『BLUE REFLECTION TIE/帝』感想・紹介(ネタバレ無し)

 noteへの投稿は初となります、anubisと申します。
 今回は、「アトリエシリーズ」で知られるガストブランドの最新作
『BLUE REFLECTION TIE/帝』(以下、「ブルリフT」)を、前知識の無い方向けに紹介すべく筆を執りました。何かしら参考になれば幸いです。
 なお、結論を先に述べてしまうと「ブルリフTは神ゲー!!」といった感じです。(2度のクリア+プラチナトロフィー取得済み)

■どんな作品?

 対応機種はPS4/Nintendo Switch/PC(Steam)。
 ゲームとしてのジャンルは、コマンド戦闘RPG。
 物語や設定面のジャンルに関して言うのであれば、
「魔法少女もの×セカイ系学園ジュヴナイル」といった具合でしょうか。

 主人公の星崎愛央ほしざき・あおは、非日常に憧れる平凡な女子高生。
 なんてことない日常を送っていた彼女はある日、海の中にぽつんと学校だけが浮かんでいる異世界に飛ばされてしまいます。
 そこで出会ったのは、他に誰も居ないこの世界で自給自足の暮らしをしている、記憶を失った三人の少女。
 そんな彼女たち、そして新たにやってくる少女たちも交えて異世界という非日常で日常を過ごしながら、記憶を取り戻して世界の真実を知っていく――というのが本作のあらすじとなります。

 記憶は、RPGにおける「ダンジョン」に相当するものである《ココロトープ》と呼ばれる学校の傍に出現する異空間を探索することで復元することが出来ますが、そこにはモンスターが出現します。
 しかし、少女たちは(全員ではありませんが)《リフレクター》と呼ばれる、想いを力に変える魔法少女に変身することが出来るので、その力を使ってモンスターを撃退していく――といった具合です。

 ここまでの説明でも分かるように、本作には基本的に少女しか登場しません。
 
回想には男性や女性の脇役・モブキャラクターも登場しますが、メインの登場人物は、余所者が誰も居ない異世界の学校にやって来て共同生活を送ることになる少女たちだけです。
 その美しさこそが本作のコンセプトであり、魅力として最も前面に押し出されている要素と言えるでしょう。
 端的に言うと、いわゆる「百合」的な作風である訳です。
 魔法少女×百合。この時点で、刺さる人には充分でしょうが、まだまだ見所を紹介していきます。

■可愛く、切なく、熱いストーリー

 RPGを楽しむにあたってストーリーを最も重要視する私としては、この点を特に評価したいと感じました。

 先に述べた通り、愛央は記憶を失った少女達と共に学校で暮らしながら、時折《ココロトープ》に出かけては《リフレクター》の力でモンスターを退けつつ、記憶の復元を試みたり、或いは単に食材を拾い集めたりします。
 彼女たちの自給自足の日々は良い意味で生活感に溢れており、笑ったり癒やされたり出来るものとなっています。登場人物が全員美少女であるタイプの日常ものアニメをイメージして頂ければ分かりやすいかも知れません。
 本作には「デート」というシステムがあり、プレイヤーは(愛央を操作して)他の少女に声を掛けることで、共に学校内を散策するサブイベントを発生させられることがあります。仲が深まれば手を繋いだりなんかも……!?
 そう、まさに百合系日常ものアニメですね!

 しかし、当然ながらそれで終わるゲームではありません。
 少女達は皆、個人的な傷や葛藤を抱えており、記憶を取り戻すことでそれらと向き合うことになっていきます。
 同時に、個々人の記憶をヒントにして世界の真相も段階的に明らかになっていき、それにつれて物語は加速度的にシリアスな方向に突き進んでいきます。
「ごく少数の人物」と「世界」で物語が構成されている様は、いわゆる
「セカイ系」を思わせる雰囲気です。私は元々この手のジャンルが好きなのですが、それを差し置いても、序盤から少しずつ情報を提示されるのが楽しく、どんどん先に進めたくなってしまいます。

