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【OPS向上】ヒットがなかなか出ない球児でも、チームの得点に貢献できる3つの具体策


元広島東洋カープ一軍トレーニングコーチ
元ボストンレッドソックストレーニングコーチ

こんにちは。
ホロス・ベースボールクリニックの石橋秀幸です。

今回は、打率の低い選手が、どのようにしたらチームの得点に貢献できるのかについて解説します。

チームの得点に貢献すると言っても、ヒットを打って出塁することや、長打を打つことだけではないと知っていましたか?

なかなかクリーンヒットが打てない

そんなお悩みの声をたくさんいただいています。

高めのボールは、球威に押されてポップフライか空振り。
低めは弱いゴロ。
そして、変化球には腰が引けてしまう。
ヒットと言っても、内野安打ばかり.....

私もこれまでに、打率が1割台という選手を目にしてきました。

そのような結果を改善したいと、動作分析の依頼をいただくのですが、やはり改善ポイントが複数見えてきます。

でも、少し工夫することで、チームへの貢献度の指標OPSを高めることは可能です。

その工夫とは、なんだと思いますか?

ということで、今回は「チームの得点に貢献する方法」について解説をします。

ただ、強い打球が打てないのは、成長途中の小中学生なら、まだ仕方ないことです。しかし、ただ漠然と打席に入っているのと、今回お伝えする内容を理解して打席に入るのとでは、大きな違いがあります。

その工夫とは、ズバリ出塁率を高めることです。

現状で、ヒットでチームに貢献できていないという場合には、とても役立つ内容です。

もちろん、具体的な練習方法についても解説しますので、ぜひ、最後までご覧ください。


打者として知っておくべき指標

打者の成績を評価する指標として、一番注目されるのは打率ですね。

少年野球チームの中にも、選手別の打率を計算している指導者や、保護者がいると思います。

ただ、打者のチームへの貢献度を適切に評価する場合、打率以外におさえておきたい指標が、いくつかあります。

その指標についての計算方法など、詳しい内容は「大谷翔平選手の凄さ「OPS」で見る驚異のパフォーマンス」で解説しています。

今回は、特に出塁率とOPSを中心に解説していきます。


打率だけじゃない打者を評価する5つの指標

打者の成績を評価する指標はたくさんありますが、代表的なものに次の5つがあります。

  1. 打率

  2. 長打率

  3. 塁打数

  4. 出塁率

  5. OPS

打率は一番注目される数字ですね。

計算も難しくないので、小中学生も、試合ごとに計算している選手がいるかもしれません。

ただ、チームの得点への貢献という点では、問題点もあります。

例えば、同じ打率の選手がいたとします。ひとりの選手は、単打が多く、もうひとりの選手は、長打を多く打っている場合だとどうでしょう?

打率だけでは、チームの得点や、勝利への貢献度は決められないことに気づくと思います。

そこで、そのほかの指標も計算されるようになりましたが、近年では、OPSが注目されています。

OPSは、出塁率と長打率を合わせたものです

選手がチームの得点にどれだけ貢献しているか、得点のチャンスをどれだけつくり出しているかを数値で示します。

つまり、OPSが高い選手ほど、チームの得点に大きく貢献していることを意味します。

とはいえ、今回は、なかなかヒットが出ない小中学生の選手が、チームの得点に貢献するというテーマです。

ですので、ここからは「出塁率を高めることでチームへの貢献度を高める方法」について考えていきます。


出塁率を高めるとは?

チームの得点への貢献度を評価する指標として、OPSが注目されています。

高い長打率が期待できない選手の場合、得点に貢献するカギは「出塁率」です。

出塁率とは、打者が塁に出る確率のことです

出塁率は、安打に加え、四死球の数も考慮されます。ですから、選球眼を良くすれば、四球を選んで出塁率を高められます。

また、足が速ければ、内野安打での出塁が増えますから、出塁率を高められます。

出塁率が高いほど、得点の機会を増やすので、チームへの貢献度を計る大切な指標になります。ですから、仮に今は打率が低いとしても、長打が打てないとしても、出塁率を高めれば、チームに貢献できるのです。

