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take_futa
エッセイ 〜普通のネギ〜
私が飲食店でアルバイトをしていた頃の話。
アルバイト先は夫婦で営む、寿司屋であった。とてもアットホームで働きやすかったし、それほど不満に思うこともなかった。
ある日のこと、私が店に入ると大将が
「ネギを買ってきて」と言った。「普通のネギ」を。
私はその「普通」という言葉に少々引っかかった。そして、私的にいわゆる「普通の」ネギを買って戻ってきた。
すると大将は「違うよ!それは長ネギだろ?普通の細いやつ!」と言った。
私はまたネギを買いに戻った。「普通のネギ」、「普通の細いネギ」。これが私をなぜかとてつもなく迷わせた。そして、細い「普通のネギ」を買って戻ってきた。大将に持っていくと
「いや、だから!それ長ネギだろ?さっきのとなにが違うのよ?」と言った。
私は「細いです…」と答えるしか無かった。
大将は「普通のネギよ!普通の細いネギ!」
私はパニックになってしまっていた。私にとっての「普通」がひっくり返ってしまっていたからだ。
そしてまた買い出しに行き、帰ってきて恐る恐る買ってきた、私にとっては「普通では無い」ネギを見せた。
「そう、普通それだろ!?」
今考えれば私も柔軟になれたのではないかと思うが、その時はなぜか「普通」に固執してしまった。
その日から私の中で「普通のネギ」が置き換えられた。
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