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ヤマトのカタカナ言葉と日本語の対応【24/3/29更新】

Holoearth Chronicles Side:E ヤマト神想怪異譚」には、世界観特有の用語を区別するためかカタカナに置き換えられている単語が屡々登場する。その多くは日本語であり、大半が神道関係の用語に当てはめられるものである。この記事では、それらを一度列挙していこうと思う。ただし、作中用語としての語義は考証不能の為記載されず、元よりカタカナの外来語などは記載されない。

クダギツネ

管狐。日本に伝わる狐のような妖、または憑き物の一種。今は妖術師等が用いる式神としての知名度が高いか。使い手が竹の管の中に入れて持ち歩くことから名が付いた。広域に伝承が分散するため多彩な表現が為されているが、様々な物事を言い当てたり他家から物を盗んできたりと便利な御使いだが鼠算式に増え続け、餌を与え続けられなくなると去っていくとする伝承が多い。他にも人や家に憑き、誰かを幸福にし誰かを不幸にするような傾向がある。飯綱権現の使いである「イズナ」と同一視される。

カミ / カミガミ

神々。広義で言えば信仰対象の総称であるが、当作では恐らく神道に絞られる。性質上具体的な定義は述べにくいが、崇敬の念を抱かせる超自然的な存在がこう呼ばれる。明確に体系化されていない民間信仰の為、八百万と称されるように非常に多彩な性質を持っている。多くの場合記紀に出典を求められ、神道の神殿である神社に祀られる。善悪二元ではなく、穢れの神や怨霊の類であろうと明確に悪の神であるとすることはほとんどない。

ヒト / ヒトビト

人々。我々人間。現実でカタカナでヒトと表記されるときは生物種としてのヒト亜族、またはその唯一の残存種であるヒト (Homo sapiens sapiens)を指すことが大半である。日本神話において人と神の境界は具体的に定義されておらず、葦原中国全ての人間も血筋を辿れば神である。とはいっても人と神の立場が違うことは周知されており、現人神とされた天皇家は相応の扱いを受けた。また、大和政権を中心とした社会が構築された後に神別という神に連なる家系の総称が産まれている。これは天皇家から分かれた血筋である皇別、海外からの渡来人家系である諸蕃と区別された。

オツトメ

御勤め。任務や役目と言った意味の一般名詞だが、仏教においては勤行(精進波羅蜜)と呼ばれ、宗教的な儀式や修行の類を指す。作中でカミノオツトメ / カミのオツトメ(神の御勤め)と表記されることがあるが、「御勤め」自体が義務的に行う時に使われる用語の為、神道のように神を完全な上位存在とするような宗教には見られない表現である。このような表現が用いられるのは専ら仏教における菩薩等だが、今に伝わる仏教において仏に「神」という言葉を用いることはない。

イワレ

謂れ。所謂「由緒」に相当し、物事の起こりや経た筋道を指す。多くの宗教の神には謂れが定義されており、それを由縁として神徳が掲示される。例として、神道の大口真神という神は日本武尊の道案内が謂れとして定義されるため導きの神としての神格を持つ。一般名詞としては「理由」に相当することもある。

ケガレ

穢れ、または汚れ。神道においては物体にへばりつく瘴気の様なものと解釈され、死後の世界である黄泉国に充満している。これらにつかれた伊弉諾尊が湖で清めた際に産まれたのが、後述する穢れの神・枉津日神である。

シキガミ

式神。陰陽道にて陰陽師が使役する妖怪または低級の神々。神格化された術者によっては決して低級とは言えない程強力・高名な神を使役しているとされることもある。

ムラサメマル

村雨丸。白上フブキの用いる刀。恐らく江戸時代の伝記小説・南総里見八犬伝に登場する水滴る刀・村雨(村雨丸)に近い。抜くと茎に露が生じ、刃に付いた血を洗い流すらしい。

チカラクラベ / センジョウガハラのチカラクラベ

戦場ヶ原の力比べ。戦場ヶ原は栃木県の日光に実在する広大な湿原であり、赤城山の神と男体山の神が近くの中禅寺湖をめぐり領地争いを行った土地であるとする伝説が有名。

キュウビ

九尾の狐。強大な霊力を持った狐は尾が九つに割けると言われ、東アジアを中心に神獣として信仰される。日本では伝承地の稲荷神に集合されていることもある。基本的に善良な霊獣とされ、善政下に出現する伝説の瑞獣の一つとされることもあるほど。しかし時がたつにつれ妲己や玉藻前と言った所謂傾国の美女の正体、つまり悪の妖怪に当てはめられることがしばしばあり、人を化かす妖狐などの影響もあり近年ではこちらのイメージが先行しがちである。封神演義にて妖獣として書かれた印象が広まっているが、日本では南総里見八犬伝にてその印象が強く否定されているなど解釈が分かれる。