では、どのように工夫をすればチームに貢献できるか考えてみましょう。


カウントごとの対応を知ることが大事

出塁率を高めるためには、たくさんの工夫が必要です。

今回は、その中のひとつとして紹介する「カウントごとの対応のしかた」を参考にしてみてください。

相手チームのバッテリーは、打たれないように「配球」を組み立てます。例えば、コーナーギリギリの勝負球を、初球から投げるケースは大抵はありません。

また、3ボール1ストライクと、1ボール2ストライクでは、配球も変わりますし、心理面も違います。

あくまでも参考例ですが、出塁率を高めるために有効に活用してください。

「0−0」:
投手は、ファーストストライクが欲しいはず。まずは、自分の得意なコース中心に的を絞る。初球から難しいコースに手を出す必要はない。

「1−0」:
投手が2ボールにしたくない場合は、少し甘めのコースに投げてくる可能性がある。積極的に打ちに行こうとするあまり、難しい球を打たされないように注意。

「2−0」:
投手としては、ストライクが欲しいカウント。自分の得意なコースに的を絞り、それ以外は見逃す気持ちで余裕を持って待っても大丈夫なカウント。

「3−0」:
投手は、ストライクを取らないといけない。自分の得意なコースだけに的を絞り、打ちに行くつもりで準備する。ただ、制球が定まらない投手の場合は、無理せず見逃してもOK。

「0−1」:
投手が有利なカウント。初球より厳しいコースでストライクを取りにくる可能性がある。少し的を広げて待つ。

「1−1」:
平行カウント。投手はストライクが欲しくても、甘く投げられないという気持ちがある。バッテリーの誘いに乗らないように、ボールをよく見極める。

「2−1」:
投手は、3ボールにはしたくない。ストライクを取るために、ベストなボールを投げてくる可能性が高い。甘いボールは積極的に打つ気持ちで準備する。

「3−1」:
打者有利なカウント。すでに4球ボールを見ているので、軌道などもイメージしやすいはず。積極的に打ちに行く気持ちで準備し、ボールをしっかり見極める。

「0−2」:
完全に投手が有利なカウント。勝負球、誘い球とあらゆるパターンで投げてくるので、ストライクゾーンを広げて待つ。厳しいコースに来たら、引きつけてカットする。

「1-2」:
ピッチャーがかなり有利なカウント。勝負球、誘い球どちらでも攻めてくる可能性があるので、ストライクゾーンを広くして待つ。ストライクは積極的に打ちにいき、際どいコースはカットする。

「2−2」:
平行カウント。投手は勝負にくるが、3ボールにはしたくない気持ちがある。ストライクゾーンを広くしながらも、甘く来たら積極的に打つ。際どいコースの見極めに集中することもポイント。

「3-2」:
投手は最後の勝負球を投げてくるので、よりボールの見極めが必要。歩かせてもいい場面では、ボールになる誘い球が来ることがあるので注意が必要。

以上が、一般的なカウント別の対応法です。

少年野球の選手の場合、緊張や経験の少なさで、打者有利なカウントでも、甘い球を見逃してしまうことがあります。

まずは、自分が有利なカウントなのか、不利なカウントなのかを、打席で落ち着いて確認できるようになりましょう。

そして、自分のストライクゾーンをしっかり理解できるように、「見る力」をつけることが重要です。

見る力が高まれば、四球を選ぶ確率も高まります。また、十分に引きつけて打てるようになるので、厳しいコースへの対応力も高まります。

そして、コースに対応したバッティングについて、「打撃でうまくいかない内外角打ちの具体的な攻略法」「打撃で多い高めの空振りと低めの弱いゴロ その科学的理由と打開策」を再確認して、ヒット数を増やして、出塁率を高める練習をしてください。


出塁率が変わるとOPSにどう影響するのか?

強い打球が打てず、なかなかヒットが出ない選手でも、出塁率を高めることで、OPSを高めることができます。

そのひとつとして、見る力を高めて選球眼を良くし、四球の数を増やすことが挙げられます。

ただし、最初からフォアボール狙いで打席に立つことを、おすすめしているわけではありません。

先ほど、カウント別の対応をお話ししましたが、あくまでも全ての投球に対して、「打ちに行く」ことが重要です。

構え、テイクバック、そしてトップをつくって踏み込んでいき、狙い球でなければ打つのをやめる。ボールなら打つのをやめる。それが大前提です。

ですから、あくまでも強いライナー性の打球が打てるように、インサイドアウトのレベルスイングを習得する練習を重ねてください。

それを踏まえて、出塁率とOPSの変化について見てみたいと思います。

例えば、一試合平均3回打席に立つとします。5試合出場したとすると、合計で15打席になりますね。

15打席中4本のシングルヒットが打てたとします。その時の打率は、0.266です。小中学性の場合、これくらいの打率の選手が多いのではないかと思います。

では、この時の、出塁率・長打率・OPSを確認しましょう。
なお、各数字の計算方法については、「大谷翔平選手の凄さOPSで見る驚異のパフォーマンス」を確認してください。

