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(洋楽和訳)Let Down / Radiohead

Transport, motorways and tramlines
輸送機関、高速道路に鉄道線路
Starting and then stopping
動き出しては止まり
Taking off and landing
離陸しては着陸する
The emptiest of feelings
虚ろな感覚
Disappointed people clinging on to bottles
がっかりする奴らが 酒瓶にしがみついて
And when it comes it's so so disappointing
そうなっちまうと 本当に本当に最悪で

Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって
Crushed like a bug in the ground
地中の虫みたいに こなごなにされて
Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって

Shell smashed, juices flowing
殻は砕かれ 液が流れ出し
Wings twitch, legs are going
羽は引きつり 脚はぴくぴく動こうとする
Don't get sentimental
感傷的になるなよ
It always ends up drivel
どうせくだらない終わりなんだから

One day I'm going to grow wings
あるとき 俺の背中に羽が生えだして
A chemical reaction
化学反応
Hysterical and useless
ヒステリックで役立たずな
Hysterical and ...
ヒステリックで…

Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって
Crushed like a bug in the ground
地中の虫みたいに こなごなにされて
Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって

You know, you know where you are with
あんたは知っているはずだよ 自分の立っている場所のこと
You know where you are with
それがどんな場所なのかってことをさ
Floor collapsing
足もとが崩れ落ち
Floating, bouncing back
横や縦に揺れ動いているような場所だよ

And one day....
そしてあるとき
I am going to grow wings
俺の背中に羽が生えだして
A chemical reaction
化学反応
Hysterical and useless
ヒステリックで役立たずな
Hysterical and...
ヒステリックで…

Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって
Crushed like a bug in the ground
地中の虫みたいに こなごなにされて
Let down and hanging around
打ちのめされて 這いずりまわって


RadioheadのLet Downです。
びっくりするくらい暗い歌詞ですよね…
でも、不思議と「暗い歌」という印象は受けません。それどころか、私はずいぶんこの歌に励まされてきたように思えます。どうしてでしょう。

曲は静寂なアルペジオにはじまり、輸送機関、高速道路、鉄道線路といった風景を羅列する歌詞が続きます。これらの風景を遠くからひとり静かに眺めるボーカル、トム・ヨークの視線が伝わってくるようです。確かにこれらの風景は”the emptiest of feeling”を惹起するかもしれません。ですが、emptyは仏教でいうところの「空」の思想にも繋がるとも考えられます。なにかを静かに眺めることで、知らずに背負い込んだ荷物をひとつひとつ下ろしていくことも可能であるように思えます。しかし一方で、emptyな感覚に捉えられ、”clinging on to bottles”となってしまう可能性もあります。ですが、ネガティブな要素を避けて世の中を正視することはできません。むしろ、世界の暗い側面に目を向け、その上で世界とどう向き合うかということが重要であるように思えます。カート・ヴォネガットがいうところの”So it goes(そういうものだ)”でしょうか。

これ以降も暗い歌詞が続きますが、その後ろでは限りなく美しいメロディが流れます。ドラムとベースは心臓の鼓動のように脈打ち、ギターの音色が薪の火のように大きくなったり小さくなったりします。そのダイナミズムはまさに世界そのものを表しているように思えます。原子の小さな震えが数限りなく集まって、この世界の大きなうねりをつくっているのだということを、この曲のメロディが伝えてくれているように思うのです。

曲の終盤、美しい星屑がきらめくようなメロディの中、最初と同じアルペジオで、この曲は終わります。それはまるでひとつの星の誕生と終末のようです。そして、ひとつの星の終末は、また別の星の誕生を意味します。その輪廻のサイクルを歌うような、とても大きな曲だと思います。

ポジティブな要素も、ネガティブな要素も、それらを包括したすべてが世界をつくりあげている要素なのだということを、この曲を聴いていると感じることができます。恐らくこれからも幾度となく、この歌に励まされながら生きていくのだと思います。

長くなりましたが、今日はこのあたりで。
読んでいただいた方、ありがとうございました。