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不可思議な光景|国興しラブロマンス・銀の鷹その46

「ん?あれは?」

陣営もあと少しで抜けるといった場所、前方に立ちはだかっている一人の屈強な戦士を見て、ローランドの供の男は、一瞬ぎくっとする。

戦場でその姿を垣間見た彼はその戦士がアレクシードだと知っていた。

まさかここで切り殺すつもりなのでは?という考えが頭を過る。
が、当のローランドは堂々と馬を駆っている。心配ではあったが、口にするのも阻まれた。

-ぶるるる-

前を行く兵士が馬を止めると、アレクシードとなにやら小声で話す。

供の男が警戒している中、アレクシードはローランドに歩み寄ってくる。

「これは、アーガヴァのご領主殿。わざわざのご足労、痛み入ります。私はアレクシードと申します。」

「貴殿がアレクシード殿か?まさかお会いできるとは。光栄の限り。」

馬を下りようとするローランドをアレクシードは止める。

「閣下にそうおっしゃっていただけるとは、私の方こそ願ってもない光栄。ところで、私も途中までお送りしたいと思うのですが、よろしいですか?」

「歴戦の勇者アレクシード殿にお送り願えるとは・・・それこそ光栄というものですな。」

わっはっはっは!とローランドは高らかに笑って答える。

「閣下?!」
供の男が小声で心配する。

「大丈夫だ。そんな卑怯なスパルキアではない。」
ローランドは目で男にそう答えた。

そのローランドの返事に頷くとアレクシードは前に止まっている兵士に、普通に話し掛ける。

「さて、ご領主殿の許可はいただいた。」
ぽん!と馬の背の空いているところを叩く。

「お二人がいて私が断れないのを分かってて言うんだから・・・こういうのを過保護って言うのよ。これじゃまるで私が一人じゃ何もできないみたいじゃない?」

フードをかぶったそのスパルキアの兵士、それはセクァヌだった。

未だアレクシードに対して怒っていたセクァヌは、昨日から口を利いていなかった。

同行を諦めようとしないアレクシードに、大きくため息をついてセクァヌは身体を前に移動させて手綱を放す。

「過保護であろうとなんであろうと、一人にしておくと何をしでかすかわからんからな。」

昨夜のことはシャムフェスから聞いていた。
いや、アレクシードは半ば脅しをかけるかのように、無理やり聞き出していた。

アレクシードの声は聞こえるのだが、小声で言った彼女の言葉は聞こえない。
どういう意味なのだろうとローランドと供の男は思う。

-ザッ-
「では、参るとしましょう。」

-ぶるるるる・・・-

セクァヌの後ろへ飛び乗り、彼らに声をかけて馬を進めたアレクシードに、ローランドらは唖然とする。

「か、閣下・・・?」

「む・・・・・」

戦士アレクシードが兵士と相乗りする?そんなことはあるわけはなかった。

するとしたら、それはスパルキア族長にして銀の姫、セクァヌしかいない。その事はスパルキア陣営以外にも知れ渡っていた。

(では、案内を乞うた小柄なこの兵士は・・・・・・?全くの無防備とも思えた後姿を見せて案内してくれたこの兵士は・・・。)

そんな事を考えているうちに、聞き覚えがあると感じたシャムフェスの声に思い当たる。

昨夜かすかに聞こえた声、加勢してくれた剣士といた男の声は、確かにシャムフェスの声だったとローランドは確信する。

そして、昨夜ははっきりしなかったということもあり、聞き流してしまったが、その言葉の中に『姫』という言葉があったことも思い出す。

そういえば、兵士だと思っていたその人物がわざと声を低くして話したような感じもあった。

(まさか・・・今前を行くのが、アレクシード殿の前に乗っているのが、銀の姫?・・そして、敵であるにもかかわらず我らを加勢してくれた・・あの昨夜の剣士が・・?)

ローランドは、対面の時の神秘な輝きを放つセクァヌの瞳を思い出していた。

人を圧倒させ、心の底まで読み取るかのような鋭い輝き。まだ15、6歳の少女であるにもかかわらず、その威圧感を伴った神秘的な美しさ。

-カポ、カボ、カボ-

黙って馬を駆るアレクシードの後姿を見、そんなことに思いを飛ばしつつ、ローランドらは、スパルキア陣営から少し離れたところまで送られていった。

と、突然アレクシードの乗る馬が止まる。

(まさか、ここで斬り殺す?)

ローランドの供の男が心配して見つめる中、アレクシードがストッ!と馬から下りる。

(見送りがここまでなら、その旨話すはず。ではどうしたというのだ?)

さすがのローランドもそんな事を考えながら、前方を見つめるアレクシードと兵士を見つめていた。

「ん?」

少しすると、遠くから数騎の蹄の音が近づいてきつつあるのが聞こえる。

(これが聞こえていたというのか?)
ローランドは驚いて2人を見つめていた。

-ブルルル・・-

兵士は興奮する馬を首を撫でて落ち着かせる。

-ドガガガガガッ!-

片手に剣を持ち猛スピードで近づきつつその集団はおよそ10数人。

-シュッ-
「な、なんと?!」

ローランドと供の男は、止め紐を解きフードを取った兵士に驚く。

銀色の髪が光を弾いて輝き、鋭利な視線を放つ瞳が金色に光を弾いていた。

「や、やはり・・姫?」
2人は唖然として前方を見据えているセクァヌを見つめる。

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