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【捕手必見】キャッチャーが知るべき技術の基本5つを再確認してください



石橋秀幸
元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、捕手として知っておくべき技術の基本について解説します。

前回は、捕手に必要な5つの能力について、主に思考やメンタル面についてお伝えしました。

扇の要としてチームをまとめるキャッチャーには、その5つの能力に加えて、技術的にも高いレベルが求められます

例えば、捕球の技術、盗塁阻止のためのスローイングの技術などは、すぐに思いつく技術だと思います。

その捕球技術によっては、ミットが動いてしまい、ストライクがボールに判定されてしまうこともあります。

ランナーがいる時は、特にワンバウンドを止める技術も必要です。

その辺りは、少年野球のキャッチャーにとっては、技術的に課題が多い部分だと思います。

さらに、盗塁阻止という点では、捕球後に素早くボールを持ち替える技術や、強い送球を可能にするフットワークも必要になります。


ただ、指導法は複数あるようです

実際に、捕手の構え方ひとつにしても、指導方法は複数あるようです。

例えば、ミットを縦に構えるのか横に構えるのかといったことや、低めに構える時に片ヒザをついていいのかいけないのか、そして、構えの際に利き手をどこに置くのかといったことなどです。

もちろん、それらには正しいとされる複数の考えがあり、それぞれに理由があります

つまり、なぜミットを縦に構えることが良いのかという理由や、逆に横に構えることが良いという考えにも理由があります。

また、片ヒザをつくことによるメリットもありますし、送球する側の手を置く位置にも、それぞれに理由があります。

もちろん、それらの理由を知らなければ、ケースに応じた理想的なキャッチングはできません。逆に、それぞれの理由を知ることで、技術的に向上し、チームの勝利に貢献できるキャッチャーになることが可能です。

ということで、今回はキャッチャーとして知っておくべき技術の基本について解説していきます。

これまで、捕手に必要な技術面の指導をしっかり受けたことがない場合には、とてもためになるお話ですし、指導を受けたことがある場合でも、新しい発見がある内容になっています。

ですから、ぜひ最後までご覧ください。

それでは、はじめていきましょう。


ミットの構えは、縦か横どちらがいいのか?

捕手として知るべき技術、基本のひとつ目はミットの構え方です。

捕手はミットを縦に構えるのが理想的か、それとも横に構える方が良いのでしょうか?

この基本技術に関しては、指導者によって意見が分かれています。

少年野球では、稀に左利きの捕手も目にしますが、ほとんどは右利きだと思います。ですので、右手が利き腕の捕手を例に、それぞれの理由について考えてみましょう。


かつては縦に構えるのが主流だった

かつて日本では、捕手はミットを縦に構えることが主流でした。

縦に構えるというのは、人差し指を時計の12時方向に向けるように構える形になります。

縦に構える利点は、右バッターのインコースを捕球しやすくなることです。

特に左投手のクロスの角度がついたボールの捕球のときは、球の勢いに押されないように捕球することが求められます。そのために、ヒジと脇をしっかり締めて捕球するように指導されていました。

脇を締めての捕球は、右バッターのインコースのストライクゾーンの捕球には効果的です。

ただし脇を締めると、手首が立ってしまいます。手首が立ってしまうとマイナス面もあります。

それは、ミットの位置が上がりやすくなることです。そうすると、低めの球を捕球するときに、ミットがお辞儀をするようになり、捕球面が下を向いてしまうことがあります。

低めのゾーンでミットがお辞儀をすると、審判に良い印象を与えないので、ボールの判定を受けることが多くなってしまいます。


近年は横に構える指導もされています

ミットを縦に構えることは、メリットもあればデメリットもあることを説明しました。

近年は、斜め横にミットを構えるという指導もされています。

それは、ミットをはめる左手の人差し指が、時計の1時から2時の間を指すように構える形です。

この構えの場合、自分から見たときに人差し指が右斜め上を向くようになります。

この構えでは、脇が多少開き気味になります。ですが、この構えの方がヒジから先を自由に使えます。ですので、投球のコースにもハンドリングよく対応しやすくなると言われています。

さらに、脇にゆとりがあることで、下から上にミットを使える自由度が増します。ですから、低めの球も楽に捕球することができるといわれています。

先ほどの縦に構える例とは違い、ミットが下から出しやすくなるので、ミットがお辞儀をすることも減ります。そうすると、審判にも良い印象を与えることができます。

キャッチャーミットも昔に比べ、軽くて柔らかくなりました。そのため、ミットが扱いやすくなり、斜め横に構えることができるようになってきたともいわれています。

さらに、ランナーがいないときは、左ヒザを地面につけて構えると捕球しやすいという捕手もいます。

それは、左ヒザを地面につけることで、ヒジを動かせる範囲が増して捕球範囲が広がるためです。その構えによって、勢いのある右打者へのインコースの捕球もしやすくなるという捕手もいます。

