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#015 ハワイイの州鳥・ネネのふしぎな旅

このくらいの鳥だと
人間語が通じそうな
気がしてしまう

のは

ニルスのふしぎな旅
のせいですな
(世代限定)

「ニルスのふしぎな旅」に登場するモルテンは家禽であるガチョウですが、ハワイイの州鳥であるネネ(Nēnē)は、ハワイイ諸島に渡って定住進化した固有種で、その祖先はカナダガンです。

典型的なカナダガンは、アメリカ南部で越冬し、春になると北上して、繁殖と営巣のために北極または亜北極地域の同じ場所に戻っていく。24年とされる平均寿命の過程で、毎年これを繰り返すらしい。

渡りの方向やルートについては、太陽や恒星を手がかりにしているという天体航法説が有力である一方、近年、地磁気を手がかりにしているという説を唱える研究者もいます。

その中で、渡りをやめてしまって定住する例外的な個体群もいるとのことなんですが、そのようなカナダガンも多くの場合、定住地はアメリカ大陸です。
渡りのルート上からはるかに離れた絶海の大洋島であるハワイイに定住することになったネネは、いったいどういう偶然でやってきたのでしょうか。不思議だ。

先住のハワイイ人が持ち込んだ動物には、プアア(ブタ)、イーリオ(イヌ)、モア(ニワトリ)の三種類があって、そのいずれもが食用目的。
ネネはそれらとは違い、自力で辿り着くことができた動物で、そもそも人間よりもずっと前にハワイイへやってきたそうです。

溶岩という特殊な環境に適応した形態で、羽根はやや小型化した一方で脚が発達し、水掻きも半分ほどになっています。

2019年12月にそれまでの絶滅危惧種から "準" 絶滅危惧種に指定が改められたように、人間による保護で生息数は改善傾向にあります。しかしじつは、自然種としてはいったん1951年に絶滅しているそうです。
個人飼育の下で残存していた30羽ほどを人工繁殖させることで、なんとか現在の状態にまで持ってきたという状況。

かくして完全消滅は免れたものの、マングースなどの外来の肉食哺乳類にも生存を脅かされており、人間による保護がない状態で繁殖するのは難しいのが現実で、ハワイイにはネネに危害を加えたり捕まえたりすることを禁止する法律が存在します。もし誤ってクルマで撥ねたりすれば高額の罰金が科せられる、とも。

成鳥になると、つがいで行動するそうです。

このペアは、ハワイイ島のハプナビーチに下りていく途中の公園でたまたま見かけたもの。
片方には個体識別のための足環が付けられており、もう一方にはそれがありません。してみると、自然環境での繁殖による新たな未登録個体ということなんでしょうか。

低い声で「ネー ネー」と鳴くことがその名の由来だそうですが、実際に耳にすると「ネ”ー ネ”ー」と聞こえるように感じます。

何枚か写真を撮ったうちのこの一枚は、上空を行くジェット旅客機の音に気が向いて「およ?」とそれを見上げているところ。
はるかな昔に遠く大陸から飛来し、ハワイイに定着してからは渡りの習性を失ったネネですが、何か思うところがあるのかな。
渡りはやめてしまったけれど飛べないわけではなく、渡り鳥に特有のV字編隊飛行の習性は残しているということなので、いつかその勇姿を見てみたい。

調べたところでは、マウイからオアフへV字編隊を組んで飛行する姿の目撃例があるんだそうです。「オアフ行こうか」って合議して決めたのかな、とか想像してみると楽しいですよね。

人間など、「保護」なんて偉そうなことを言っていますが、それよりもずっと昔からここで暮らしてきている動物を目にすると、自分はここではニワカ異物だよなあと謙虚にならざるを得ません。どうもお邪魔様です。

片方の足環には数字のようなものが刻印され、もう一方には ACN の表記が。

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