あん塩パンと河川敷(ふくまち大学「まちを綴る学科」にて)
あん塩パンを買ってきた。
この前、パン好きの方におすすめしてもらったお店で買ってきた。
ゴマのつき方が顔みたいでかわいい。
ひとくち食べる。
6月24日、12時8分。
パンパンに詰まったリュックをちょっと降ろした。
好きな人の日常にある景色に少しだけお邪魔する。
鴨川ほど広くはない川幅。
川は、空の色を映している。
空には、ぷかぷか気ままに浮かぶ雲。
連なる鉄塔、橋、小屋、銭湯の煙突。
川沿いの小道を通る人の歩幅はゆるやか。
のんびりした時間が流れる河川敷。
自転車を漕いできたのもあって、暑い。
青々しく伸びる緑たちにちょっと気を遣いながら、腰を下ろしてひとやすみ。
ハリネズミのブックカバーをかけたお気に入りの本を取り出し、ページをめくった。
「明日、福井に行こう」と思い立ったのは前日。
ここには、自由で、優しく、涼しげな風が吹いている。
絶妙な塩加減がおいしい。
もうひとくち。
9月25日、7時23分。
涼しい朝の風に吹かれながら、自転車を漕いできた。
晴れた空に一輪咲きの太陽。
薄い紫色のコスモスたちが川に沿って綺麗に咲く。
太陽に透かされた花びらが舞う。
昨日、新しいことが始まった。
何かが始まるときの風の感じが好き。例えば、4月の教室とか。
澄んだ空気が流れ、軽やかな風が吹く。
心が弾む。
あんの甘さは塩を少し加えることによってより引き立つ。
もうひとくち。
5月25日、19時34分。
日が沈んでしまったこの時間も嫌いではない。
夜の風がどこかの家の晩ごはんの匂いを連れてくる。
カレーをお裾分けしてもらった。多分、作った本人の許可は得ていない。
熱々の銭湯に入った後の身体はぽっかぽかで、夜風が気持ち良い。
頭の中を埋め尽くすモヤモヤも、その熱で溶かしてしまえ。
おいしくて、もう半分も食べてしまった。
もうひとくち。
6月23日、19時31分。
夕焼け空に浮かぶ綺麗な三日月。
心地良い風が吹く日暮れ。
「福井に行こう」と思い立った日からちょうど1年。
今日は、お蕎麦を食べて、カフェでお話しした。
昨日は、キングオブコントに向けて、+3(たすさん)の稽古に参加した。
明日は、みんなで草むしりをする。
みんな、福井に来てから知り合った人たち。
一年前の自分は、こんな日々を過ごすことになるとは、想像すらしていなかった。
お先真っ暗だ…と思っても、生き続けていたら、しんどいことの先に楽しいことが待っている、っていうのは、みんなにとっては本当なのか嘘なのかよく分からないけれど、自分にとっては本当だった。
どこかで聞いた話だけれど、夕暮れと朝焼けは、ほぼ区別がつかないらしい。
おいしいものはあっという間に食べ終わってしまう。
あとひとくち。
7月15日、8時36分。
目の前には、一昨日の雨で増水した川。
持ってきた本を開こうとしたら、蝉の声が夏を連れてきた。
季節が変わる。
吹く風は熱い。
今日、少しの勇気を出すことに決めている。
あん塩パン、おいしかった。
ここは福井市・荒川の河川敷。
好きな風景。
このnoteは、ふくまち大学「まちを綴る学科~心のままに「私」と「まち」を綴ってみる~」にて書きました。
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