ミットの構えは、指導者によって意見が分かれるため、絶対的なものはありません。

選手によっても、構えやすい構えにくいということもあると思います。自分に適した構え方で捕球技術を磨いていきましょう。

ただ確実にいえることがあります。

それは、構えとは捕球を確実にするために行う準備ということです。

つまり、落球しないこと、後ろに逸らさないことが大前提です。そのためには、ミットの芯で捕球することが基本です。

この基本を守りつつ、捕球から素早くスローイングに移ることができるように、練習を繰り返しましょう。


構えたときの右手はどこに置くのが正解か?

捕手として知るべき技術、基本の二つ目は構えたときの利き手を置く位置です。

構えの時、利き手をどこに置くように指導されるケースが多いでしょうか?

近年の高校野球では、利き腕を背中側に回して、ミットを片手で構えるシーンをよく見ます。これは、少年野球でも指導されてる構え方です。

その一番の理由は、捕球の際に利き手の指のケガを防ぐためといわれています。一方で利き手は親指を中に隠し、太腿の横に置いていた方が、素早く送球に移れるという意見もあります。

硬球が指に当たると、突き指はおろか、皮膚の表面が裂けてできる裂傷というケガをすることがあります。時には骨折というケースも目にしてきました。

経験値の低い小中学生の場合、捕球の直前に、つい利き手をミットに添えるように出てしまうケースがあります。また、利き手の位置に意識がいかず、膝の上などに利き手を置いているケースも目にします。

利き手をどこに置くにしても、送球に必要な指は絶対にケガをしないように、常に気をつけましょう。


盗塁をどう防ぐか?

捕手として知るべき技術、基本のもうひとつは盗塁阻止です。

盗塁を阻止する確率は、実はプロ野球の捕手であっても50%以下です。参考までに、2023年度のセリーグの捕手の盗塁阻止率を見てみましょう。

ご覧のように、1位の中村悠平捕手でも5割を満たしていません。盗塁を阻止するには、それだけ高い技術が求められるということになります。

小中学生の場合であれば、盗塁を阻止することがより難しくなると思います。

ですが、成長段階の小中学生の場合は、盗塁阻止率に目を向ける前に、これからお話をする、基本的なことを理解することからはじめましょう。

肩を強くしようとして、投げすぎるなどということがないように、くれぐれも注意してください。


捕球からスローイングへの移行

捕手として知るべき技術、基本の3つ目は捕球からスローイングへの移行です。

盗塁を阻止するためには、捕球姿勢から送球姿勢に素早く移行する必要があります。そのためには、捕球したボールを素早く握り直さなければなりません。

素早く握り直すためには、捕球したときに球の回転をミットの中でしっかり止める、捕球技術がまず必要です。

ミットの中でボールが遊ぶ」ということを聞いたことがあるかもしれませんね。

投手の勢いのあるボールをしっかり捕球するためには、向かってくるボールとミットの捕球面が、90度になるようにすることが理想的です。角度がずれると、その分だけボールがミットの中で動いてしまいます。