キョウノミヤコ / キョウ / ミヤコ

京の都、つまり京都。東京遷都以前、古来日本の首都として栄えた京は相応に神秘伝承が密集している。

ワザ

、または。一般名詞として技術や仕事などを指し、神の御業(神業)など神の技術やそれによるものと信じられた現象を称える際にも使用された。

オオカミ神社

狼神社または大神神社と推定される。既存の情報が少なく詳細不明だが、唯一のヒントである大神ミオの設定から、狼の神格化であり導きと厄除けの神「大口真神」を中心としていると推測されることが多い。

イナリ神社 / イナリ一門

稲荷神社。上述のオオカミ神社と違い、稲荷神を祀る稲荷神社が元であることが確定視されている。日本全国に三万を超える社を持ち、商売や産業の神として江戸時代のブーム以来非常に高い知名度を誇る。狐を御使いとし狛犬代わりにその像を設置することから、日本において狐を祀る時は大抵稲荷神に集合されており、キュウビやセンコを抱えることも決して不思議ではない。系列と思われる作中のシラカミ神社に見える稲荷鳥居や千本鳥居など、現実のそれに限りなく近い模様。

レイリョク

霊力。神霊や霊魂など、神秘的なものの力を指す一般名詞。

ミマワリ組

見廻組。恐らく実在の京都見廻組を基にしている。京都見廻組は徳川幕府が京における反体制派の監視・取締を目的に設置した組織であり、坂本龍馬が暗殺された近江屋事件の主犯とも。

イナリ

稲荷神。先述の稲荷神社の主祭神であり、記紀の倉稲魂命と同一視される。田の神に始まり現在では全ての商売産業に御利益を認められる身近な神。狐を御使いとする。

イナリポータル

稲荷+Portalか。

イナリフォン

稲荷+Phoneか。略してイナホらしいが、稲荷神の根源は稲穂である。誰が上手いことを言えと。

ココロ

素直に考えれば。恐らく魂の類を指す。神道では魂と東アジア系宗教に多く見られるマナの概念を同一視しており、具体的な定義はないものの神秘的で肉体と異なる概念であることは古くから認められる。また、荒魂や和魂といった魂の側面に分けて神の人格を祀ることもしばしばある。

イワク

曰く。「~の言うことには」と言った意味を持ち、転じて「曰く付き」など打ち明けづらいネガティブな事情の事を指す一般名詞。

チカラ

。外部に作用するエネルギーの作用を指す一般名詞。自然現象を神そのものとするアニミズム的な価値観を持つ神道において、神の力とは世界の原理に等しい。

ヌエ

鵺(奴延鳥)。日本に伝わる妖怪で、猿に似た顔など「○○に似た○○」という形で描写される。不幸の前触れである凶獣とされ、かつて御所に出没し天皇に病を齎した際、源頼政によって退治されたとする伝承で有名である。鵺は元々普通の鳥を指す字であったとされ、鵺に似た鳴き声を持つ妖怪であったのがいつしかそのものを鵺と呼ぶようになったともされる。

ヨウカイ

妖怪。奇妙な性質を持つ精霊、魔物、現象の総称。神仏より格の低い超常とされることが多く、今でも日本各地に様々な妖怪伝承が残っているものの、大半の存在が江戸以降に失伝しているとみられている。西洋等から伝わった怪物と混ざり、人に害をなす怪異の類であるとされることも多い。その本質は「説明できない事柄への神秘という答」「異常に対する恐怖心の矛先」から生まれ、「教訓に登場する罰の象徴」「社会的に人として触れてはならないものの記録」等に用いられたと考えられている。何となく扱いが違っても神仏との具体的な境目は定義されておらず、一方では妖怪として恐れられているものが一方では神として崇められているような例、善に寄った謂れから神として崇められるようになった例、征服された地域の土地神が妖怪として蔑まれた例なども多く不安定な概念である。

ケモノ

。体毛を持つ動物、特に四足歩行の物。狐が害獣を狩ることで田の神の使いとして崇拝されたように、自然現象を崇敬するアニミズムでは獣が謂れを積み神となることが非常に多い。

アヤカシ

。先述の妖怪と同義。アヤカシとカタカナ表記される場合は「アヤカシ」という特定の妖怪を指すことが多いが恐らく今回は関係がないと思われる。

ケガレガミ

恐らくは穢れ神だが、詳細不明。穢れに神と言えば神道的には枉津日神なのだが、固有名詞でない以上シンプルに世界観用語としてケガレに汚染されたカミの事を指すのだろう。

キツネ

。狐は日本古来より狸/狢と並んで人を化かす動物として知られ、妖怪の狐である妖狐に類する伝承は百を超える。「狐に化かされた」などと言って、妖怪となるような不可思議な現象を狐の仕業とする考えかたも根付いていた。狐火、狐憑き、狐の嫁入りなどにこの影響が見られる。

オオエヤマ

大江山。京都の中心部北西に実在する山であり、鬼の本拠地として非常に有名。多くの鬼伝説が残るが、とくに有名なのは源頼光一行による鬼の総大将・酒吞童子(所謂「大江山の鬼」)の討伐であろう。鬼を専門とする博物館が設置されるなど、今でも鬼と言えばここというくらいに認知されている。小~中規模の寺社が点在する。

