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1998年のウユニ塩湖は、ナーダ(無)①

「天空の鏡」「死ぬまでに一度は見るべき風景」「CGとしか思えない」…
今では、SNS、クイズ番組、映画で取り上げられない日はなく、おしゃれで神秘的な聖地。世界中から吸い寄せられた観光客があふれかえる、憧れの観光地となった、南米ボリビアのウユニ塩湖。

20世紀もどん詰まりの1998年12月のある日、僕はウユニの町にいた。
周囲に人影はナーダ(スペイン語で「無」)、食事ができそうな開店中のレストランもナーダ。ようやく見つけた売店で買ったミネラルウォーターとクッキーを流し込みながら、「自分のせいだけど、えらいとこまできちゃったな」と、高山病による頭痛も相まって、頭の中は真っ白だ。

ネットもスマホもない当時、手元にある情報は、94~95年版のガイドブックのみ。ウユニは見開きの2ページのみ。地図も観光案内もナーダ。
「なんか、塩だらけで白くて広いらしい」ことがかろうじて分かる粗い写真が2枚載っているだけで、「情報」と呼べるようなものはほぼ皆無といっていい。
これから、何をどうすればいいのか、だれかに教えてほしいが、尋ねる人間がナーダなので打つ手がない。
アンデス山脈を越える鉄道に乗って、チリからボリビアに入り、ウユニ駅で降りたのは自分だが、何度振り返っても、一人ぼっちの立ち往生状態は、1ミリも変化がない。さあ、どうする…。

#忘れられない旅

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