  • 出塁率:0.267

  • 長打率:0.267

  • OPS:0.533

次の表でOPSの評価を見ると、

OPSの評価

非常に悪い」という結果になりました。

ですが、次のようなことができるようになれば、出塁率を高めることができます。

  • カウント別の対応をしっかり行う

  • 自分のストライクゾーンを理解する

  • ボールを第3ゾーンまで中心視で見る

これらのことができるようになれば、打者有利なカウントで慌てることなく、ボール球を見極められるようになります。

しっかりと引きつけてボールを見ることができれば、ボール球を見極める確率が高まります。仮に、追い込まれても、カットできるようになれば、四球の数が増えることが期待できます。

もしも、先ほどのケースで、一試合あたり四球をひとつ選べたとします。

すると、

  • 出塁率:0.450

  • 長打率:0.267

  • OPS:0.717

と、ぐっとOPSの数値が上がります。

さらに、インサイドアウトのレベルスイングのスイング練習を繰り返し、強いライナー性の打球が増え、4本のヒットのうち、1本が二塁打になったとします。

すると、

  • 出塁率:0.450

  • 長打率:0.333O

  • OPS:0.783

Cランクまで上昇し、チームの得点への貢献度が高くなります。

これは、あくまでも一例です。

小中学生は、やはり強いスイングができるように、基礎体力を高めながら、野球に必要な専門体力を身につけることが重要です。

ですが、総合的な野球力を高めるという点で、選球眼やカウントごとの対策の重要性について、理解できたのではないでしょうか。


OPSを高めるカギ

ここまでの話で、出塁率を上げることでOPSが高まるとイメージできたと思います。

もちろん、野球には攻撃だけでなく守備もあります。守備で失点を防ぐことも、チームへの大きな貢献です。そして、走塁の技術が高ければ、得点への貢献度は高くなります。

ですから、特に小中学性の間に、野球に必要な「走攻守」を総合的に高めるように、日頃の練習メニューを工夫することが必要です。

ただ、今回は出塁率とOPSを高めることにポイントを絞って、日々の練習で実践できることをお伝えしたいと思います。


打ち損じを減らす

バッティングは、成功より失敗のほうが多くなります。つまり、打ち損じの数が多いということです。

打ち損じというのは、単に上手にミートできなかっただけでなく、準備不足で甘い球を見逃してしまうといったことも含まれます。

小中学性の場合は、初球の甘いストライクを見逃してしまったり、追い込まれた後に、アウトローのボールを広く見られないといったことを目にしてきました。

まずは、初球から甘い球を見逃さない気持ちで、打席に入ることが肝心です。そして、自分のストライクゾーンを理解すること、自分の得意なゾーンを理解することが必要です。

なお、ストライクゾーンについては、「打撃で多い高めの空振りと低めの弱いゴロ その科学的理由と打開策」で説明していますので、確認してみてください。

初球や、ボールが先行したカウントでは、基本的に自分の得意なコースを中心に狙いを絞りましょう。ほとんどの場合で、ど真ん中のストライク周辺になるはずです。

逆に、ストライクが先行したカウントでは、ゾーンを少しずつ広げて、打ち損じや空振り、見逃しを減らす対策が必要です。

2ストライクと追い込まれた場合は、きわどいコースには必ず対応するために、ストライクゾーンをボール半個分ほど広げて対応しましょう。

繰り返しますが、常に強いスイングでインパクトできるようにすることを忘れないでください。


第3ゾーンまで中心視でボールを見る

打ち損じを減らしてOPSを高めるためには、最後までしっかりボールを見続けることが必要です。

その点では、プロ野球選手が18.44mを「3つのゾーン」に分けていることを「知らないままで大丈夫?打撃向上のための目からウロコが落ちる7つの秘密」で説明しました。

