[ネタバレ有りにつき注意]『BLUE REFLECTION TIE/帝』の話がしたい

 以前に
「『BLUE REFLECTION TIE/帝』が最高だったのでみんな買ってくれ」
 という趣旨のネタバレ無し紹介記事を書いた者です。
 今回は「未プレイの方向けの紹介」というよりは、純粋に感想を書きたいように書いただけの記事となっています。本作そのものだけでなく、関連作品の話も長々としています。
 筆者は既に2周クリア+トロフィーコンプリートをしていますが、先日、ダウンロードコンテンツである「南の隠れ島」に含まれるエンドコンテンツ「ボスチャレンジ」を最高難易度(MUSTDIE)で完走したので、感想をまとめるには良いタイミングかな、と思いました。
 
 以降、エンディングに至るまでのネタバレが含まれています。本作(以降「ブルリフT」)を最後まで遊んで完全クリアしているか、ネタバレを見ても自分でプレイするモチベーションが損なわれない方のみどうぞ。

■発売前の話(関連作品について)と総評

 さて、ブルリフTを語るにあたって、発売の少し前まで放送されていた
『BLUE REFLECTION RAY/澪』(以降「ブルリフR」)に言及することは避けられません。
 そしてブルリフRに言及しようとすると、シリーズ一作目である
『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』(以降「ブルリフ幻」)に言及することも避けられません。

 ブルリフ幻は4年前、発売してすぐにプレイしたのですが、以前の記事にも書いたように、当時は「よく纏まった良作」という認識でした。
 私はどちらかというと派手な物語が好きで、特にバトルや成長の要素があるRPGというジャンルに対しては強くそれを求める傾向があります。対してブルリフ幻は、魔法少女ものやセカイ系的コンテクストも含まれているものの、割合としては静かに女子高生たちの日常や苦悩が描かれていく部分の方が大きくなっています。
 また、あまり戦闘や育成・編成の要素は重視されておらず、RPGの戦略的な楽しみは控えめでした。ガストの美少女系作品は基本的にキャラクター重視な傾向がありますが、本作は特にそこに特化している感じです。
 あと、少女同士のふれ合いは飽くまで「青春・友情」として描かれているのであって、購入する動機として求めていた百合要素は意外とあっさりな味付けでした。しほりちゃんは同性愛者の香り(香織ではない)を発現させていましたが、ヒナちゃんの側がそれを受け入れて百合百合している訳ではないですし。わりとコメディ的に処理されていた覚えが。(とはいえ、あれはあれで面白かったです。)

 全体を通して、決して「合わなかった」という訳ではないのですが、私の場合は「神ゲー!!」と認識するほど強い思い入れを抱くまでには至りませんでした。 
 そんな感じだったので、続編(=ブルリフRST)リリースの発表があり、そして実際にブルリフRが放送された時も、そこまで強い期待感は抱いていませんでした。
(そもそもブルリフ幻のラストが、続編を作る余地がなさそうな程に綺麗に纏まっていた……というのもあります。)
 それとブルリフR最序盤の「掴みの難しさ」が相まって、3話までは視聴を続けるべきか迷ってすら居たほどです。

 しかし結果的に言えば、ブルリフRは個人的にはここ数年で観たアニメの中で屈指の名作だったと思います
 これは誇大表現ではなく、途中から毎週2~3回観るくらいには楽しんでいました。
 ブルリフRは決して「綺麗に完結した筈の物語の蛇足」ではなく、一作目で展開した世界をより大きく、より楽しく膨らませたものとなっていました。
 ブルリフ幻プレイ済・未プレイ問わず、最後まで観続けた人からの評価が高い本作ですが、「どこから面白く感じ始めたか」というのは人によって分かれるところかと思います。
 私は、都ちゃんが仲間に加わり、今後の方針が明確になった4話から確実に面白くなっていったと感じました。そこからインパクトのある詩ちゃんの話や仁菜ちゃん回を経て惹き込まれていき、7話の段階ではすっかり魅力にハマっていました。
 中盤から段々と「前向きな主人公である陽桜莉ちゃんの弱さ」と「内気な主人公である瑠夏ちゃんの強さ」が掘り下げられていき、二人の対照性とそれ故に紡がれる絆が、百合作品としてとにかく最高でした。
(瑠夏ちゃんが好きなのでブルリフTにも出てきて欲しかったです……。まあでも、彼女が居たら「愛央ちゃんの目線を通して陽桜莉ちゃんを掘り下げる」という作りがし難かったかも知れませんね。)
 こういった物語重視の作品は結末次第で印象が大きく変動するものなのですが、最終話も関連作品に繋がる謎は残しつつも、綺麗で納得出来る結末を描き出していました。
 私は発売前の作品にあまり期待し過ぎない方なのですが、ブルリフRという作品のお陰でブルリフTをプレイするモチベーションは大いに高まりました。
 このブルリフTのデビュートレーラーのワクワク感は凄い。ブルリフ幻の有名な通常戦闘曲「OVERDOSE」にも引けを取らない最高のBGM(ブルリフTの通常戦闘曲)。そして、ブルリフ幻・ブルリフRの状況から一体何が起きてそう変化したのか読めない、謎の状況。本当に楽しみでした。

