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オランダの花とは?

*施設園芸の起源と発展と現代の問題点
約2000年前、ローマ時代の経済成長に起源を発すると考えられます。また、中世時代の僧侶や十字軍の兵士により外国産の野菜や果樹が伝えられました。中世の生活様式は農業と酪農を組み合わせたもので、野菜のクズを餌にし、家畜の排泄物を堆肥とした自然循環型農業でした。温室栽培は約150年前に始まり、作物を旬より早く作ることを可能にし、早期出荷することで、高値で販売することにつながりました。1950年代になって木組みの本格的な大型ガラス温室が建てられました。1970年代には、温室内環境をコンピューター制御し、病害対策の研究を進め、効率的な生産が行われるようになりました。大量生産時代に入ることになり規模拡大が行われました。しかし、そこで出てきた問題が環境(地下水汚染、地球温暖化)で、大量生産による効率化の限界を知ることになりました。
オランダが養液栽培を進めている理由は、環境に対しては、土壌殺菌剤や除草剤を必要とせず、排液回収により、養分流出を防ぐことが出来るため、天敵利用の方向を打ち出しているオランダにとっては、農薬使用を抑えることはこの面からも必要になっています。また、人工的に管理できることにより、連作障害の回避、単位面積当たりの収穫の増大、経営規模の拡大化、農作業の労働の軽減化、周年栽培の実現などを可能にしているが、新たな問題として、人工土(ロックウール)自体のゴミ問題を解決しなければならなくなってきています。ロックウールをオランダでは、家庭園芸用の園芸用土への再利用が図られています。

*花卉産業の方向性
1.オランダは世界の花の取引物流センターとなり、外国の花の流れを管理することへ戦略を変更しています。理由は国内の作付面積の減少があり、又、生産は気候が生産に合う労働供給豊富でコストの低い生産地へシフトする傾向があることによります。南米や中東、アフリカ・アジアなどに苗や技術を提供し、その物流や生産を、ノウハウに基づき、オランダが世界の花を管理しようと努めています。

2.国内生産は付加価値の高い花への転向
環境問題を大切に考えるオランダは近年「地球に負担をかけない花」を目指しています。世界一の環境保護国ドイツが一番大切な得意先ということもありますが、農業生産物の他国との競争は激しくなっています。そこで差別化として、浮上してきたのが、「低農薬のオランダの花」で、天敵農業へのシフトです。天敵農業により、国内へのアピールはもとより、国外へもアピール可能になり、そのブランド力はアップしています。

*農業における環境問題(環境保全型農業へ)
1:排液リサイクル
農業排液が飲料水である地下水の硝酸態チッソ汚染を考え、法律により規制し、罰金制度もあります。オランダは近年、養液栽培(人工土に液肥をコンピューター管理で与える方法)が多く、ここでの排液の回収を義務づけ、再処理して、循環させるシステムを導入して、成果を上げています。   

2:減農薬
 以前、オランダは日本と並び、単位面積当たりの農薬使用量は世界のトップクラスでした。80年代オランダの農業生産物の最大の輸出国であるドイツから、農薬汚染の指摘があり、農薬を極力使わない方向に転換を迫られました。この解決策としては、天敵による生物農薬への切り替えが答えとして出され、現在その方向で進んでいます。

3:CO2削減とエネルギーの効率利用

 オランダは天然ガスの利用が盛んですが、温室農業で国内総消費量の10%程度を使用し、生産コストの15~25%はエネルギー代となっています。「トータルエネルギーシステム」を採用して、天然ガスを使用し、発電タービンを回転させ発電し、電照、熱殺菌、動力源等に使用し、その際発生するCO2は収量を高めるための温室内の炭酸ガス使用に、またタービンの冷却により生じた温湯は温室内の夜間暖房や湿度調節、蒸気による土壌消毒に活用するもので、約20%のエネルギー削減が行われています。

4:天敵農業について
1990年に「作物保護の長期計画」がつくられ、農薬使用量を95年に50%、2000年には65%削減するプランを打ち出し、実現しました。その方法としては、化学農薬を天敵にシフトすることで、化学農薬の削減と共に、競合関係にある、他国の農産物との差別化に役立ち、本来人間の目指すべき「人間の為の生産物」に近づく一つの方法です。オランダの施設園芸では、天敵利用が進んでいるため、天敵に影響を与える農薬は生産者が購入しないようになってきています。農薬会社も天敵に対する情報開示を求められ、農薬会社もそのシステムを確立しています。

天敵とは?
温室内の害虫を天敵で退治する目的の生物で「生物農薬」と呼ばれ、ハチ、ダニ、ハエ、カメムシ等の仲間です。使用されるようになった理由は、自然の摂理を利用した合理的なシステムで、現代の流れに添い、化学合成農薬に頼る現代の農業の反省と消費者サイドの化学合成農薬への嫌悪からです。生産者の健康への配慮と、化学合成農薬を多用使用することで、害虫に抵抗性が出来てしまい、それによる効果減少の根本的解決への要求もあります。オランダでは、国を挙げて推奨していますが、日本では天敵昆虫も農薬取締法において、農薬とみなされ、農林水産大臣の登録を受けなければ、製造及び輸入してはならないとされているので、天敵利用は遅れています。日本に合う天敵農業の研究を進めると共に、天敵農業の必要性という世論の盛り上がりと、「人間のために何が必要か」という基本的な考え方についてのコンセンサスが必要だと思います。


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