年金3年ぶり増額の見通し 実質は物価高で目減り

年金3年ぶり増額見通し 1.8%試算、物価高で実質目減り:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA041SZ0U2A101C2000000/

日本でも記録的なインフレが続いているなか、23年度の公的年金の額面上の給付額は3年ぶりの値上げ改定となる見通し。前年比2.5%の物価高とする民間試算を基にすると、「マクロ経済スライド」発動によって68歳以上の給付は1.8%ほど増える。差し引き0.7%程度伸びが抑えられることとなる。高齢者の負担増は景気回復の足かせに繋がる可能性がある。

年金は物価と賃金が上昇する局面では給付が増えるが、給付抑制策の「マクロ経済スライド」が発動し、物価の伸びよりは給付額は抑制される。一方マクロ経済スライドは物価や賃金の下落側面では発動されず、その抑制分を「キャリーオーバー制度」によって翌年度以降に持ち越される。

足元では21,22年度の二年連続で発動されておらず、0.3%のキャリーオーバー分が今回一気に差し引かれ、試算では今年度のスライド分を含め合計0.7%の抑制要因となった。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html

上の日本年金機構のサイトによれば、マクロ経済スライドは04年度に導入され、賃金や物価の変動率から現役の被保険者の減少や平均寿命の伸びに応じて算出した「スライド調整率」を差し引くシステム。
①賃金・物価の上昇率が大きい場合
賃金・物価の上昇率からスライド調整率が引かれた分だけ改定される。
②賃金・物価の上昇率が小さい場合
賃金・物価の上昇率からスライド調整率を引くとマイナスになる場合、年金額の改定は行われず、前回と同額となる。
③賃金・物価が下落した場合
マクロ経済スライドによる調整は行われず、賃金・物価の下落分だけ減額が行われる。

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/kyotsu/kaitei/20150401-02.html  より引用

https://www.nenkin.go.jp/faq/jukyu/kyotsu/macro/20190603.html

さらにこの制度をややこしくしているのが、16年度に導入された「キャリーオーバー制度」だ。前の③の場合において年金額の改定を行わず、その代わり景気が回復した際にその下落分を繰り越す制度だ。この制度により来年度の年金額はマイナス0.3%繰り越されることとなっている。


老齢基礎年金支給額と国民年金保険料額の推移(令和4年度版厚生労働白書のデータを基に作成)

年金支給額はやや減少傾向であるものの、現役世代の保険料額は上昇一辺倒が続いている。年金額が目減りしているのにもかかわらず現役世代の負担が増えていては、誰も得をしない制度になりつつある。年金制度改革が声高に叫ばれてはいるが、これから何十年も年金を納めていく身としては、不安を隠さずにはいられない。

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