 そして実際に発売されたブルリフTは、そんな期待を裏切らないゲームでした。個人的には、(後述する問題点を除けば)ガスト作品の最高傑作だと思っています。
「ライザのアトリエ」シリーズや「アルトネリコ」シリーズ、サージュ・コンチェルト作品、シリーズの過去作であるブルリフ幻や(アニメ作品なのでガストが直接制作している訳ではありませんが)ブルリフRから良いところ取りしつつ、新しい形に纏めた集大成と言えます。
 私はこれらの作品が全て好きなので、ブルリフTに惹かれたのは自然な流れでしょう。

■戦闘システム

 さて、ここからようやくブルリフTの具体的な話をする訳ですが、まず戦闘面について。
 本作の戦闘は、特にやり込みをしない限りにおいて全体的に難易度が低く(一周目は最高でもノーマルまでしか選べません)、RPGに不慣れな方でもクリアまで行けると思います。その為、ブルリフ幻と同様にストーリーとキャラクター重視な設計になっていると感じました。
 逆にRPGゲーマー的には難易度面で言えば、適度に縛りを入れないと一周目はちょっと物足りないかも知れませんね。
 最序盤だけはアイテム以外の回復手段が、弱いことで知られている(?)回復スキル《レタブリスマン》しかないのでかなり緊張感が有りましたが。

 難易度面に関してはそんな感じですが、戦闘システムそのものは作り込まれていない訳ではなく、かなり面白くてバトルのやり甲斐がある仕上がりになっています。
 
ブルリフTのバトルは、オーソドックスなタイムライン制バトルであったブルリフ幻から大きく雰囲気を変えてきています。
 行動力に関する扱いは『FINAL FANTASY XIII』に近い仕様で、私はあのシステムが好きだったのでブルリフTの其れも魅力的に感じました。
 行動力を溜めて連続攻撃や強攻撃を放つの、良いですよね。
 今作の行動力は「エーテル」と呼ばれていますが、実はブルリフ幻にも行動力を示すタイムラインの他に「エーテル」というリソースがあり(画面左下に出ているやつですね)、エーテルを消費することでスキルを連続発動出来ます。今作はこのシステムを別の形で表現している訳ですね。
 全体的な雰囲気としては、ガスト作品で言うならば「ライザのアトリエ」シリーズのシステムをベースに、ブルリフ幻に寄せたような感じでした。
 ライザの戦闘も非常に私好みでしたが、あの「戦いが進むにつれて有利になっていく爽快感」と「良い意味でのシンプルさ」を継承しているように思います。
 前者はライザにおける「タクティクスレベル」でありブルリフTにおける「ギア」。
 後者はスキル数やリソースの種類の削減です。ライザもブルリフTも最後まで使用出来るスキルの種類が少なめで、またMPの概念が存在しません。
 一手一手悩みながら慎重に選択するタイプの戦闘というよりは、逆にテンポを重視して「ただ操作しているだけで何となく楽しい」という方向に舵を切ったシステムの好例と言えます。
 そして、ブルリフTの戦闘システムで最大の特徴となっているのがインファイトバトルですね。部分的にライザ2の戦闘をやっているような雰囲気でした。(インファイトバトルに関してはコンボを途切れさせないことに意味があるので、攻撃をする以上に敵の攻撃を処理し切ることが重要ですが。)
「ちょっとしたプレイヤースキルで大幅なアドバンテージが得られる」というのは、戦闘に刺激と緊張感をもたらしてくれます。私としては非常に良いシステムだと思いました。
 一周目では終盤しか活かせませんでしたが、高難易度では特にインファイトバトルが鍵を握るため、HARDやMUSTDIEで遊んでいた二周目では終始活用していました。

