人たちが得意なテーブルで不向きな日本人が戦っているだけの話です。外国人がどんなに頑張っても雅楽の歌声は再現不可能ですし、盆踊りのリズムはアフリカ人には再現できないと聞いたこともあります

 個人的には母音と子音の云々とかはどうでもよくて、口腔や声帯での響きと日本語(日本語英語)の言語としての帯域構成が『いわゆる西洋音楽』にあまり向いていないから起こるミスマッチなのです。クラシックオペラなどの世界では日本人の素晴らしいシンガーが全世界で活躍していることを考えれば、そんなに変な説ではないと思います

 逆説的に考えれば、近藤真彦さんの究極日本人的なの基音と倍音の構成を研究するのは一つ面白い結果を導けるかもしれません。マイクが変わればその辺りの比率も変わるので、マスタリングしながらたまに「ボーカルの録れ高強烈だな...」と思うこともありますよ

 結びに。レゾナンスやピークを気にしていく意識の高さは素晴らしいですね。しかし、決めつけて申し訳ないですが、あなたはまだコンプが下手な可能性がとても高いです(笑)ダイナミックEQだとか背伸びする前に、コンプをしっかりがっつりこれでもか!!!これでもか!!!とかけて、それでも自然に聞こえるところを目指してください。いいですか、ボーカルのコンプはこれでもかこれでもか!親の仇!!とばかりにかけるものです

*過去に質問箱で回答したものの中から、反響が多かったものを中心に再編集・追記して投稿しています

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?