 ざっくり言うとメインストーリーがシリアス寄り、「デート」などのサブイベントがコメディ寄り――という構成になっていますが、これらは決して要素として散らかっておらず、むしろ相乗効果を発揮して感動をもたらしてくれます。
 なんてことない日常を重ねてきたからこそシリアスなメインストーリーが「重み」を持ち、シリアスな物語だからこそなんてことない日常が尊いものへと昇華されているのです。
「特別」を求めた平凡な少女である愛央が、物語の果てに何を得たのか、是非確かめてみて下さい。

■美麗なフィールド

「ブルリフT」のフィールドは主に、拠点となる学校と、ダンジョンである《ココロトープ》の二つで構成されています。
 
「海に浮かぶ、少女たちの生活感に溢れた夏の学校」も美しいものですが、本作の探索面の魅力は《ココロトープ》に在ると言えるでしょう。
 《ココロトープ》はキャラクターと対応しており、そのキャラクターの過去や心情を描いたようなデザインとなっています。
 これらは単にRPG的都合として存在しているだけのダンジョンではなく、フィールドそのものがキャラクター性の描写と直結しているのです。
「水没した都市」「壁に立ち並ぶビル群」など、虚実入り交じった幻想的かつ終末的な趣もある風景そのものにも魅了されます。
 本作にはキャラクターを好きに配置し、ポーズを取らせて撮影出来る「フォトモード」というシステムがあるのですが、これらのフォトジェニックなフィールドと相まってなかなか遊び甲斐があります。

■爽快な戦闘システム

「ブルリフT」はRPGである以上、戦闘面も評価するにあたって重要な項目となります。
 結論から言うと、本作の戦闘システムは独自性が高くて非常に面白く、完成度が高いものだと感じました。
 ベースとしては半リアルタイムのタイムライン制。
 戦闘メンバーは3人で、中央に配置されているキャラクターは常に手動で操作しますが、左右のキャラクターは自動で行動します。
(但し、戦闘中いつでも完全手動操作への切り替えが可能ですし、自動行動中も行動選択がなされるより早く手動入力を行えば自ら指示が出せます。)
 各キャラクターが出来ることは「スキルの使用」「アイテムの使用」の二つと、非常にシンプルです。
 敵も味方も基本的に互いのアクションを待たずに自らのアクションを実行しますが、スキルやアイテムの選択ウィンドウを開いている間は時間が止まる為、ゆっくり考えることが出来ます。
 この「必要な時だけ自分で操作する」という仕様と(一部の大技以外の)ウェイトが発生しないことにより、非常にテンポの良いバトルが展開されます。

 リソースの種類は「HP」「エーテル(行動力に相当するもの)」「ギア(後述)」の三つのみであり、スキルは時間経過で増えていくエーテルを支払って任意のタイミングで発動します。(つまり「ターン」の概念がありません。)
 特徴的なのが、スキルを使用する度にエーテルの回復速度が増えていく点です。要するに行動する度に少しずつ素早くなっていきます
 この速度が一定の値を超える度に「ギア」が増えていき、ギアが増えるに従ってスキルの構成や性能が変化します。
 つまり戦闘において時間ごとの変化が形成されているという訳です。

 もう一つの特徴的なシステムとしては「インファイトバトル」が挙げられます。これは中ボス戦やボス戦において特定の条件を満たすと発生するもので、味方キャラクターのうちの一人でボスに対して接近戦を挑むというものです。
 この状態になると一定時間、戦闘システムは一変し、完全なリアルタイムと化します。敵が行動しない合間を縫って攻撃を叩き込んだり、タイミングを合わせて敵の攻撃を回避したりします。
 コマンド戦闘RPGにおいてちょっとしたアクション性が挟まるというのが面白いポイントで、戦術的価値も非常に大きいシステムとなっています。
(特に高難易度ではこの要素を使いこなすことが必須と言えるでしょう。)