 あと、これは別にブルリフT特有の仕様という訳ではないのですが、今作はプレイアブルキャラクターが最大6人で、それぞれが性能面において特徴を持ち「出来ることと出来ないこと」がハッキリしているのが面白かったです。
 シリーズを追っている方はご存知の通り、ブルリフ幻では戦闘メンバーが常に固定です(原種戦では一応、サポーターの編成がありますが。)。その為、メンバー編成というRPGらしい楽しみが無かったのですが、今作はそこが強化されていて良かったですね。
「性能面の特徴がハッキリしている」というのは悪く言うと「好きなキャラで戦いにくい」ということにもなってしまう訳ですが、そもそも本作は難易度が低いので、最高難易度や縛りなどのやり込みプレイをしないならば、どんな編成をしてもクリア出来ると思います。
私は二周目とDLCでは同じ編成(愛央・伶那・詩帆・サポートで日菜子)を使うことが多かったですが、一周目では色んな編成を試して全員バランス良く使っていました。
 難易度に関して「RPGゲーマーだと物足りないかも」と前述した訳ですが、キャラクター重視のゲームとしては正しい調整だな……と思います。
何というか、「戦闘の面白さ」と「難易度の低さ」って、別に矛盾する概念ではありませんよね。

■工作・学校開発

 ガスト作品定番(かは分かりませんがいつも見かける)の調合要素です。
 システムの立ち位置としてはアルトネリコやサージュ・コンチェルトの調合に近く、調合というシステムそのものを楽しむというよりは、それによって発生する会話イベントを楽しむことが肝となっています。
 かのシリーズではアイテムを作る度にそれについて話す愉快なイベントが発生していましたが、ブルリフTでも後述する「お願い」で作ったアイテムについては会話が発生しますし、施設を作るとそれにまつわるデートイベントも発生します。
 アイテムも施設も有れば有るだけ有利になりますし、お願いやデートもすればするだけ強くなるので、イベントを楽しむことが戦力増強にも直結するのはスマートで良いですね。まあ、お陰でレベル上げをせずとも過剰に強くなってしまう訳ですが。
 やはり基本的にはキャラクターやストーリーを重視した作品なので、一周目の時点で難易度の低さが気になる場合は適宜縛りを……といったところ。

 アイテムも施設もメチャクチャ強いので、一周目は殆どアイテムを使いませんでしたし、施設も特に縛りは設けませんでしたがほぼ強化しませんでした。
 2周目にDLCのボスチャレンジをMUSTDIEで遊んだのですが、その準備としてようやくアイテムの量産や施設強化を試みたくらいですね。
 アイテムは「ラタンバスケット」や「ハデス弁当」が、味方全体を全回復させる最強の回復手段だったので、立て直し用に効果を可能な限り強化したものを幾つか作っていました。ライザシリーズの「エリキシル剤」みたいな壊れ回復アイテム枠ですね。
 施設も、クリティカル系を優先的に強化した結果、味方全体が確定でクリティカルを出せるくらいになってしまいました。
 両者共にここまでやらなくてもラスボスは充分倒せるので、緊張感を保ちたい場合は程々に……。

■「お願い」

 いわゆる「お使いサブクエスト」ですが、地味ながら加点要素でした。
 私はお使いサブクエストが苦手なのですが、苦手な理由として単純に面倒である以上に「依頼してくるのが脇役であることが多いのでモチベーションが湧かない」というのがあるんですよね。
 しかし本作はそもそもモブキャラクターなどの脇役が回想以外に登場しません。10人の少女達はみんな主役だしみんなヒロインです。
 愛着が湧いているメインキャラクターのお願いなら、聞いてあげたいですよね。
 お願いの報酬もTPという、バトル(スキル取得)とストーリー(TLv上昇によるイベントの発生)の両方で価値があるものですし。