ほとんどの選手が、第2ゾーンまでしか、中心視でボールを見ることができていません。

振り遅れてもいいので、第3ゾーンまでボールを見続ける練習を繰り返しましょう

そうすると、追い込まれてもカットで粘れるようになります。

例えば、プロ野球選手には、試合前のフリーバッティングで、逆方向ばかり打っている選手がいます。中には、ファウルばかり打っていて、バッティングゲージから、ボールが前に飛ばない選手もいたりします。

こういう選手は、0.1秒でも長くボールを見るために、ギリギリまでボールを呼び込む練習をしているわけです。

このような練習は、一見地味ですが、打ち損じを減らして出塁率を上げるコツをつかむ練習になります。

日頃の練習で実践するようにしましょう。


フリーバッティングでレベルを上げるコツ
バッティングの実践力を高める練習は、やはりフリーバッティングです。

フリーバッティングでは、ただ漠然とボールを打つのではなく、カウントを想定してバッティングしてみましょう。

例えば、コーチがバッティングピッチャーをしてくれる場合は、2ボール1ストライクなど、カウントを想定して投げてもらうと、効果的な練習になります。

その時、「3ボールにしたくないから、甘いコースに来るかも」とカウント別の対策を思い出せると、なおいいですね。

ボールだと思って見逃した時は、キャッチャーにストライクかボールか確認して、自分のストライクゾーンの判断力を高めていきましょう。

フリーバッティングでは、強いミートができる腕の形を意識することも忘れないでください。

そして、振り遅れてもいいので、第3ゾーンまでボールを引きつけて、インパクトの瞬間を確認する意識で強いスイングをしていきましょう。

なお、強いミートができる理想的な腕の形については、「打撃でうまくいかない内外角打ちの具体的な攻略法」で解説していますので、確認してみてください。


今回のまとめ

いかがでしたか?

今回は、出塁率を高めてOPSを向上させ、チームの得点に貢献する方法についてお伝えしました。

主要なポイントをまとめます。

  1. OPSという指標が、チームへの貢献度を示す重要な数値である

  2. 出塁率を上げることで、OPSが向上する

  3. カウントごとの対応を理解し、打席での適切な判断が、出塁率向上につながる

  4. 第3ゾーンまでボールを中心視で見ることで、打ち損じを減らせる

  5. フリーバッティングでは、カウントを想定した練習が効果的である

野球には攻撃だけでなく守備もあり、総合的な野球力を高めることが大切です。ただ、出塁率を上げることで、チームへの貢献度を高められることを忘れないでください。

日々の練習で、ボールをよく見る習慣をつけ、強いスイングができるようにがんばってください。

そうすれば、ヒットも長打も増えていきます。

さらに、カウントごとの対応を意識することで、打席で余裕を持った対応ができるはずです。

焦らず、継続的に取り組んでいきましょう。

それでは、引き続き野球の上達のために頑張っていきましょう。

今回は以上です。

次回もまた、野球の上達につながるアイデアをお伝えしますので、楽しみにお待ちください。

野球の上達に関するお悩みや、疑問点などがありましたら、いつでもご連絡ください。

最後までご覧いただき、ありがとうございました。


参考文献:

石橋秀幸著、レベルアップする!野球 科学・技術・練習、西東社 

内田順三著、プロ野球選手だけに教えてきたバッティングドリル100、 KADOKAWA

内田順三著、二流が一流を育てる ダメと言わないコーチング、KADOKAWA

内田順三著、打てる、伸びる!逆転の育成法、廣済堂出版


【石橋秀幸プロフィール】

広島県出身 日本体育大学卒。
慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科スポーツマネジメント専修卒。 1987年から2002年まで15年間、広島東洋カープの一軍トレーニングコーチ。
1997年ボストンレッドソックスへコーチ留学。
現在は、神奈川大学人間科学部非常勤講師、慶應義塾大学スポーツ医学研究センター研究員。
また、2022年11月からホロス・ベースボールクリニック代表として、球児の成長のサポート事業をスタート。
これまでも、プライベートコーチとして、小学生から大人まで、アスリートはもちろん、プロの演奏家へもトレーニングとコンディショニング指導を行う。
講演実績多数。
著書多数。
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■石橋秀幸これまでの業績:
https://holosbc.com/achievements-of-hideyuki-iishibashi/
■石橋秀幸の講演実績:
https://holosbc.com/lecturerecord-ishibashi/

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