ヒルナンデス!非公式テーマソングができるまで(2)

つづきです。

曲調に関しては既に決まっていた。

ヒルナンデス!のイメージといえばとにかく、明るくて楽しくて、華やかでおしゃれだ。

これを表現するには、「渋谷系」しかない!

渋谷系とは、ざっくり言うと、洋楽のいろんな要素をふんだんに含んだおしゃれミュージック。80年代末期から90年代前半にかけて形成され、フリッパーズ・ギターやピチカート・ファイヴがその元祖とされる。

単純な明るいロック・ポップスでは「おしゃれ感」は表現しづらく、ブラックミュージック的アプローチだとおしゃれだけど「お昼の明るい雰囲気」には欠ける。

明るく、かつおしゃれなイメージは、渋谷系でしか表現できないと考え、上記の2組やピチカート小西康陽さんの後のキャリア、「ネオ渋谷系」と言われる初期capsule、Cymbalsなどを聴き直し、研究した。

渋谷系的な曲調と決まれば、もちろん歌詞も、基本明るく楽しくあるべき!

しかしながら、ぼくがうたを作るうえで、重じていることがある。それは「その時代の空気を、それとなく取り入れること」。

大ヒット曲とは、作為的かどうかはさておき、多かれ少なかれその時代の雰囲気や感情が閉じ込められている。

たとえば2000年の大ヒット曲、モーニング娘。の「LOVEマシーン」。

この曲に内包されているのはズバリ「世紀末感」。

90年代初めにバブルが崩壊し、「失われた10年」が到来。就職氷河期が始まり、自殺者数が著しく増加。阪神淡路大震災に見舞われ、オウム関連を始めとする凶悪事件も多発した。

そんな暗い90年代がいよいよ終わる。誰もが明るい21世紀に夢と希望を膨らませた(しかしその思いは、9.11によって一瞬で叩き壊されてしまうことになる)。

そんな希望が、『LOVEマシーン』には狂おしいほど詰め込まれている。これはこの曲の大ヒットと決して無関係ではないだろう。

この2020年、どうしても込めたいのは、このコロナ禍における感情だ。

このご時世において、ヒルナンデス!がお昼の時間に果たしてきた役割は、決して小さなものではない。

この記事にもある通りだ。ぼくはこの記事を読んで、涙が出そうになった。あくまでバラエティ色を貫くヒルナンデス!の姿勢に感銘を受ける。

どんより重い 不安に覆われても
いつも通りやってるよ どうかホッとできますように

この暗い時代、その中でヒルナンデス!が人々をやさしく癒し、元気付ける。

これこそテレビが今できること。その美しさを、Aメロ締めの2行で表現した。

(続きます!)

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