 ステルスミッションに関しては「しんどいな」と思うものもありましたが……詩ちゃんのところとか。

■デート

 ブルリフTにおいて、かなり推されている要素です。
 女の子同士でおデートをします。「デート」と言っても別に愛央ちゃんが誰かと恋仲になる訳ではなく、対象キャラクターの掘り下げと共に友情を深める……といった趣です。
 ブルリフ幻にもあったシステムの発展型であり、今作ではデート相手と連れ添って歩くことが出来ます。
 今作のデートの魅力は、単純にイベントの描写が前作の時より表現豊かになったというのもありますが、何というか、「百合感」が増しているんですよね。
 愛央ちゃんが何かと女の子とイチャつきたがる性格なので。
 しかし、それ故に愛央ちゃんが絡まない組み合わせに割って入るような……「百合の間に挟まる女」になってしまうことがあったのは複雑な気持ちでしたね。具体的には、伶那勇希の間に割って入りたくないというか。
二人で並んで立ってる時に片方をデートに誘えたりもして「おいおい!」って思ってしまいました。
まあ別にデートを重ねても友情であることが変わることはないし、どうしても違和感があるならデートしないことも出来る訳ですが。
 その辺りはストーリーと「愛央ちゃんを主人公とするゲーム」としての在り方との兼ね合いが難しい部分なので、仕方ないですね。

■探索

 ブルリフシリーズは基本的に、拠点である学校と異世界を行き来する構造になっています。異世界はRPGにおけるダンジョンに相当するもので、ブルリフ幻なら集合的無意識の世界である「コモン」、ブルリフTなら各キャラクター個人の記憶や心情に沿って形成された世界である「ココロトープ」ですね。
(ブルリフ幻の原種戦は物理世界で行われ、ブルリフRも同様にラスト以外では物理世界が戦場になっていますが。)

 ブルリフ幻の「コモン」は「集合的無意識」という設定ゆえか、開発リソースの問題ゆえか、良くも悪くも「ダンジョン」然としていて探索の楽しみは感じませんでした。
 しかしブルリフTの「ココロトープ」はそれぞれのキャラクター性に基づいてデザインされている為、どれも特徴的でバラエティに富んでおり、楽しかったです。全てに専用BGMがあるのも良いですね。
 詩帆ちゃん・伶那さん・勇希ちゃん・愛央ちゃんのものが特に好きです。
 詩帆ちゃんのココロトープは単純に「水没した路線や都市」というのが美麗で良かったなと。
 伶那さんのものはデザイン自体も好きですが、そこで展開されるイベント補正が結構ありますね。
 勇希ちゃんは「病院がダンジョンになっている」というインパクトのある第一層から始まり、第ニ層からは伶那さんのものと同じになる訳ですが、リソースの節約であることは分かった上で、物語上の理由もちゃんとあってそれが非常に尊いものでした。
 愛央ちゃんは、ここまで虚実入り交じった幻想的な風景を展開しておいて、急に現実的な風景を出してくるのが非常にワクワクしましたし、彼女が「普通ゆえに特別」であることを示唆しているようでグッと来ましたね。

■BGM

 BGMに定評があるガスト作品(アルトネリコから入った自分としてはその印象があります)ですが、今作もその良さは健在。
 各ココロトープのBGMはどれも素晴らしいものですし、戦闘BGMも最高です。
 特に後半の通常戦闘曲、世界システムに関係する敵専用の戦闘曲、ラスボス戦闘曲が良かったですね。
 あの曲を背景に戦闘を楽しめるだけでも本作を買う価値があると思います。

■ストーリー(メインプロット)

 ストーリー関連(メインプロット&サブプロット)は一番語りたい部分なので最後に回しました。
 冒頭にも警告を書きましたが、以降、改めてネタバレ注意。2周目のエンディングに関する話もしています。

 ストーリーを重視してゲームをプレイする私としては、やはり最も評価したいポイントはストーリー性です。
 キャラクターも世界も謎だらけの状況で、色んなことが少しずつ明らかになっていくのが本当に楽しかったし、ワクワクしながら先に進めていました。
 これは間違いなくブルリフRの影響もあるでしょう。
 ブルリフTで初めて「灰」の話が出てきた時には「ここで繋がったか!」と感動し、一気に惹き込まれました。(ブルリフRには第一話の時点で「灰」が降っていて、瑠夏ちゃんが不思議に思っている描写がちゃんとあります。)
 そこから「灰病」「原種」「閉ざされた学校とココロトープの真実」「システム」「世界の状況」と、順番にパズルのピースが与えられていき、全てが判明した上で「最期の決断」を迫られる訳です。
 なかなか攻めたストーリーにしたなぁと思いましたし、だからこそ面白かったし感動しました。
「過去作もあるシリーズものの世界を滅ぼす」って結構凄いことやっていますが、私はそういうのが大好物です。
 過去作に愛着が無い訳ではなくて、終末をテーマにした物語が好きなんですよね。
 そして、世界で最後に残った少女たちが来世の在り方を決めるという、最高のセカイ系展開も見せてくれます。まさしくこういうものを望んでいました。
(ノベルゲームとかではなく)RPGでこういうことをやってくれるのは本当に凄いです。人によっては「何の為に戦ってきたんだ」と感じてしまう展開でもありますからね。
 ラスボス戦における一連の演出は、今までプレイしたRPGの中で最も熱かったと感じています。
 ライザ2のラストがびっくりするくらい淡白だったので不安だったのですが、今作のガストはちゃんとラストで「全力」をぶつけさせてくれました。
 非プレイアブルキャラ達の「参戦」、伶那さんから始まり皆が愛央ちゃんに力を貸す演出、そして最後のインファイトバトル!
私はRPGのラストでイベント戦闘が発生するのが好きなのですが、これは本当に最高でした。号泣してしまってしばらく攻撃が出来ませんでした。