 なお、「キャラクター・ストーリー重視」というコンセプトになっているのか、戦闘難易度自体はかなり易しめです。
 独特な要素が多いとはいえ、RPGに不慣れで純粋にストーリーだけ楽しみたい方も安心してプレイ出来るでしょう。
 逆に、RPGでゴリゴリに戦闘をしたい方は、一度クリアして最高難易度が解放されるまでは満足出来ないかも知れません。その場合は適度に縛りを設けるのが良いでしょう。
 ちなみに私は一周目は中盤以降、《フラグメント》無装備縛りで進めていました。《フラグメント》とは通常のRPGにおける「装備」に相当するものですが、設定的には想いの欠片であり「《リフレクター》が強い理由」とも言える概念なので、そこを使わないというのはストーリー的には何だか変な話ですが。

■関連作品の紹介

 さて。あえてここまで触れませんでしたが、実は「ブルリフT」、
「BLUE REFLECTION」という一連のシリーズのうちの最新作となっております。つまり続編です。過去作のキャラクターも登場します。
 しかし「じゃあ事前に全部触れてないと遊べないのか」と言えばそんなことはなく、クリアした感想としては、いきなり今作から始めても充分に楽しむことが出来るように作られている内容だと感じました。
 物語は愛央という、平凡な生活をしていて他のキャラクターとの繋がりもなかった主人公の視点で描かれていきますし、他のキャラクターも記憶喪失になった状態からスタートします。
 今作の物語と関連性が薄い要素の多くはあえて語られていません。
 それらの点から、事前知識が無くてもすんなり物語に入れると思います。
 何なら、シリーズファンとしてはサービスが少し物足りないと感じてしまうくらい、新規層を意識して作られています。
 どうか遠慮なく遊んでみて下さい。

 とはいえ、関連作品の方に先に触れておくと、より物語に入り込みやすいのは間違いありませんので紹介しておきます。

 原点となる一作目がこちら
『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』
 PS4/PSVita/PC向けRPG作品です。
 私は発売してからわりとすぐに百合的な空気感に惹かれて購入し、クリアした覚えがあります。
(実際のところは、百合成分自体は後の作品よりマイルドです。一人だけ同性愛者であることが仄めかされている少女も居ますが、その要素はサブイベント上で描かれるに留まり、あまり掘り下げられていません。)

 主人公は「ブルリフT」にも登場する白井日菜子しらい・ひなこという女子高生。バレエに人生を捧げていた天才児であった彼女ですが、怪我によって引退を余儀なくされ、アイデンティティを喪失してしまいます。
 そんな、どこか鬱屈した状態の彼女が、「司城夕月しじょう・ゆづき」及び「司城来夢しじょう・らいむ」という謎の姉妹によって《リフレクター》の力を与えられたところから物語が始まります。
 日菜子は「《リフレクター》として戦い、世界の敵たる巨大生物《原種》を倒し尽くせば願いが叶う」と聞き、怪我を治す為に、そして日常を守る為に戦いを繰り返していくのでした――。

 一作目は、シリーズ全体のテーマである「学園を舞台とした、少女達の青春」という要素を最も強く押し出した作品となっています。
 設定やキャラクターこそ後の作品にも引き継がれていますが、後の作品で強く見られるセカイ系や魔法少女もの的コンテキストは、物語を占める割合としてはそこまで大きくありません。物語は現実の学校を舞台として展開されることが多く、その内容もローファンタジーというよりは純粋に女子高生らしい苦悩を描いたものが多めです。
 対応機種に「PSVita」がある点で察せられるかも知れませんが、ちょっと昔の作品です。その為、小さく纏まり過ぎているというか、荒削り感は否めません。
 物語の軸が上記のあらすじに書いた3人に集中しており、その分、他のキャラクターの掘り下げや関係性は後の作品と比べるとあっさり気味になっています。(とはいえ「そこが良い」と思われる方も居るでしょう。)
 また、戦闘システムは良くも悪くもオーソドックスかつ、戦闘メンバーがその3人で固定なので「ブルリフT」のように編成の楽しみがありません。(そもそも、この3人以外に《リフレクター》は登場しません。)
 それでも、本作をプレイしていると世界観やキャラクターにより強い思い入れが出来る筈なので、余裕があれば是非こちらもプレイして欲しいです。
 なお、私は本作の時点では「よく纏まった良作」くらいの感想だったのですが、後の二作品でシリーズ全体に強い思い入れを抱くようになりました。今では上記のページで流れているシリーズのメインテーマを聴いただけで涙腺が緩む程です。
 続編が発表された時は「あれ以上何をするんだ」という思いでしたが、本当に続編に恵まれたと思います。

