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*ネアンデルタール人の遺言 ~ホモフロリエンス的な生き方を求めて~

この地球上で「最初に花を使ったのは誰か?」花の仕事をしている者にはどうしても気にかかる問題です。現在、歴史的(人類学的)に最も信頼できる証拠が残った話としては、ネアンデルタール人が埋葬の時に花を飾ったという発見が現在の所、最古とされています。

「シャ二ダール遺跡:花を愛した人(The first flower people)」を著したコロンビア大学のソレツキ教授のグループは、イラクの山岳地帯の西ザクロ地方にある約5万年前のネアンデルタール人の遺跡を発掘し、9体の人骨を発見しました。

同行の植物学者が調査したところ、その中にシャ二ダールⅣ号と呼ばれる人骨の周りの土に、キク科、ユリ科、マオウ科などの花粉がたくさん検出されました。遺体の周りから大量にそれらが検出されたということは、その遺体が花と共に埋葬されたことを意味し、これらの花は小さな灌木の枝を絡み合わせて、花輪(フラワーデザイン的に言えばクリスマスリースのようなもの)のような形にして供えられたことが分かったのでした。


別の人骨シャ二ダールⅠ号は高齢の男性で、上腕骨に異常があり、右手が不自由であったと想像出来たのですが、彼は若い時不自由な身体になっていたにもかかわらず、平均寿命を上回って生きていたらしいのです。彼の生きた時代は氷期でもあり、狩猟採集生活を送っていた彼らは、現代に比べれば、はるかに厳しい時代に生きていました。ハンディキャップを持った彼を家族や友人が助けていたので、彼は生き延びることが出来たのです。

「愛」がそこにはあり「優しさ」がそこにあったのです。「命の尊さ」を知り、助け合うことで命を伸ばしていたことに違いありません。埋葬もしていたということは、宗教的な意識、人間的な世界観の「芽生え」があったし原始的とはいえ、確かな社会生活を営み、純粋なヒトたちであったことでしょう。確かにその頃は、社会も人間関係も規模の小さいものだったに違いないのですが、この「人間らしさ」は現代社会と比べても、それ以下では決してないと思えるのです。


私はここで彼らに敬意を表し、彼らをホモ・フロリエンス(花を飾った人)と名付けたいと思います。フロリはギリシャの花の神「フローラ」からとりました。
亡くなった人を悼み、ハンディキャップのある人を助け、そういう「人間らしい」社会の幕開けと同時に、彼ら初期のヒトが「愛と優しさ」を獲得し、時を同じくして花を飾るという行為が同時に行われたということは、単なる偶然なのでしょうか?「愛と優しさ」を獲得した先人が花を飾る行為こそ、彼らに最もふさわしく厳粛な行為であったし、花を飾るということは「愛と優しさ」の表現であったと思われます。先人たちが「愛と優しさを表現した」と意識しないのであれば「愛と優しさの副産物」に違いないのです。「人間らしさ」の証(あかし)はここからはじまり、花を飾る行為は極めてヒューマニックな行為に私には思えます。
ネアンデルタール人の遺跡はヨーロッパ・中東・西アジア・北アフリカに広がっています。戦火の上がったイラクにもイスラエルにも見られます。特に「花を飾るヒト」であったシャニダール人の遺跡はイラクにあります。「愛と優しさのヒト」ネアンデルタール人はこの遺跡の発見で、その本当の姿を現しました。イラクでの発見というのは、単なる偶然ではないし、彼らが何万年もの間生きてきたイラクで、戦火が燃え上がってしまったのは、あまりにも悲し過ぎるのではないでしょうか?
イスラエルからは、オランダ経由で花が輸出されています。私はイラクから花が輸出され、日本にやってくる日を待っています。イラクの悲しい思いをした人々には、何よりも平和の象徴である「お花」を作ってほしいのです!


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