 ラスボス戦が終わった後の愛央ちゃんの最後の台詞は、彼女――そしてプレイヤー自身が世界から突き放されるような感じがして切なかったですが、だからこそ心に突き刺さるものがあって良い結末だったと思います。
 新たな世界では10人全員が、そして今作に出演しなかった他の皆も再び出会って友達に、或いは恋人になれたら良いなと。
(そこを実際には見せずに、受け手にハッピーエンドを信じさせるに留めるのがまたニクいですね。)

 とにかく「魔法少女もの」「セカイ系」「終末もの」これらのジャンルが大好きな自分としてはぶっ刺さるメインプロットでした。

■キャラクター・サブプロット

「メインプロットが良かった」という話をしましたが、その魅力を支える各キャラクターごとの物語も重要です。
 ここでは各キャラクターについて語ります。
(ストーリー面だけでなく戦闘面の話もします。)

■愛央ちゃん
 途中「ちょっとチャラくないか?」と思うこともありましたが、可愛くて強くて人間くささもある、本当に良い主人公でした。
 RPGの主人公としてはちょっと珍しいタイプかも知れませんね。これは女主人公+周りも女の子だからこそ成立するキャラ性だと思いました。男主人公であの性格だとちょっと厭味に感じてしまいそう……。
 彼女の物語としては「特別への憧れ」が軸となっていました。
「非日常に憧れる主人公」という在り方はジュヴナイルらしさがあって大好物です。ライザちゃんもそんな感じでしたが、愛央ちゃんの場合は周囲のキャラクターとの差異を通じ、より強調して描かれていました。
 主人公(=愛央ちゃんが言うところの特別な存在)に憧れたキャラクターが、元の才能を発揮する機会や成長を通じて本当に「主役」になっていくのって熱いですよね。
 私は愛央ちゃんに自己を投影してプレイしてはいなかったのですが、他の人物と少し違う立ち位置の存在として描かれているのは確かだと思います。
 作品中のキャラクターを画面越しに眺めるプレイヤーのような。或いは世界を外側から見守ることしか出来ない神のような。(本作にサージュ・コンチェルト作品のようなメタフィクションの要素はありませんが、そういった意識を感じる描かれ方がなされていました。)
 だからこそ最後の最後であの台詞が出てきたのでしょう。
 そして真のラストでは、喜びつつもどこか気まずそうな顔をして「壁を越えた」のが印象的でした。(あんな複雑な感情を思わせる表情をさせられるのも含め、今作は全体的に表情にかなり拘っています。) 
「ああ、これで彼女は『主人公』から『平凡な日常を尊いものとして感じながら生きていける普通の女の子』に戻れたんだな」と。
 あんまり心理描写みたいなものはガッツリしないガスト作品ですが、ブルリフTはその辺、本当に頑張っていたと思います。

 戦闘面においては、実質専用技であるコンボガードが光っていました。これだけでボス戦において常に使用する意義があるキャラクターです。
 クリティカルが得意で、フラグメントや施設で強化してやると攻撃面でも凄まじい強さに。
 ボスチャレンジ挑戦時にはクリティカル率を100%にした上でクリティカル時コンボ加算を積んでいました。インファイトバトル中、攻撃する度にコンボが4(ヒナちゃんの補助スキルが掛かると5)増え、クリティカルダメージ強化も相まってとんでもないバランスブレイカーと化していました。
 主人公だけあって攻守ともに最強のキャラクターかと。
 ちなみにスキル名の意味を調べたのですがよく分かりませんでした。何語なんだろう? 「ハーヴァマール」があるので北欧系っぽいのですが。