オニ

。古くは妖怪とほぼ同義であったが、基本的に角や牙を持つ特定の巨大な怪物を指す。豆まきや鬼退治伝説は非常に多く、悪役や極卒として強大な敵のステレオタイプとなった。しかし伝承を探すと鬼を善の存在として祀るような例が相当数あり、やはり善悪二元で語れる存在ではないだろう。

テング

天狗。日本の妖怪の中でも特に重要視される存在の一つで、神とされることも多い。典型例として、山伏の格好をし、羽で空を飛び、一本足の下駄をはき、大きなうちわを振るい、高い鼻の赤顔または嘴を持つ鴉顔とされる。「天狗の仕業」は「狐に化かされた」のように広まり、雷鳴や強風や山での不安定な天気など多くの現象の原因とされた。原義では彗星を指す。

ショウジョウ

猩々。中国から伝わった人語を解す獣で、人に似た顔と四肢を持ち酒を好む。その姿はオランウータンに由来するとされる。人の血を抜く怪物であるとも徳高い仙獣であるともいわれ、地域差が激しい。

ウツシヨとカクリヨ

現世幽世。前者は現実世界(この世)、後者は死後の世界(あの世)。幽世は常世とも呼ばれ、神道においては永久に不変の神域である。伝承によっては神籬など「境界の向こう側」であり、竜宮城のように時の流れが異なるとされることもある。逢魔ヶ時のように時間、概念の境界にも接続されることがある。幽世を神のおわす桃源郷とするか黄泉たる死者の国とするか、認識には差異が見られる。

アキハバラ

秋葉原。かつてオタクの街と呼ばれたように、電気製品の細かいパーツ等その道の人にしかわからないような物品が販売されていた。今では万人向けメイドカフェなどオタクの意味が変わってきているものの、観光地化してディープなところから表に引き釣り出されただけで本質はそんなに変わっていない。すぐ近くに神田明神があったりもするが、特に神秘的な土地であったりはしない。

バカシ

化かし。人の心を惑わすこと。誑かしと同義とされることもある。狐を代表とする妖怪によって認識を改竄されたりすることを指すことが多い。

ケガレバライ

穢れ祓い。恐らく御祓い、祓のこと。穢れ=罪=災厄を浄化する神事。

オボログルマ

朧車。鳥山石燕によって作り出された妖怪の一つ。牛車の前面に大きな顔のついた姿をしている。車争い(貴族同士が祭礼などで場所を取り合うこと)に敗れた貴族の遺恨が積もり積もったものだとされることが多いが、近世に創作されたものであることもあり詳細は不明瞭である。

マガツヒノカミ

枉津日神、または禍津日神。日本神話における穢れの神。伊弉諾尊が黄泉を訪れた罪、または黄泉で付着した穢れから生じた災いを産む神である。八十枉津日神(八十禍津日神)と枉津日神(大禍津日神)の二柱で構成されている。これらの産みだす穢れを正すため、追加で直毘神が産みだされている。怨霊信仰のように「凶事を司る神を祀ることでそれから逃れる」という思想のもと、厄除けの神として祀られることもある。何度も言うようだが、日本神話は善悪二元でないため明確な悪神ではない。

オウマノヨル

逢魔之夜。恐らく逢魔ヶ時が元となっている。逢魔ヶ時は昼と夜の境界である午後6時頃の事であり、魔に逢う、つまり別世界から妖怪達がやってくる災いの時間として外出が避けられた。特定の時から夜に広げたものがオウマノヨルであると想定できる。

ジョロウグモ

絡新婦。女性に化け人を食い殺す蜘蛛の妖怪。美しい容姿に化けて人を魅了し誘導する他、滝壺に住んで男を誘い糸で絡めとるとも。カタカナでジョロウグモと書くときは特に関係の無い生物種であるジョロウグモ (Trichonephila clavata) を指すことが大半である。

ワケミタマ

分霊。神社の神を分けること、または分けられた神。新たな神社を造る際に勧請され、神はいくら分けられても衰えたりはせず数が増えるのみである。

マガツノカケラ

禍津の欠片が妥当だろうか。神の欠片と考えると難しいが、この勾玉らしき物体が神の依代であると考えれば容易に解釈できる。

カミカクシ

神隠し。神域等で突如人が行方不明になることを、神によって攫われたと解釈するもの。神でなく妖怪に攫われたとする場合も神隠しと呼ばれる。神籬や逢魔ヶ時など境界である場合に呼ばれることが多い。

シンキ

神器。神聖な物品、特に神の力の宿った物品を指す。日本神話で言えば八咫鏡、草薙剣、八尺瓊勾玉の三種の神器が有名だろう。

ミタマ

御魂。魂を貴んで呼ぶときの呼称。神の魂の事を指すことが多いが、死者の魂を神として祀る際にもこう呼ばれる。

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