すると、ボールの握りかえを素早くすることが難しくなってしまいます。

ですから、捕球の時のミットの芯とボールの角度に注意して捕球練習をするようにしましょう。

できれば、家の中でもボールの握り替え練習をすることをおすすめします

握り替えの練習だけなら、いつでも空いた時間で行えます。地味な練習ですが、繰り返すことで素早くボールの握り替えができるようになります。


素早いフットワーク

捕手として知るべき技術、基本の4つ目はフットワークです。

よく、強肩という言葉が使われていますから、キャッチャーには強い肩が必要だと言われています。

実は、強いスローイングのためには、単に肩の強さだけが求められているのではありません。

捕球からスローイングへ移る際の素早い足の動き、フットワークを含めた送球技術が必要になります。

いくら肩が強いと思っていても、上半身だけで投げていては、2塁まで速く正確なスローイングはできません。

投げる力というのは、下半身から上半身に力が伝達されることが必要です。下半身が上手に使えることで、速く正確な送球を行うことができるのです。

そこで、捕球から素早くスローイングに移行するために、フットワークをよくするステップの練習をしましょう。

ステップについても、指導者によって教え方に違いがあると思います。

一般的には、左足の位置に素早く右足を持っていくステップを指導するケースが多いと思います。

いずれにしても、狭いキャッチャーボックスの中では、細かくて素早いステップが必要です。

そのためのフットワークの技術がとても重要になります。

今回、フットワークの細かな技術までお伝えする時間的余裕がありませんが、いずれお伝えしたいと思います。


盗塁を防ぐための時間を考える

捕手として知るべき技術、基本の5つ目は盗塁阻止に必要な時間です。

中学生以上になると、塁間は27.43mになります。

そして、ホームベースから2塁ベースの中心までは、38.81mと決められています。

例えば、投手が時速140キロで投球したとします。また、捕手が捕球してから時速120キロで送球したとしますね。

さらに、野手が捕球してタッチに到るまでの時間をそれぞれ予測して合計すると、約4〜4.6秒になります。

「盗塁阻止に重要なことは何か」という質問をすると、多くの人が投手の投球スピードと答えます。

確かに時速140キロのストレートと、100キロの変化球を比べると、当然140キロの方が捕手に到達するまでの時間が短くなります。

投球されたボールが早く到達すれば、捕手は早く送球に移れるので、盗塁を防ぐ可能性は高まります。しかし、140キロと100キロのボールの到達時間の差は、わずか0.16秒にすぎません

ですので、盗塁阻止の時間短縮を、投手だけに押し付けるのは酷な話です。むしろ、捕手と野手とコンビネーションプレーを磨くことで、短縮できる時間もあるはずです。

もちろん、盗塁を防ぐために投手がクイックで投げたり、速い球を投げることは必要なことですが、それが全てではないのです。



盗塁を未然に防ぐのも技術

捕手として知るべき技術、基本の最後にお伝えするのは、盗塁を未然に防ぐということです。

例えば、強肩で盗塁阻止率が高い捕手の場合、相手のランナーも安易に盗塁を試みないでしょう。すると、捕手が盗塁をアウトにする機会が減ります。

そのため、相対的に盗塁阻止率は下がり、捕手としての記録は低くなります。

しかし、相手チームに盗塁という作戦をとらせなかった訳です。そういう意味では、その捕手の存在意義は大きいといえます。

参考までにお伝えすると、盗塁阻止率の計算式は次のようになります。

【盗塁阻止率】=【盗塁をアウトにした回数】÷【相手チームの盗塁企図数】

このように、記録上の盗塁阻止率は、相手チームが盗塁を試みた回数によって違ってきます。

しかし、盗塁阻止能力が高い捕手の場合、実際に盗塁をアウトにするだけでなく、未然に防ぐということで盗塁を阻止することができているといえます。

ただ、お伝えしたように、盗塁阻止には捕手の力だけでなく、投手のクイックや牽制といった協力も必要でしょう。そして、野手のベースカバーの的確さやタッチの素早さと正確さも求められます。

つまり捕手と投手、野手との連携があってはじめて、盗塁を阻止することができるのです。

ですから、盗塁阻止率とは捕手を評価する数値ですが、投手と野手を含めたチームの評価という考え方もできると思います。


今回のまとめ

今回は、捕手として知るべき技術の基本というテーマで解説をしました。

まず、ミットの構え方については、縦に構えるか横に構えるかの違いがあることをお話ししました。そして、それぞれの理由について解説をしました。

また、利き手をどこに置くのかという点でも、それぞれに考え方があることをお話ししました。

さらに、キャッチャーとしての仕事の醍醐味のひとつとして、盗塁阻止があります。

盗塁阻止のために必要な捕球の基本的な考え方、素早いボールの握り変えに必要なこと、そしてフットワークについてもお話をしました。

最後に、盗塁を未然に防ぐというお話もしましたね。

今回の内容も、何度も見直して、捕手としての技術の基本をしっかり身につけていただければと思います。

なお、ホロス・ベースボールクリニックには、150キロを超えるストレートで打者を打ち取ってきた紀藤真琴コーチがいます。また魔球パームボールを駆使して、最優秀防御率を獲得した小林誠二コーチもいます。

紀藤真琴コーチ
小林誠二コーチ

ですから、捕手の捕球技術や盗塁阻止について、プロの投手の視点で見た経験談もお伝えすることができます。

プロ野球で実際に、数々の強打者を抑えてきた経験や、盗塁を阻止してきた技術は計り知れません。お二人のその経験から、捕手のリードや配球について学ぶことにも意義があるでしょう。

紀藤コーチ、小林コーチの、オンラインでのパーソナルトレーニング指導にご興味のある方は、ぜひお問合せ下さい。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

引き続き、野球の上達のために頑張っていきましょう。

それでは、またお会いしましょう。


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。

現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。

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■石橋秀幸これまでの業績:
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