DO TO(9) 「あれから好きな画家は河原朝生」
新しい学期に入る前に、私がカビくさい河原朝生の画集を買ったのは自由が丘の古本屋だった。直感的に表紙の絵にひかれて一度見たことのある名前をもう一度注意深く眺めた。なんだか身震いをするような思いでそれを買って外へ出た。林立するビルの一方で、駅前は賑わいを見せていた。私はタバコを買いにコンビニに立ち寄った後、そこから線路を進行方向の右に眺めながら、待ち合わせの喫茶店まで小道を歩いた。百メートルほどの道のりだった。
駅前の喫茶店のような様々な人間が休息を求める場所では、座席の間隔が近