PERCHの聖月曜日 43日目
ところで、模型が人工的であるだけに、それがいかに作られているかを理解することが可能であり、また作り方の把握がその存在に附加的次元を一つ加えることになる。さらに、一つの問題に対してつねにいくつかの解答がある–––さきに器用仕事(ブリコラージュ)についてそのことを述べたが、画家それぞれに「手法」があるという例によって、それが美術にも妥当することがわかる。一つの解答を選択すれば、他の解答を選んだ場合との結果が当然違ってくる。したがって、特定の一つの解答が鑑賞者に提示されるとき、それは同時に、こうした可能な変形の一覧表が潜在的に与えられていることになる。この事実によって鑑賞者は、自分でも気づかずに、行為者に変化しているのである。ただ見ることだけで、鑑賞者は同じ作品の可能な他の存在様式をいわば自分のものとするわけで、それによって彼は、自分で創作に採用したもの以外の様式を捨てた作者自身より高い資格で、漠然とながらその作品の創作者になったような気持ちになる。これらの様式はいずれも、実現された作品の上に開かれた附加的展望である。換言すれば、縮減模型の内在的効能とは、失われた感覚の次元を知的次元の獲得で補償することである。
ーーークロード・レヴィ・ストロース『野生の思考』大橋保夫訳,みすず書房,1976年,p31
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