■こころちゃん
 ブルリフRにもちょっとだけ登場する、おっとりむちむち担当。
 でも何かと板を割ろうとしたりやたらと肝が据わっていたりと、妙に強そうな印象があって面白いギャップを感じました。
 個人的にはいわゆる正妻枠な印象。最初に愛央ちゃんと出会うのはこころちゃんですし、メインストーリー中でデートする機会もあったりします。
 何となく一番、慣れ親しんでて距離感が近い感じがします。
 詩帆ちゃんとは強い繋がりがあるのですが、意外と二人の絡みってそこまで描写が無かったり。結果として、わりと絡み相手に不足してる印象があるので、そういう意味でも愛央ちゃんと仲良く騒いでて欲しいです。

 戦闘面では状態異常アタッカー。
 状態異常自体は攻撃スキルのおまけとして付いてくる感じで強いのですが、やはり確率次第なのと、攻撃特化キャラなのが弱点でしょうか。
 2周目(MUSTDIE)の強敵戦でも出来るだけ使おうとしていたものの、比較的出せる機会が少なめでした。

■伶那さん
 
いや、まさかシリーズで一番と言ってもいいくらいに好きなキャラになるとは。
 はい。あえて一番を選ぶなら多分、伶那さんになると思います。(みんな好きなんですけどね。)
 最初の印象としては4人の中で最も趣味に引っかからなかったのですが、やはりストーリー中の活躍ぶりが印象深かったです。
 チャプター4で勇希ちゃんLOVEなことが判明する訳ですが、それが分かってからの乙女感、そして「ヒロインを救おうと足掻く主人公」みたいな熱さも見えてきてどんどん好きになっていきました。オタクなところとか怖がりなところとかもあって、とにかくキャラクターとして深堀りされているなと感じました。
 伶那勇希、超熱い百合カプでした。このイチャイチャ具合だけでも一つの作品として成立しているレベルです。
 チャプター4で描かれた離別。
 チャプター8で描かれた相互理解。
 チャプター9からの初々しさもあるイチャラブっぷり。
 そこからの、「新しい世界において再会出来ないかも知れない」という葛藤ですよ!!
 プレイヤーは、愛央ちゃんは、「次の世界でもまた二人は出会って恋人になるだろう」と祈って送り出す訳ですよ!!
 最高か!?
 完全に泣きゲーの主人公とメインヒロインの関係性なんだよね、この二人。


 さて、戦闘面についてですが、序盤は正直「使い難いな」と思っていました(使わなかった訳ではありませんが。)
 回復技は弱いし、攻撃力は低いし……。
 しかし《マエルストロム》を習得してからは一気にこのゲームの対強敵戦において最強キャラクターと化します。
 高難易度の強敵戦は愛央ちゃんと伶那さんはわりと確定枠かな、という気が。別の戦い方でも行けるかも知れませんが。
 ちなみにスキル名はフランス語で水や癒やしに関係する言葉が使われていますね。

 以前に伶那さんと勇希ちゃん(と愛央ちゃん)のファンアートを描いたので置いておきます。

 もう1枚。クールっぽい方が実は攻め気質なのって良いですよね。

■勇希ちゃん
 かわいい~~~~可愛い可愛い可愛い可愛い可愛い!!!!
 
表向きは癒やしマスコット枠みたいなキャラ性をしておきながら、高いメインヒロイン力を内包した子です。(と言っても、愛央ちゃん視点でのヒロインというよりは完全に伶那さん視点ですが。)
 どちらかというとストーリーでキャラを好きになるタイプなので、最初はそこまで強烈に可愛さに惹かれた訳ではないのですが、彼女もチャプター4から段々と愛おしくなってきて、チャプター8以降で完全にやられたキャラクターですね。2周目を遊んでいた時は最初からずっと可愛くて仕方がありませんでした。
 自分の命が短いことを知りながら明るく振る舞う姿とか、優しい嘘とか、チャプター8で明かされた真相とか、嘘を乗り越えて本当の気持ちを伝えあった終盤とか、完全に泣きゲーのメインヒロインなんですよね……。(二度目)
 
新世界でも伶那さんと一緒に幸せになって欲しいです。

■詩帆ちゃん
 
勇希ちゃんが泣きゲーのメインヒロインだとしたら、詩帆ちゃんは(ヒロインが複数居るタイプの)王道恋愛ものギャルゲーのメインヒロイン……といった雰囲気を感じました。
 ブルリフSでは最初から仲間になっているメインヒロイン枠な気がします。
 とにかく素直に可愛いキャラクター。世話焼きで、おそらく雫世界におけるクオリティ・オブ・ライフに最も貢献しているでしょう。
 いじめっ子をぶん殴るアグレッシブなところもありますが、そこも「オカンみが強い」と捉えることが出来ます。
 詩帆ちゃんはママ。
 あとリフレクター衣装が一番えっち。

