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熱中症とは何か

「熱中症」は、高温多湿な環境下において、体内の水分及び塩分(ナトリウムなど)のバランスが崩れたり、循環調節や体温調節などの体内の重要な調整機能が破綻するなどして発症する障害の総称であり、めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・気分の不快・吐き気・嘔吐・倦怠感・虚脱感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温等の症状が現れます。

熱中症の症状と分類

熱中症にはさまざまな症状が現れますので、それぞれに病名がつけられています。「熱失神」とは、暑熱環境下で皮膚血流の著しい増加と多量の発汗とにより、相対的に脳への血流が一時的に減少することにより生ずる立ちくらみのことをいいます。「熱けいれん」とは、汗で失われた塩分が不足することにより生ずる筋肉のこむら返りや筋肉の痛みのことです。「熱疲労」とは、脱水が進行して、全身のだるさや集中力の低下した状態をいい、頭痛、気分の不快、吐き気、嘔吐などが起こり、放置しておくと、致命的な「熱射病」に至ります。これは、中枢神経症状や腎臓・肝臓機能障害、さらには血液凝固異常まで生じた状態のことで、普段と違う言動やふらつき、意識障害、全身のけいれん(ひきつけ)などが現れます。ただし、実際の現場では、これらの状態が混在して発生するので、熱中症が発生した時には、重症度にしたがって、表1のように、最近では軽症(Ⅰ度)、中等症(Ⅱ度)、重症(Ⅲ度)に分類しています。

熱中症が起こりやすい職場はどんなところですか?

炎天下の屋外作業や屋内作業でも炉や発熱体があることなどから、一般の環境よりも高温多湿の場所が多くみられること、業務に従事する人々は労働者自身の症状に合わせて休憩等を取りにくいこと、身体活動が持続する時間が長いこと、そして労働安全衛生保護具の着用により体熱が放散しにくい状況になっている職場は熱中症が起こりやすいです。建設業など屋外での作業を中心に、熱中症が多く発生しています。

WBGT値とは何ですか?

作業場所が熱中症のリスクが存在する暑熱環境であるかどうかを客観的に評価するためには、気温だけでなく湿度、風速、輻射熱(放射熱)、身体作業強度、作業服の熱特性を考慮する必要がありますが、そのためにはこれらの因子をすべて考慮したWBGT(湿球黒球温度)指数を活用することが有用です。
WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度(単位:℃))指数は、暑熱環境における熱ストレスのレベルの評価を行うことにより熱中症の発生リスクの有無をスクリーニングする指標であり、日本では暑さ指数とも呼ばれています。作業場所に、WBGT指数計を配備する等により、WBGT値を求めることが望まれています。
WBGT値は、自然湿球温度(tnw)、黒球温度(tg)、気温(ta)の測定値から、太陽照射のない場合は次式(1)により、太陽照射のある場合は次式(2)により求められます。
WBGT値=0.7tnw+0.3tg (1)
WBGT値=0.7tnw+0.2tg+0.1ta (2)

熱中症はどのように防止すればよいですか?

作業環境管理

(1) WBGT値の低減等
ア WBGT基準値を超え、又は超えるおそれのある作業場所(以下単に「高温多湿作業場所」という。)においては、発熱体と労働者の間に熱を遮ることのできる遮へい物等を設けます。
イ 屋外の高温多湿作業場所においては、直射日光並びに周囲の壁面及び地面からの照り返しを遮ることができる簡易な屋根等を設けます。また、ミストシャワー等による散水設備の設置を検討します。ただし、ミストシャワー等による散水設備の設置に当たっては、湿度が上昇することや滑りやすくなることに留意してください。
ウ 高温多湿作業場所に適度な通風又は冷房を行うための設備を設けます。また、屋内の高温多湿作業場所における当該設備は、除湿機能があることが望ましいところです。
(2) 休憩場所の整備等
ア 高温多湿作業場所の近隣に冷房を備えた休憩場所や日陰等の涼しい休憩場所を設けます。また、当該休憩場所は臥床することのできる広さを確保します。
イ 高温多湿作業場所又はその近隣に、氷、冷たいおしぼり、作業場所の近隣に、水風呂、シャワー等、身体を適度に冷やすことのできる物品及び設備等を設けます。
ウ 水分及び塩分の補給が定期的かつ容易に行えるよう高温多湿作業場所に飲料水の備え付け等を行います。

作業管理

(1) 作業時間の短縮等
(2) 熱への順化
(3) 水分及び塩分の摂取
(4) 服装等
(5) 作業中の巡視

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