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立憲民主党の「消費税還付法案」を支持する

最近の野党は、文字通り右も左も消費税減税を主張しています。これは考えてみれば不思議なことです。なぜなら、世論調査の結果から分かるのは、世論は消費税は上がるときは反対運動が広がるが、いざ上がってみると減税運動にはそこまで積極的にならない、というものだからです。2021年の衆議院選挙でも、消費税については特に大きな争点になっていたとは言い難いでしょう。もちろん消費税には逆進性があり、庶民の家計を圧迫する要因のひとつです。しかしながら、ほぼ全ての野党が減税にベットするような税制かと言われれば疑問です。

もちろん消費税が安くなることにこしたことはない。しかし全体で20兆円以上の税収となっている消費税を減税するならば、その穴埋めをどこかでしなければなりません。維新や国民民主党が狙っているのは福祉カットです。「世代間格差」というトンデモ理論を根拠に、高齢者福祉を削り、「生きるに値しない生」をつくりだそうとしています。これに関しては維新よりもむしろ国民民主党のほうが、「現役世代への支援」を旗印にしながら弱者を攻撃するネット・ポピュリズムに染まっている気がします。

また、私はMMT理論を支持していないので、れいわ新選組の消費税に替えて国債を増発せよという意見も支持できません。法人税や所得税の累進を強化して消費税減税にあてる共産党の政策には理があると思います。ただその政策を実現するコストはかなり大きいでしょう。

ところで私は、ことさら減税が正しいとは思っていません。政府が人々に手厚い分配をするためには税が必要です。応能負担で税を取り、生活者の必要に応じて分配するのです。福祉には頼らないから減税してほしいという人は新自由主義者です。リベラルあるいは左翼を自認する人は、減税を主張するよりも先に、税が適切に分配されていないことを問題視するべきでしょう。

そうはいっても消費税は逆進性があり、応能負担の原則からは逸脱していることも事実です。ではなんとかこの逆進性を解消する方法はないのか。生鮮食料品などに対する軽減税率はひとつの手段かもしれません。しかし現在の日本では、質の良い生鮮食料品を買っているのはむしろ富裕層であり、貧困層は料理する余裕すらなく出来合いの食事をとっているのが現状です。軽減税率はあまり解決になるとはいえないようです。

私は最近知ったのですが、立憲民主党がこの消費税の逆進性に特化した政策を打ち出しているようです。「消費税還付法案」というのがそれで、これがなかなか面白い。6月に国会提出されたらしいのですが、例によって与党のサボタージュにあい審議はされていません。
https://cdp-japan.jp/news/20230613_6256

どのような法律なのでしょうか。まず国の統計(全国家計構造統計)に基づき、それぞれの世帯収入に応じて、その年に払ったとみなされる消費税額を算出します。そして算出された金額の5割程度を、その世帯の誰かの所得税から控除します。所得税よりも還付されるべき金額が大きい世帯に対しては給付によって還付することになります。いわゆる「給付つき税額控除」というやつです。

支払った消費税の5割を還付するならば、最初から消費税を5%減税すればいいじゃん、と思われるかもしれません。しかしこの法案の面白いところは、高所得者については、還付される割合を5割から漸進的に減らしていくということです。もし単に5%減税するだけであれば、払っている金額が大きい高所得者ほど得をします。しかし消費税還付法案であれば、高所得者ほど還付の恩恵は少なくなるのです。

また、ここでキモなのは、実際に支払った消費税額ではなく、統計に基づいた消費税額を基準としていることです。これは単に事務処理を楽にするだけではありません。収入が少なくても金融資産をたくさん持っているのでお金持ちという人が世の中にはいます。世代間格差論者のプロパガンダに反して、ほとんどの高齢者は苦しい生活を行っています。しかし国民年金しかもらっていないけれど貯金が億単位でありますという人はいるにはいるのです。そういう人がいくら贅沢な消費活動を行い多額の消費税を支払っていたとしても、還付される金額の基準は、乏しい年金を切り詰めて生きている人のそれと同じなのです。もし5%減税であれば、所得税で捕捉できない資産を持っている人に税金を払わせることができるという消費税のメリットを潰してしまうことになります。

この消費税還付法案では、同時に軽減税率をやめることも提言されていますが、これは歓迎です。8%商品が10%になったところで中低所得者ならば最終的には5%になるだけなので、負担は高所得者だけです。複数税率に伴う事務処理も必要なくなりますし、なによりインボイス制度の口実が消滅することになります。財源は確かに問題ですが、お金持ちからはこれまで通りの消費税を払ってもらうことになることや軽減税率の廃止によって、一律減税よりは減収分は少なくなります。近年の税収増を所得減税に使うよりは消費税の還付に使った方がよいでしょう。

そういうわけで、この法案は消費税の逆進性を解消するという点ではとてもよさげに見えるのですが、残念ながらその内容が世の中にほとんど知られている気がしません。サイトやyoutubeを探したのですが、この中身を詳しく説明する資料も解説動画もないというのは、立憲さんサボりすぎでは?と思ってしまいます。よい法案だと思うので、少しでも周知がなされるようnote記事を書きました。


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