 戦闘面においてもかなりお世話になりました。このゲームを買った大半のプレイヤーと愛央ちゃんも、きっとそうだと思います。
 強力な回復技、バステ解除、エーテル加速と、支援枠として必要なものが揃っています。がっつりヒーラーやってくれるヒーラーが彼女しか居ないんですよね。
 かといってヒーラーしか出来ないのかと言えばそんなことはなく、ダメージをしっかり出せるのでアタッカーもこなせます。いわゆる「勇者」的なスペックです。
 高難易度だと回復力も攻撃力も少々見劣りする部分はありますが、それでもアイテム抜きで継戦能力を確保する為に彼女に頼りがちでした。

ヒナちゃん
 我らが前前作主人公。
 かつて人類を救った主人公としてのオーラはしっかり出しつつも、今回の「主役」は飽くまで愛央ちゃんに譲ってた印象がありました。
 一番美味しかったポイントとしてはやはり、愛央ちゃんの対になるキャラクターとして描かれていた点ですね。
「特別に憧れる普通」と「普通が分からない特別」。この対比を通じて、ヒナちゃんというキャラクターの精神性がより深く掘り下げられていたのが良かったです。単なるファンサービスとしての出演ではありませんでした。
「わりと世間知らずで天然」という可愛げも、ブルリフ幻からそうだったのですが目立っていましたね。
 ユズライムとの束の間の再会も果たしましたし、後日譚として綺麗な出番を貰ったなと思います。
 物語が複雑化するので描写されなかったのは仕方ないのですが、ブルリフRSTの時空(=2周目の世界)で何をしていたのか言及が無かったのが惜しかった点かなと。
 ブルリフ幻のエンディングでも指輪をしていたので、2周目の世界でもリフレクターとして再覚醒し、AASAに所属してフラグメントの暴走を鎮める活動をしていたのでしょうか。気になるところです。

 戦闘面では、今作においては耐久性と攻撃力が低くて速度とコンボ稼ぎに特化しているという、かなり尖ったキャラクターに変化しています。軽戦士的な感じですね。
 とにかく柔らかいのと属性が偏っているのが弱点ですが、速さとコンボによって見た目以上のダメージを出せるのが強み。
 高難易度ではどちらかといえばサポーターとして運用することが多かったです。このタイプの戦闘システムにおいて速度は常に正義なので、加速系のサポートオーダーが頼りになりました。
 ちなみにスキル名はフランス語で、星座の名前が使われていますね。モーションや効果は忘れましたが、前作で覚えていたスキル名がそのまま使われています。

■きららちゃん

 癒やし系マスコット枠。
 クールキャラかと思いきや結構ノリが良くて、愛央ちゃんのオタク話にも付き合える(むしろ彼女が愛央ちゃんを振り回す)、良い妹分でした。
 例の如く境遇は重いのですが。
 親に利用されるあの感じ、ブルリフRの紫乃ちゃんを思い出します。やはり愚かな想いは管理しなければ……。
 冗談はさておき、きららちゃんと親の「その後」は詳しくは描かれていませんが、きっと救いがあったのだろうなと。
 彼女もブルリフSの登場人物なので、より詳細なことはそちらで掘り下げられると思います。

■陽桜莉ちゃん
 前作主人公。髪がちょっと伸びた為か、やたら可愛く見えました。
 愛央ちゃんやヒナちゃんとはまた違うタイプの主人公ですね。ひたすら前向きで直情型。本来はわりと闇というか苦悩を抱えている人物なのですが、そこはブルリフRで既に乗り越えてきているので、今作では純粋な性格がプッシュされていた印象です。
 今作における重要な役割は、ブルリフRで掘り下げられなかった行方不明になった後の母親に関する問題の解決と、詩ちゃんとの和解ですね。
 シリーズファンとしては他のブルリフRキャラにも触れて欲しかったのですが、そうすると関連作品に触れていることをプレイヤーに求めてしまうので、あえて言及しなかったのでしょう。
 その辺はまあ仕方ないのかなと。

