悲劇再来|国興しラブロマンス・銀の鷹その55
平穏に時は過ぎていった。
そしてその中で、スパルキアの民全員が心待ちにしていたもの。
それは銀の姫セクァヌとアレクシードとの婚儀。
族長から下り一人の娘として愛しい人のところへ嫁ぐ。
その発表は人々を驚かせた。
が、国は代表制というものを取り入れ、人々の声が聞こえるようにと組織されていく。
不安は何もなかった。
そして、初めてその代表がそろい、新しい国としての1歩を歩み始めようとしていた中央広場。
喜びでわく民の目の前で事件は起こった。
-シュッ、シュシュッ!・・・-
突然飛んできた矢。それは一段上にいたセクァヌをめがけていた。
「お嬢ちゃん!」
「アレク!」
-ザシュッ!ズシュッ!ドスッ!・・・・-
一瞬だった。
セクァヌの目の前、彼女を庇って前へ飛び出したアレクシードの全身に無数の矢が刺さる。
戦がなくなりその必要性がなくなった武器を何一つ携えていなかった事が災いした。
喜びでわいていた広場が一瞬にして悲劇の場となった。
「しまったっ!」
シャムフェスが叫ぶ。
そしてすぐさま矢が放たれた方向へと追跡の手を放つ。
「いやーーーー!」
澄み渡った青空にセクァヌの悲鳴が響く。
「アレク、アレク、大丈夫だから、だから、もう少し我慢して。」
「お嬢ちゃん・・・」
「ダメ!話しちゃダメ!大丈夫だから・・・」
「お嬢・・・ちゃん・・」
セクァヌは、横たわったままゆっくりと伸ばしてきたアレクシードの腕に抱かれれ、彼の頭を自分の腕に抱える。
アレクシードの表情に、死の影がゆっくりと染まってきていた。
「アレク!お願い、死なないで!私を一人にしないで!」
涙が落ちるのも構わず、必死になってセクァヌは叫ぶ。
「お嬢ちゃん・・・すまん、約束はもう・・・」
「アレク!いやっ!そんなの、いやっ!」
激痛と意識が揺らぐ中、アレクシードは気力を振り絞ってセクァヌに笑顔を作る。
「はは・・・相・・変わらず・・・わがまま・・だな。」
「アレク!」
「お嬢ちゃん・・・・いろいろあったな・・・。だが、楽しかった・・」
確かにセクァヌを見つめているはずだった。
が、なぜかアレクシードは遠い目をしていた。
「アレク?!」
「お嬢ちゃん・・・オレの・・・・・」
目を閉じると同時に、セクァヌの背に回されていたアレクシードの腕から力が抜ける。
「アレク?・・・アレクッ!」
「お・・嬢ちゃん・・・」
そして、今一度ゆっくりと目を開く。
「抱いて・・くれな・・い・・か、頼む・・・」
「アレク・・」
セクァヌはアレクシードのその頭をしっかりと胸に抱く。
「お嬢ちゃん・・」
「なに?アレク?」
胸から放し、アレクシードの頭を腕に乗せたまま、セクァヌは涙でかすんだ瞳で見つめる。
涙がアレクシードの顔に落ちる。
「頑張るん・・だぞ、オレが・・・いなくなっても・・・そして、・・幸せに・・・・」
「いや、そんなの・・・そんなのいや!アレクがいなくちゃ私・・私・・・頑張れないっ!」
「はは・・そう・・困らせ・・ないで・・くれ。ホントに・・いつまで・・・たっても・・・」
力ない笑みを、が、精一杯の笑みをセクァヌに見せ、アレクシードは続ける。
「お嬢・・ちゃん・・・オレはいつでも・・お嬢ちゃん・・を・・見守ってる・・・お嬢ちゃんの心の中に・・・」
「アレク!」
「お・・嬢・・ちゃん・・・オレの・・宝・・・・石・・・・・・」
最後の力を振り絞ってアレクシードはセクァヌの背中に腕を回す。
そして、再び目を閉じると同時にその腕からふっと力が抜ける。
「いやーーーーー!アレク、アレクーーーーーー!・・・・」
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