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PERCHの聖月曜日 59日目

中原佑介
若林さんは全部自分でやるのですか?

若林奮
全部自分です。つくり方は、いろいろなものはつかいますが、熱をくわえるとか、溶かしてつけるとか、切るとか、とにかく原始的です。熔接機とかそういったもの・・・あれはほんとうに道具で、粘土の場合のヘラとかとぜんぜん変わらないものです。自動車とか、印刷物でもそうですが、科学的な法則というようなものがあって、予想がつくでしょう。こういうものを、こういうふうにすれば、こんなものができるという。だから、予想をつけて同じ性能を持たせることができるし大量生産ができる。僕の彫刻をつくる場合には、そういうことがあまり期待できないのです。こうやったら、こうなるということは1度目はできても、次の場合に、同じようにやっても、そうならないときがある。でまた次の時は別の結果という具合に、今の所、ほんとうに自分の手のおよぶ範囲のものしかつくっていませんし計画もない。逆にいえばそういうところを、自分の入る余地として考えているわけだけれども大きなものになれば大がかりな機械をつかい、人手も多くいるような作業となるでしょうね。ただ鉄なんかの場合ですと、鋳物は別として、ある程度の形ができて市場に出ているわけです。それをそのまま使うというとこで、機械とか他の人の手を使うということになるのだと思います。既製品を使ったことはないが、アングルとか、丸棒とか、板とか、そういうものを、そのまま一部に使っていることはある。その場合でも最大公約数の単位として、つかえる部分があるわけです。ですからただの丸棒にしたって、それぞれの人によって、違いもある。
手仕事の一貫性というより、つくるときの発想とか、大きさなどによって、変ってきます。でもあんがい、全部手を加えて、つくってしまうかもしれませんが。

ーーー「〈座談会〉創造を支えるもの」中原佑介、若林奮、最上寿之、志水晴児『別冊 みづゑ』No.41,美術出版社,1964,p80

Nails
7th century
Found Egypt
Bronze and iron

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