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有利子負債コスト、節税効果と最適資本構成【Finance基礎】

【有利子負債コスト】
債権者に利子を払う必要がある負債
→短期借入金や社債など
→買掛金は利子を払う必要ないので該当しない

WACC
=D/D+E
rD(1−税率t)+E/D+ErE

【有利子負債コストの見積もり】
・銀行借入れなら、金利いくらで貸してくれそうか

・社債なら、現状で市場によく流通しているものがあればその利回り、もしくは「格付け」が指標に

→債券の格付けには、AAA(トリプルエー)、AA、A、BBBなどのランクがある

→ムーディーズ(Moody's Corporation)、スタンダード&プアーズ(S&P)など

→アメリカの民間企業で米大手債券の格付け機関業務を行っている2大格付け会社

【有利子負債コスト留意点】
過去に借り入れ(社債なら発行)したときの利率ではない
現在、利回りがいくらになるか

・WACCを算出する際は、rDに(1−税率t)の節税効果も反映させる

【MM理論】
借り入れを行っても事業活動に影響を与えない限り、FCFへの影響はない

おさらい「FCF」とは
・ビジネスに投資をして、ビジネスから生まれるリターン
→財務CF(債権者・株主とのやり取り)以外の部分
→借り入れがあってもなくても変わらないCF

FCF(フリーキャッシュフロー)
=営業利益
(1−税率t)+減価償却ー投資ー⊿WC

借り入れがあってもなくてもFCFは変わらない
→WACC・企業価値も変わらない

「MM理論」
完全市場(税金のない世界)の下では、企業価値は資金使途(資産内容)により決定され、資本構成(資金調達方法)には影響を受けない

・企業価値が一定であり、FCFも資本構成の変化によらず一定であるため、WACCも一定である

"税金のない世界"では.....
・資本構成が変わっても企業価値は一定

・総資産に対する有利子負債の比率が大きくなるにつれて、rEが大きくなる

負債を増やすことで株主の期待リターンが上がる
→無借金経営の会社が時々ActiveFundに狙われるのは、これが背景

【節税効果】
税金がある世界ではMM理論の結論が変わる!

「法人税」「支払い利息」「配当」の関係
→法人税は支払利息差引後、配当前の利益にかかる
→お金の還元には順番がある
 債権者>国(税金)>株主

おさらい「CFの現在価値」の算出方法
永久年金型(一定額のCFが半永久的に続く)場合

現在価値(PV)=毎年のCF/割引率
節税効果の現在価値(永久年金型の場合)
=有利子負債額 
 税率

・税金のある世界では、有利子負債を増やすと節税効果で企業価値が上がる一方、FCFは、有利子負債の額に関わらず一定
→その分、WACCが有利子負債が増えるにつれて下がる

・営業利益が同じという条件で、支払利息があるときは無い場合に比べ、資金提供者に還元されるキャッシュフローは増える

【最適資本構成】
「有利子負債を増やす影響」
・負債比率が高まれ財務破綻(赤字転落や債務不履行、最悪の場合は倒産)の可能性が増大
→その企業の抱えるリスク増
→株主・債権者が要求する収益率(=WACC)も上昇

・仕入先・販売先との取引条件が悪化し、オペレーション費用(仕入れコスト、⊿WC等)が増加

→節税効果によるプラス分を、財務破綻コストのマイナス分とをバランスする、「最適資本構成」が存在する
(個別企業の最適資本構成を導くモデル式はまだ存在しない)

資本コストをマネージすることも重要なテーマ
 

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