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*オランダ人にとって良い花とは?(オランダ人の国民性から考える農薬使用)

オランダ人を俗っぽく言うと「小さいことには多少目をつぶって本筋を通す」という国民性と云えそうです。いい意味で相手を認め適度のコンセンサスを達成し社会をコントロールするシステムに根ざしているようです。拓殖大学国際学部元教授でオランダの社会制度の研究をされている長坂寿久先生のお話では、「オランダは水を管理し、制御することで国を作ってきた。この治水の歴史が、経済、社会、文化の基盤をなしている。オランダでは3分の2の人々が今でも水面下の土地に住んでいる。ということで、水と戦ったという歴史の国で、そのことから人間の手の及ばないことに折り合って生きてきたので、「折り合う伝統」と云いますか「よい意味でのコンセンサス社会」が出来、今日でもその伝統的な考え方で、ワークシェアリング、安楽死、麻薬、売春などの問題もオランダ的に乗り切っているようです。


オランダの花についても、このような良い意味でのコンセンサスがあることに、長坂先生のお話を伺っている時に気づきました。それはオランダの最高級の90センチの特級品のバラで、思い当たることがあったのですが、特級品のバラなのに、葉っぱが病気にやられていることが頻繁にあるのです。

完璧主義で頭が堅く融通が利かない日本の世の中では、このような特級品は考えられないことです。日本の市場や一般の花屋さんの間では、病気の跡が葉にあるだけでB級品になってしまいます。

オランダでは天敵(生物農薬)を利用したヨーロッパ基準の低農薬栽培が行われているので、極端な消毒をしていないのです。一般に、バラは殺虫剤と殺菌剤を大量に使う花です。よく生産者の間では農薬のことはバラの生産者に聞けと言われています。多少葉が痛んでいても、確かに花自体は綺麗で問題が無いのですから、花という視点で言えば完全な特級品です。

葉に関しては、ヨーロッパのアレンジメントでは確かに色々な葉物を豊富に使いますので、そのメインの花の葉にこだわる必要がないのかもしれません。日本は生け花の伝統で同じ花の葉を大切に考える考え方が影響しているのか、そういう考え方の違いが、こんな所にもあらわれている訳です。

花に対する考え方ですが、農薬をたくさん使って完璧な葉っぱつきのバラをつくって地球に負担をかけるか、葉っぱは花でないのだから、あまり神経質にならずに折り合うかは、そのあたりの選択基準と選択までの情報や知識の問題ですね。どちらが良いか悪いかの判断は人によって様々でしょうが、私はオランダ人のこういう地球に負担をかけると、結局高い物につくという「無駄嫌い」の考え方を支持します。


考え方の違いの例をご紹介します。オランダの輸出業者さんから私たちが、花の輸入を始めた頃、彼らを戸惑わせたことがありました。それはアルストロメリアという花を発注する時に、品種のことはほとんど言わず、とにかく葉っぱの良いものを輸出して欲しいと発注したので、彼らはだいぶ困惑したのでした。椎茸を八百屋に買いに行って、カサはどうでもいいから軸の良いものをくれと言っているようなものだったに違いありません。


またチューリップの球根にしても、日本では、丁寧に手掘りすることが多いのですが、オランダは機械堀りで一気にやってしまいますので、表皮がとれていたり、表面に傷があっても気にしません。問題は球根の中身で、外側は中身を保護するものだからです。オランダ人はとにかく、無駄が大嫌いなようです。


「節約する女房は最高の貯金箱」という諺があるほどのオランダ人の無駄嫌いといえば、以前こんな経験をしました。

オランダ人の友人とハウステンボスの仕事からの帰りのことです。温泉好きのそのオランダ人と一緒に嬉野温泉に行くことになり、最寄り駅から、タクシーで嬉野温泉へ向かいました。

彼は日本語を習っていて、女が喜ぶと書いてウレシノと読むことが妙に気に入って、きっと綺麗なお姉さんがたくさんいるに違いないと、期待に胸を弾ませていました。事実その町は、人口1万人で芸者さんが2百人、つまり人口の2%が芸者さんという日本でも特別な地域でした。

目的地に行く途中で、私たちの乗ったタクシーが農作業帰りの軽トラックと接触事故を起してしまいました。タクシーのドライバーと農家のおじさんが、つかみ合いの喧嘩を始めてしまいました。全くトーンが衰えず2~3分経った時、そのオランダ人が私に強い語調で、かつまた、心配そうに英語で言いました。「早く、メーターを止めるように日本語で行ってくれませんか。」と・・・。


彼の主張は至極当然なのですが、あの殴り合いが始まりそうな大喧嘩の真只中で、どうやって「メーターを早く止めろ!僕らを早く嬉野に連れていけ!!」と言えるのだと日本人的には思ったものでした。


そんな彼も半年も経たない内に、日本人のガールフレンドが出来て、すっかりオネー言葉を習得し、大航海時代のDNAの適応の良さを私に見せつけたのですが、この後もこの手のすれ違いが多く、なかなか日本の女性とは長続きしなかったようです。


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