 そして二作目
『BLUE REFLECTION RAY/澪』
 こちらは2クール構成のアニメ作品です。

 主人公は日菜子と同じく「ブルリフT」にも登場している平原陽桜莉ひらはら・ひおりと、こちらは「ブルリフT」に登場していませんが羽成瑠夏はなり・るか
 快活で積極的に人助けが出来る陽桜莉と、人の痛みに気付ける優しさを持っているものの内気でコミュニケーション下手な瑠夏は、同じ女子寮のルームメイトとして出会い、対照的な性格ながらも交友を持ち始めます。
 彼女たちはある日、同じ女子高の生徒、白樺都しらかば・みやこが、謎の魔法少女(=敵の《リフレクター》)に襲われている場面に出くわします。都を救おうとした陽桜莉が《リフレクター》として覚醒し、かくして、
「《リフレクター》対《リフレクター》」の戦いの物語が始まるのでした。

 内容としては一作目をそのままアニメ化した訳ではなく、メインキャラクターを総入れ替えした後日譚です。(正確には純粋な後日譚ではないのですが分かりやすさの為にこう書いておきます)
 一作目が「学校を守る3人の魔法少女と怪物の戦い」を描いていたのに対し、こちらは終始「魔法少女同士の戦い」を描いています。
 本シリーズにおける魔法少女《リフレクター》は「人間の想いに干渉し、苦悩が限界に達した時に発生する暴走を抑えたり、他者と共感して想いの力を借りたり、或いは想いそのものを抽出したりする」という力を持ちます。
 こちらのアニメ作品は、”そんな力をどう扱うか”という点を深く掘り下げた内容となっています。
 一作目とかなり方向性が違うので困惑した原作ファンも多そうですが……私は大好物でした!!
 
本作は《リフレクター》同士の対人戦を描く都合上、各キャラクターの人物像や価値観が繊細かつ詳細に描かれています。私はそうした思想のぶつかり合いやその果ての和解が大好きなので、この作品を大いに楽しむことが出来ました。
 陽桜莉と瑠夏の主人公2人が描き出す相互理解と友情が特に好みでした。
(それだけに「ブルリフT」で瑠夏が登場しないのが残念と言えば残念でしたが。)
 私は「ブルリフT」発表時から買うつもりではあったのですが、本作のお陰で「ブルリフT」を遊ぶにあたってのモチベーションが非常に高まりました。
 人を選ぶかも知れませんが、とても良い作品です。

 そして、こちらの作品の放送終了後に発売されたのが三作目である
「ブルリフT」となります。
 なお、劇中の時系列としては発売/放送順と同じく
『BLUE REFLECTION 幻に舞う少女の剣』→
『BLUE REFLECTION RAY/澪』→
「ブルリフT」
 となっています。
 ただ、各作品間で状況や舞台が大きく変化しているので、前述した通り事前に履修しておく必要は無いと思われます。シリーズのどこから始めても、充分に楽しめるのかなと。
 状況設定だけでなく、物語の方向性自体が各作品ごとに幾らか異なるのですが、個人的にはそこが良かったポイントです。
 3つの作品を通して、世界観や《リフレクター》という存在を違う角度から掘り下げているので、シリーズ全体の「立体感」が演出されているのです。続編として完全に同じ構造や趣旨の作品を出していたら、こうはならなかったでしょう。

■結局「ブルリフT」はどんな人にお勧め?

・百合が好きな人
・学園ジュヴナイルが好きな人
・魔法少女ものが好きな人
・セカイ系が好きな人
・キャラが可愛いJRPGがやりたい人
・関連作品のうちのどちらかに触れた人
・ガストブランドのファン(本作は様々なガスト作品の要素を取り入れつつ進化させた集大成となっています。)

 いずれかに当てはまるなら遊んでみて損はないと思います。
 ちなみに私は全てに当て嵌まります。


 本記事は以上です。
 どの作品からでも良いので、ぜひ『BLUE REFLECTION』の世界に入ってみてはいかがでしょうか。

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