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テラリウム

インスタで絵を投稿してらっしゃる方から、ご自分の描いた駿人に文章を添えて欲しいとお願いされて書きました。

STAYGOLDは13歳の駿人が髪を金色にして高校には行かないと言い出すところから始まります。
わかりやすいグレ方ですが、血のつながらない叔父・優士に対する決意表明なのです。
駿人は「誰かに取られるくらいならいっそ殺して自分も死ぬ」くらい優士のことを好きなので、優士と対等になるためにとにかく早く大人になりたいのです。
その頃の駿人はいつも強がっていて真っ直ぐ挑んでくる瞳をしています。

彼女からこの絵の元絵について「これって駿人?」と尋ねられた時、「これは違うね」と答えました。
SG好きを公言しているくせに間違えてしまいました。
この絵の駿人は大人になりたいなんてこれっぽっちも思っていない危うく戸惑う瞳をしていたからです。
それは早く大人になりたいと強がる13歳の垣間見せる脆さ。少年の一瞬の儚さです。

彼女の絵筆から落ちた緑の絵の具は駿人の一瞬をテラリウムの中に閉じ込めました。一瞬は永遠になりました。
絵の中の駿人は透明なガラス瓶の中から外の世界を見つめるまなざしをしています。いつまでも醒めない夢を見るように。

STAYGOLDではその後10年間の駿人の成長を追っていきます。少年は叔父への思いを持ち続けたまま大人になります。
私達はまるでその10年に寄り添ってきたような気分でふと少年だった駿人を懐かしみます。
その時、きっとこのテラリウムの中の駿人に思いを馳せるのでしょう。

「大好きだから ずっと
なんにも心配いらないわ
My darling Stay gold
無邪気に笑っていられたら いつの日も」
(たぶんこの絵を描きながら、カワセミさんが聴いていただろう宇多田ヒカルのSTAY GOLDより)

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