新顔の紙幣ぱりりと秋に入る
教室の椅子を引くおと秋暑し
朝ごはん食べつつテレビ原爆忌
折り鶴へ吹き込む八月のこころ
白桔梗ぱちんと心さらけ出す
鳳仙花死にゆくひとの爪きれい
雑音のラヂオ八月十五日
露の世をたましい老いず無言館
若き日の祖母に恋バナ花カンナ
正座する書道教室つくつくし
天窓のひかりに眠る猫や処暑
流れ星魔法をかける音しゃらら
つゆ草の青のうるおう栞かな
秋の蝶開きて閉ずる羽の音
仮縫いの裾ひるがえす秋の蝶
秋の風つまづく道の平らけし
台風の来るぞ来るぞと脅される
昼月の蒼きうさぎよ野分あと
新涼をベンチの端にふたりきり
押し花にどれを摘もうか花野道