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PERCHの聖月曜日 61日目

目下の実際的な問題としては、芸術のための良い趣味[taste]、感覚をどう養うかということです。ある人が「音楽が聞けない」と言っても、音楽が存在しないというわけではありません。自分には音楽のための耳がない、と言いたいのかもしれません。芸術も同じです。結論から言えば、その人は賛成も反対もしなくてよいのです。
ワインを初めて飲む人は、それが好きであろうとなかろうと「これはいいワインだ」と言えるわけがありません。ワインを理解するには、たくさんのワインをただ飲むだけではなく、味わうことが必要です。評価は比較から生まれるのですから。芸術も同じです。
芸術を理解するためには、それを見て、何度も見て、似た作品や違う作品と比較し、作品が取り組んでいるフォルムの問題に照らして、それが存在する必然性を見出さなければいけません。
ですから、芸術を学ぶ最前の方法は芸術を実践することです。それによって少なくとも、真の芸術(絵画!)に対する敬意が生まれます。
まとめると、芸術の意味とは–––見ることを学び、生を感じること。つまり、想像力を養うこと。なぜなら、世界にはまだ驚きがあるからです。生は神秘であり、これからもそうあり続けるからです。しかし、そのことに自覚的であってください。そうすれば、芸術は意味あるものになります。信念を持つこと、視覚を育むことを信じなけれななりません。
芸術作品は自分自身や他者とのバランスをとること、プロポーションを尊重し、関係を維持することをいつも思い出させてくれます。質と量を制御し選択するよう教えてくれるのです。芸術は教育界に示してくれます。知識だけを集めるのはあまりにも貧しいと。さらに経済性とは統計の問題ではなく、努力と効果のよい比率の問題であるのだと。

ーーージェセフ・アルバース「芸術の意味(1940年)」亀山裕亮訳 『ジェセフ・アルバースの授業–––色と素材の実験室』水声社,2023年,p276-277

Madame Cézanne (Hortense Fiquet, 1850–1922) in a Red Dress
Paul Cézanne
1888–90

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