 戦闘面では「重戦士」といった雰囲気で、充分な耐久力と高い素の攻撃力を持ちます。RPGでよく居る、ゴツいおっさんみたいな性能です。(※美少女)
 自ら敵に弱点を作ることが出来、弱点を突くことで体力回復が出来るのでなかなか持久力もあります。
 何かと高スペックなキャラクターで、流石は前作主人公と言ったところ。
 ただ、「素直に戦うと強い」みたいなキャラクターでもあるので、様々な無法を解禁した2周目の高難易度戦では少々出しにくかったです。
 実はコンボガード技《ソーレシンティリオ》を持っているのですが、ギアが4以上・ep2000・モーションが長いという3重苦を背負っており、肝心のコンボガードとしては殆ど成立していません。
 ちなみにスキル名の意味は少ししか分からなかったのですが、イタリア語で光や太陽に関連するものが多いのかな?という感じです。

■美弦姉
 前前前作(※そんなものはない)の主人公。前作の悪役。今作では癒やしお姉ちゃん枠。
 今作では基本的に陽桜莉とセットな感じで、メインストーリー内において強烈な活躍をした印象は薄かったかなと。
 でもシスコンで可愛くて癒やされます。愛央ちゃんの前では姉みを発揮し、また妹を増やしてしまいます。
 ここに仁菜ちゃんと紫乃ちゃんも加わって、お姉ちゃんを巡る争いをして欲しいですね。百さんは正妻の余裕を見せそうです。
 ブルリフRで受ける印象とはちょっと違った感じですが、たぶん闇堕ちする前の、本来のお姉ちゃんってこうなんだと思います。

 なお、TLvを10まで上げると、さらっと結構重要なことが明かされます。ブルリフRのラストにおいてフラグメントアタックをした彼女がどうなったのかは謎でしたが、ちゃんと答えがありました。そんな状態になってたのね、お姉ちゃん……。
 今作において陽桜莉とセットな印象が強いのも、あの設定ゆえなのかなと。

■詩ちゃん
 ブルリフシリーズ一の問題児であり、今作にも登場すると分かった時は話題になっていましたね。
 結論から言うと「詩ちゃんマジメインヒロイン」でした。(このゲーム、ヒロイン多すぎか?)
 愛央ちゃん目線でのメインヒロイン枠としては、こころちゃんか詩ちゃんが強いな~という印象です。
 光堕ちする可能性は勿論、事前に考えてはいた訳だけれど、まさかこんなに大事に描かれるとは。ココロトープも一人だけ4層ありますし。
 でもブルリフってこういう作品なので納得感はあります。このシリーズは「ヤバい奴なので排除して終わり」みたいな風にはしないとは思いました。

 記憶を失い、痛みによって覚醒する前に戻った詩ちゃんは、「主人公とのふれ合いによって感情を理解していく情緒薄い系ヒロイン」そのものでした。
 それでもリフレクターの少女達(そしてブルリフRを観たプレイヤー)は「マゾっ子ウタちゃん」を知っているので警戒する訳ですが、愛央ちゃんは知らないので、持ち前の性格もあってすぐに彼女に歩み寄ることが出来ました。
 そうして最終的には皆に馴染み、記憶を取り戻した上で陽桜莉ちゃんと和解することも出来ました。
 これはブルリフR単体じゃ出来なかったことだなと。
 異世界で記憶を失って、愛央ちゃんと出会えたからこそ成立した展開なのだと思います。
 陽桜莉ちゃん側も合わせて、ブルリフRでやり残した宿題を片付ける後日譚として完璧なので、アニメを観た方はぜひ本作も遊んで欲しいですね。

■問題点

 ひたすらブルリフTを褒めまくってるので、いちおう問題点も書いておきます。
 バグが多い!!! とにかく多い!!!
 
私自身もゲームを作る人なので細かいバグは笑って許せますが、ちょっとヤバいのでは……と思うものも。
 個人的に一番許せなかったのはスタッフロールが表示されないバグ。何をしたらそうなるんだ。
 ストーリーを重視しているプレイヤーなので、せっかくの感動に水を差すようなバグは本当に悪印象を抱いてしまいます。
 私はガスト作品にバグが多いイメージは特に持っていなかったのですが、今作はどうしたんでしょうか?
 良いゲームなだけに勿体無いです。

■最後に

 長々と取り留めのない感想を書いてしまいましたが、読んで下さった方はありがとうございます。
 ブルリフTは(バグの多さを除けば)今までのガスト作品で一番好きなゲームなので、色んな人に遊んで欲しいな、と思います。
 ブルリフSも楽しみにしています。


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